第4話「港町エルミナルの朝市」 - 1
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
エルミナル港は早朝にも関わらず大勢の人で賑わっていました。
大きな船から漁れたばかりの魚が下ろされ、既に運び込まれた野菜や果物は競りが行われている。こういうの見たかったのよね。
「威勢がいいね~、競りを見てるだけでワクワクしてくる!」
「きゃー!あの魚を朝ご飯にしたい!」
お姉様とダニエラ姉様が盛り上がっている。
ダニエラ姉様は、ステファン座長の愛娘で17歳。この一座で踊り子をやっている。
私たちが月明かり団に参加してすぐにお姉様方は仲良くなって今では姉妹のよう。ターニャ姉様と私たち双子の間の次女みたいな存在。踊りが心底好きで楽しそうに踊っている姿が可愛らしくて隙あらば抱きつきたい。いえ、時々我慢できなくて抱きついている。
トーマスは荷卸し作業の横に行って、あれこれ質問してはそれを紙に書き込んでいる。
あの子はどこに行ってもあれをやってる。あれをやっていると旅をしているだけで儲かるのだそう。商売のことはわたくし疎くて全然分からない。
「皆様方、こっちも見に行きましょう」
掘り出し物は別にあるのよ、私の勘がそう言ってますわ。
「ほらこれよ、これ!」
いま荷卸しされたばかり魚がちょうど並べられたところ。どれも活きが良くて美味しそうだわ!
ちょうど競りが始まった。
予想通りこの魚が一番人気で、宿屋のご主人や魚屋のご主人たちの値付けの声に気合が入っている。
これを宿屋が競り落としたら今日の朝食が超豪華になるじゃない! がんばってご主人!
競りは最後まで粘った宿屋のご主人が勝ち取った!
「やったーーー!」
みんなで抱き合って飛び跳ねる。
と、そこへ「あーこれこれ。勝手なことをしてちゃ困るぞ」と役人のようないでたちの方々が割り込んできた。
「この港の競りには税金が掛かるんだ。港の運営にも金が掛かるんだからちゃんと払えよ」
「え、ちょっと待ってくださいよ!この前までの競りではそんな税金なかったじゃないですか!」
漁師さんたちも宿屋のご主人もびっくりしている。
「これまでは税なしで済んでて良かったじゃないか。今回からはそうはいかない。我々の生活も掛かってるからな。さっさと落札額と同じ金額を支払いなさい」
「なんだって!! 落札額と同額の税ってそんなめちゃくちゃな! 買い値がそんなに高くなったら誰にも売れないですよ!」
「いくらで売るかはお前の話だ。皆が食べられるように手頃な値段で出したほうがいいんじゃないか?」
「そんなぁ・・・」
宿屋のご主人がうなだれる。目の前で魚の値段が2倍になっちゃいましたわ。
「あいつら、また法外な税を吹っかけてるよ・・・」と囁き声が後ろから聞こえてきた。
なんなのよあの役人、港の運営って言ってたのに生活費の話に変わってるじゃない!
絶対に不正役人でしょ! 2倍になったんじゃ朝ご飯に食べれないじゃない! どうしてくれるのよ!
私は心の中で散々毒づき、トーマスとダニエラ姉様は唖然とし、ターニャ姉様は冷めた目でこの騒ぎを見ていた。
(続く)
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★あとがき★
魔法が得意な妹アンナと比べると、弟トーマスは戦闘ではあまり役に立ちません。
その代わり彼は商才やアイディアがあり、知識もあります。
この港の相場をメモして、他の場所との差で儲けを出そうとしています。
地道な活躍なので女の子2人の影に隠れがちなんですが、第1部終盤から第2部ですごい活躍をしますのでお楽しみに(それが書かれるのはいつなんだ…)