005 終わった世界の歩き方
外は相変わらずどんよりと雲が覆い尽くしている。
「あれはまだ教会にあったはず!」
家を出た私は一人そうつぶやくと歩き出した。
崩れ落ちた建物と瓦礫の間を歩いていく。
特にこの辺りには道らしき道はない。
だからお兄ちゃんの家に住み始めたころは外に出るたび迷っていたっけ。
今では、そのおかげでこの辺の地図は、ほとんど覚えちゃったけどね。
つらつらとここに来たばかりの頃のことを思い出していると不意に、視界の端に白い影が映った。
「だ、誰かいるの……?」
白い影が映った方向には所々ボロボロだが他の建物と比べるときれいな建物があった。
誰かが住んでいてもおかしくない位には。
「あの建物の窓から見えた、ような……?」
忍び足でその窓まで近寄る。
そして中を確認しようとした瞬間
バサッ
「ひゃあああああああああああ、あ、……あれ?」
ボロボロになった白いカーテンが風にあおられ頭に被さった。
「……はぁ、驚かさないでよぉ」
そのまま教会へ向かおうとしたけれど少し気になったので、白いカーテンを頭に被りながらそっと建物の中を見た。壁の塗装が剥がれて錆びたように茶色く変色している。
さらに奥を見てみるとほこりを被った机の上にちょこんとワインのボトルが置かれているのを見つけた。
まだ封は切られてないみたいだった。
その封を切って誰かが飲み始めそうなくらいには、まだ人が住んでいた面影があるように思えた。
だけど、二度とその封は切られない。
もう、だれも戻っては来ない場所だから。
「もしモノに心があったら、取り残されたモノは何を思うのかな?」
答えは、出ない。
当の本人達が沈黙を続ける限り。
「さて、と。そろそろ私は行くね」
答えが返ってくることは無いけれど、私はついそんな言葉を残してその場を後にした。
そんな私の背中に白いカーテンが手を振っているような気がした。




