第8話「王属裁判所にあったもの」 - 3
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
気を取り直して書類を読み直す。
不正会計に対する処分が断絶となったのは、鉱山事業が人間とドワーフの共同だったからのようだ。判決文に「王家に対する背信行為であり、ドワーフ族に対する裏切りでもある」という言い回しが出てくる。
他種族に不利益を与えていたというのは、たぶん人間の他国に対する迷惑より重たい問題なんだろう。
どうもこの件に関してセルヴィオラ家は全面的に悪いようだ。
◇ ◇ ◇
父ルーファスの不審死についての記録を探そう。本来こっちの話を明らかにするのが目的だし。
その記録はセルヴィオラ家の不正会計事件のすぐ近くにあった。
「聖騎士団幹部暗殺事件…これだな。第12代聖騎士団団長ルーファスと副団長リリーが行方不明に。翌朝、王都郊外で2人とも磔の状態で死亡しているのが発見される。2人とも革鎧姿だがその鎧は斬り砕かれ、体中に無数の刀傷を負っていた、ってこれは惨殺事件じゃないか!!」
この見せしめのような惨殺死体を発見した不幸な人物は、城壁の周りを巡回中の憲兵だった。前日には無かった2つの十字架を見つけてしまった時のショックは計り知れない。
捜索はもちろん行われたが目ぼしい容疑者は上がらなかった。その後に起きたセルヴィオラ家襲撃事件の犯人たちがこの惨殺事件も起こしたと結論付けて捜索は終了、一件落着となった。
セルヴィオラ家に対する攻撃として見ると、次期当主のルーファス、現当主の伯爵を次々と襲ったと捉えることもできるが果たして本当にそうなのだろうか。
副団長のリリーはついでに殺してしまえるほど弱い存在ではないだろう。狙うならルーファス1人の時の方がリスクが少ない。また、磔にして晒したのも気になる。そんな事をすればセルヴィオラ家は警戒するだろう。
と17年後に資料を読んでいくら疑問を挙げても何も変わらない。ともかくこの事件はあっさりと片付けられた。
◇ ◇ ◇
聖騎士団にはその後さらに不幸な事件が起きている。それもちゃんと記録に残っていた。
ルーファス、リリーが亡くなり、跡を継いだのはラルフ・サルヴィナン。彼が第13代聖騎士団団長に急きょ就任。このラルフが就任してすぐに枢機卿暗殺未遂を起こしていた。
ん? この襲撃されたアビゲイル・クロワ枢機卿ってさっき話しかけてきたおば様だ。
この事件は王宮内で起きている。
王宮を出て馬車に乗り込もうとしたアビゲイル・クロワ枢機卿にラルフ団長が話しかけ、そこで口論になった。ラルフは剣を抜いてアビゲイルに斬りかかるがそこに居合わせた副団長グレースが止めに入り、2人の対決に。グレースはラルフを倒してアビゲイル枢機卿の命を救った。ラルフは殺人未遂の被疑者死亡、グレースは正当防衛で罪に問われることはなかった。
ラルフがアビゲイルに斬り掛かったのは何故だろう?
やはりルーファス、リリーが暗殺された事件のことだろうか。
んん? リリーとアビゲイルは姉妹か? リリー・クロワとある。
えーと、そうするとラルフ新団長は、リリーの親族 アビゲイル枢機卿と口論になり、斬り掛かったということだ。「貴女がしっかりしていればこんな事にはならなかったんだ!」みたいな話か? いや、それで斬りかかりはしないよな。「真犯人は貴女だ!」かな。でもそうするとアビゲイルは自分の妹を殺した事になる。そんな非情なことを聖職者がするだろうか。
当時どんな口論があったのかは居合わせた人に聞くしかない。
グレースは居合わせたと書かれているが他の聖騎士団員も居たかもしれないな。
グレース団長は遠征中で不在だし、副団長のペネロペは取り付く島がない。
当時を知る古参団員を探そう。
俺は本を棚に戻し、王属裁判所をあとにした。
(続く)
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★あとがき★
ルーファス、リリー、そしてラルフの死の詳細が判明してきました。
アビゲイル枢機卿、そして現在の聖騎士団長グレースが何かしら関係していそうです。
この話を明かすまでに時間かかりすぎたなと反省しております。
次回、三姉弟が合流して物語を整理します。