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第7話「聖騎士との出会い」 - 4

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

「トーマス、聖騎士団のペネロペ副団長との面会の約束を作った。今日の午後行ってこい」


マリア伯爵は、レオノーラ王妃とのお茶会の時に俺がペネロペ副団長と会いたいと言ったことをちゃんと覚えてくれていた。優しい。


「あ、ありがとうございます。確かにお願いしましたが何故そこまでやっていただけるんですか?」


「お前ら姉弟の企みに興味があるからだよ。聖騎士団に何かあるんだろう? 戻ったら面白い話を聞かせろよ。つまらない話を持って帰ってきたらどうなるか…分かってるな?」


優しさと厳しさは常に同居している。それがマリア・カルメサスという人だった。


◇ ◇ ◇


ペネロペは聖騎士団とともに王宮の訓練場にいるとのことだった。


城壁に囲まれた広大な芝生の訓練場では騎馬を使った模擬戦を中心に訓練が行われていた。

激突し合う両軍の間でそれぞれに指示しているのが上層部だろう。

その中にペネロペ副団長がいそうだがよく分からない。

迂闊に近づくと馬に踏み潰されそうだったので、近くにいた騎士に面会の約束があることを告げた。


「副団長との面会ですね、聞いております。ここでお待ち下さい」

騎士はそう告げるとペネロペを呼びに行った。


しばらくして向こうから歩いてくる女性を見て俺は驚愕した。


その騎士は2mはあろうかという長身で、体格も非常に良く肩幅が広い。その女性が重鎧を苦もなく着こなしてこちらにのっしのっしと近づいてきている。

年齢は40代半ばだろうか。鋭い眼光。戦場で会ったら一瞬にして叩き潰されそうだ。


挿絵(By みてみん)


「面会者はお前か?」

目の前に立つその女性はまさしく巨人だった。

声が震えそうになるのを抑え、俺は彼女を見上げて挨拶した。


「はい。お時間いただきありがとうございます。マリア・カルメサス伯爵の部下トーマスです」


「ペネロペ・オーリンダールだ。貴族お抱えの道化師がなんの用か?」


う、感じ悪い…彼女は俺を芸人風情と見下しているタイプだ。文字通り見下ろしているわけだが…


ん? オーリンダール家ってアンナの情報にあった貴族家だ。

実家セルヴィオラ家が襲撃を受けた時に救援に来てくれた家であり、セルヴィオラ家が滅んだ後、その領地を得て拡大した家。


「伯爵の指示でこの国の近代史を調査しています。聖騎士団は15年前に団長、副団長が同時に亡くなり、その後を継いだ団長も亡くなり、現在のグレース団長・ペネロペ副団長体制になったと記録で読みました。どんな経緯なのかを伺いたくて」


「それなら私に聞くのは時間の無駄だ。私はグレース様が団長に就くと決まってから聖騎士団に入った人間だ。過去の痛ましい事件については人づてにしか知らない」


「え!? 外から加わっていきなり副団長になったのですか? その前はどちらに?」


「オーリンダール家の近衛騎士団長だ。当時の聖騎士団は幹部を3人も失い、壊滅に近い状態だった。人数こそいるものの、動揺し目標を見失ってまともに機能しない集団になっていた。そこに私を含む近衛騎士団から数人が聖騎士団に移籍してグレース様と立て直したんだ。そんな事も調べてないのか、道化師様は」


だ、だって急に朝言われてここに来たんだもん、と言った瞬間に殴り飛ばされそうなので絶対に言わない。


「不勉強ですみません。そうだったのですね。オーリンダール家はどうしてそこまで聖騎士団に尽くしたのですか?」


「ふん、やはり何にも調べられてないようだな。グレース様はオーリンダール家の長女だぞ。その方のピンチ、そして聖騎士団のピンチという国難となれば家を上げて支えるのは当然の話だろう? いずれにしても昔のことを知りたいなら今の聖騎士団ではグレース様に聞くしかない。今も遠征中だし、そんな暇は無いだろうがな。残念だったな。出直せ、道化師」


そう言い放つとペネロペは踵を返して訓練場に戻っていった。

もっと話を聞きたかったが、正直怖すぎてホッとしてしまっていた。


しかし、この時俺は目の前の恐怖で、もう一つの恐怖をすっかり忘れてしまっていた。

その日の夜、ベッドに入ってきたマリア伯爵には大したことは何も報告できず、こってりと搾られた。


「次、つまらない話を持って帰ってきたらお前は当面幽閉する」


そう宣告された。


◇ ◇ ◇


場面は変わって王都内のターニャ。


彼女が仕事を終えて家に戻ると、部屋に人の気配を感じた。

短剣に手をかけたままドアを開ける。


「お帰りなさいませ。大変失礼ながら中に入らせてもらいました」

忍者衆の1人エミリーが部屋の中で待っていた。


「アンナ様からの指示で早馬を飛ばして参りました。15年前、セルヴィオラ家は不正会計が判明して断絶になっているそうです。王属裁判所の記録をトーマス様に調べてもらいたいとの由」


「不正会計?」


「はい。ルーファス様暗殺やご実家襲撃との関係はまだ不明ですが同時期に発覚した事件です。またマルトゥリック家、オーリンダール家についても調べてほしいと言付かっています。この2つの家がご実家襲撃の際に救援に来ており、またご実家断絶によって利益を得ているとの事です」


不正会計・・・

それにオーリンダール、聖騎士団長グレースの家だ。


(第7話 完)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!


★あとがき★

姉が恋に翻弄されている頃、弟は聖騎士副団長と会っていました。

なるべくコワモテで恐ろしい存在にしたいと考えていたら2メートルを超える巨人になっちゃった。

ペネロペは文字通り男顔負けの武勇を誇るに違いありません。いつか描きたいものだ。


次話、三姉弟があちこちで集めた情報を確認するため、トーマスは王属裁判所に向かいます。

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