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終わった世界の癒し方  作者: アルス
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007 終わった世界の眠り方

「お兄ちゃん、まだ帰ってきてないよねー……?」


 教会から家に着いた時には夜になる一歩手前だった。


「まだ、みたいね? 良かったぁ」


「そんなところで何ぶつぶつ言ってるんだい?」


「ひょぉっ! お、お兄ちゃん、いつの間に?」


「ん? いや今帰ってきたんだよ」


「わ、私もしっかり留守番していたよっ?」


「うん? そうかい、じゃあご飯にしようか?」


「私、地下から食材持ってくるねっ!」


「うん、階段気をつけてね」


「平気だよ、うわっとと……」


「行こうか?」


「へ、ヘーキヘーキ!」


 そう言って私は転びそうになりながら地下へ全力で降りた。


「ごまかせたよね? ふ、ふふん私の演技もなかなかね!」


 地下で一人まだ心臓をドクドクいわせながら胸を張る私。

 ……早く食材持っていこう。

 近くにあったのを適当にとって階段を上がる。


「お兄ちゃん持ってき、た、よ……?」

 

 ゴトッ


 私は持っていた食材を床に落としてしまった。

 ――赤く紅く染まった床に。


「お兄ちゃんッ!」


 ――え? なんで、お兄ちゃんがどうして……?


 何も考えられない頭でお兄ちゃんの元まで転びそうになりながら走る。


「お兄ちゃん、どうしたのッ! お兄ちゃんッ!」


「アリス落ち着いて、大丈夫、大丈夫だから」


「お兄ちゃん……ッ!」


 安心すると目から涙が溢れた。


「はは、泣くなよ」


 お兄ちゃんが私の涙を手で拭いながら笑いかけてくる。


「大丈夫じゃないよッ! まだ少し口から血が流れてるよ……」


「ん? これぐらい何ともないさ」


 お兄ちゃんは何事もないように立ちあがって言った。


「ちょっと顔洗ってくるよ。そしたらすぐこれ片つけるから」


「ちょっと、お兄ちゃんほんとに大丈夫なの?」


「ヘーキヘーキ、ちょっと疲れただけだから」


 ……嘘だ。

 お兄ちゃんがこうやって理由を言わないときはいつも無理をしてる時だ。

 たった二人だけの家族なのに、何も話してくれないなんて。

 私は悔しくて拳を握りしめたまま立ちつくした。


「ごちそうさま、おいしかったよアリス」


「……ごちそうさま」


「どうしたんだい?」


「別に……」


 結局あの後お兄ちゃんがまた倒れたりするなんてことはなくて、床の血を拭いて普段通りに二人で晩ご飯を作って今に至る。

 やっぱり何も体について話してはくれなかった。


「明日も研究に行くから早く僕は寝るよ」


「えっ、その調子でまだ研究に行くの……?」


「ああ、体なら大丈夫だよ。それに研究もあと一歩のところなんだ」


「そっか、うん、無理しないでね?」


「うん、ありがとう」


 そういってお兄ちゃんは食器を片つけて自分の部屋へ行ってしまった。


「……言えないよ」


 研究をやめてなんて。


 研究はお兄ちゃんと家族の繋がりなんだ。

 それを私が断つなんてことは、できない。


「私は本当にお兄ちゃんの家族なのかな」


 気付くと机にポタポタと涙が落ちていた。


「ああもうやめやめ、私も早く寝よう!」


 私は無理やり今考えたことを忘れて自分の部屋へ急いだ。

 自分の部屋へと戻ると教会で集めたものが入っている袋が目に入った。


「早くこれを作り上げなくちゃ、あの日まであと二日しかないし」


 あの日までに――そう私とお兄ちゃんが初めて会ったあの日までに。


「そうと決まれば明日も探しに行かなくちゃいけないし、早く寝よう」


 目を閉じるといつの間にかまどろみ、そのまま深く眠ってしまった。

 お兄ちゃんの体がなんともないことを信じながら。


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