第4話「港町エルミナルの朝市」 - 2
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
エルミナルの祭り2日目の夜も大盛り上がり。
1日目にも増してビールやワインが飛ぶように売れて、だいぶ泥酔した観客も出てきているようだった。
その熱気は月明かり団の舞台にも飛び火し、ターニャたちが踊っている最中には下品なヤジや歓声が入り混じって異様な雰囲気になっていた。
ターニャはそれを見て予定していた歌を辞め、風刺に移った。
ダン!と靴を打ち鳴らすと驚いた観衆の声が止む。
全員がターニャの言葉を待った。
「やぁやぁみんな!! 今晩は特にすごいね! こんな熱気のお祭りは初めてだ」
「そうそう、熱気といえば今朝、港の朝市に行ってきたんだけどあそこもすごい熱気だったよ。みんなは良く知ってるよね? たくさんの野菜や果物、そして魚が所狭しと並んでいて感動したね、さすがエルミナルはいいところだね! これは領主様が良い政治を行なっている証だね〜」
地元を褒められて観衆は盛り上がる。
来賓席で食事をしていた領主もご満悦の表情だ。
「さらにさらに! エルミナルのすごいところを港で見つけたよ!」
「おおおー!?」
歓声に期待が混じる。
「それは競りの税金だ! 頑張って頑張って競り落としたら税金であっという間に2倍の値段にされてた。私たちあちこちの町で競りを見るけどこんな港見たことないよ!」
会場がどよめく。
「今日の白身魚がどの店でも高いのはお役人様の手数料がしっかりと乗っかってるからだよ! お役人様に感謝して財布開くんだよみんな!! あ、領主様! いま食べてるその魚も半分は税金だからね!!」
会場は打って変わって怒号に包まれ、大混乱となった。
「ふざけるな!」
「俺らの生活をなんだと思ってるんだ!」
「いつからそんな税金始めたんだ! 役人出てこい!」
「領主様がこれを指示してたのか?」
みな酔いが回っているから口が悪いし止まらない。
領主も立ち上がり顔を真っ赤にして部下に怒鳴っている。
「なんだその税は初耳だぞ! 港の役人をすぐに連れて来い!」
怒号飛び交う中、ターニャは颯爽と舞台を降りた。
「こんな終わり方でいいのかな・・・」トーマスは心配したが、アンナは「さすがお姉様!」と興奮の眼差しだった。
月明かり団の風刺はエルミナル港の健全な貿易の一助となった、はずだ。
◇ ◇ ◇
翌日、祭りを終えた月明かり団はエルミナル港町を出発した。
丘を越えて町が見えなくなったところで、一座に声を掛けてくる者がいた。
「よぉよぉ、月明かり団の方々だろ? 次の町に行く前に俺らの前でもなんかやってくれよ」
ガラの悪い冒険者たちが道を塞いでいる。その後ろには例の不正役人たちもいた。
ため息をつきながらターニャが馬車から降りる。続いてアンナ、トーマスも降りた。
「まったく・・・あんたたち冒険者が役人の手先になってどうすんのよ。私の風刺はみんなの声だよ。それが分からないなら…トーマス、アンナ、懲らしめてやりなさい!」
「助さん格さんかいなw」
(第4話 完)
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★あとがき★
旅芸人が来て、風刺で政治や社会を批判する。それで市民の暮らしがちょっと良くなる。書いているうちに「これって水戸黄門みたいだなあ」と思ってそれっぽくしました。
メインストーリーの進行に関係ない話は極力入れない方針なのですが、風刺のバリエーションを描きたくて採用しました。
次話からは冒険者な一面に思いっきり振り戻します。やり過ぎたかな。