サラダ
3週間後
あれから転校生を交えて、とりあえずはまずは三人で会ってみようってことになった。
真一の意見で、遊園地になった。
待ち合わせ10分前にかかわらず、進達は来ていた。
「は、早いね」と、いつになく緊張してしまう。
進と転校生の、隼 真一だっけ。
しっかし、今まであった男子どもと顔の造りが全く違う。
しかも進の横にいるのでかなり際だつ。美女と野獣か。いやいや、二人とも男だった。
華奢な体が儚く思えた。
(うっ、今まで周りにいなかったタイプだ。どうしよう。気楽に返事しちまったけど)
「来たな。なんだよ もっと、おしゃれして来いよ。今日は両手にイケメンなんだぜ」お前がいうかー。
5人兄弟の末っ子に生まれてこの方、スカートをはいたことがないし。俺の性格熟知している進に、いわれたくないなあ。
「まあ、この間廊下で紹介したろ。香枝はさっぱりした女男だから、真一も今日は気楽に楽しもうぜ」真一は照れた様子だ。
「なーんて言いぐさ、まあいいや」
今日は、アトラクションに乗って乗って乗りまくれれば。
「こいつさ、アトラクションに目がないからフリー券買って元以上取ることしか考えてないはず。真一は香枝に合わせなくていいからな、体調悪くなりそうだったらいつでもいえよ」えっ、遊園地に来て体調悪くなるって?有り得ない
確かに、透き通るような白い肌は病人のような……。
「今まで、入院してたから体力ないけど。人並みにいろいろな所いったりしたいから。迷惑かけるかも、知れないけど……すっごく楽しみにしてたんだあ」真一は、か細い声で笑う。そのほほ笑んだ口元は?!美しい。
真一に合わせて、かなり最初は控えめにしてたがジェットコースター好きの二人が、この機会を逃すわけがない。二人は、競い合うように流行りものを乗り出す。その間、真一は写メを取ったりして楽しんでいるようである。
「はあ、ひっさしぶりのジェットコースターおもしろかったー。ごめんねー。一人にして」
「いいよ。僕、ジェットコースター系苦手だから。観覧車乗りたいから、香枝さんつきあってくれる?」
え、えっ、俺。
「おい、香枝指名だぞ。いけいけ、俺少し休憩してるから」進は、にやついている。気に食わないが、二人だけ楽しんでても悪いので一緒に行くことにする。
観覧車乗り場は
前に6,7人並んでいる程度ですぐ自分たちの番が来た。
観覧車が、二人の前に来た時にスタッフの合図で乗り込む。
元気だけが取り柄の俺としたことが、狭い観覧車の中で何を話したらいいのかわからない。
「ジェットコースター怖くないんだね。逆さ状態で、二人万歳してたでしょう。すごいねー」いつも、無口の真一が話を進めてくれてる。
「うん、全然怖くないよ。景色がさあ。逆さまなんだよ。スピードもついてるしスリル満点」
「へぇ。じゃいつか二人に鍛えてもらって僕も、乗れるようになりたいなあ」
なんか、見れば見るほど、可憐だなあ。いやいや、なんか私いや俺変。
「進君と幼馴染なんでしょ。羨ましいなあ。そういう関係って」
「まあ、兄弟が一人増えただけって感じかな」話してるうちに、徐々に観覧車は上に登っていく。建物や周りの緑の木々の高さが目線と同じになっていく。
真一は、ほとんどが病室で過ごしていたことやいろんなことを話してくれた。まるで浦島太郎みたいだと。今流行りのものや場所、携帯でさえつい最近持ったこと。
話に夢中になって、ふと外に視線を移すと地上からはかなり離れていて、木々も建物も小さく見えている。「ここ、てっぺんだよー。真一」あっ、つい呼びすてになった。真一も気が付いたように、顔が恥ずかしそうに反面嬉しそうにもしている。
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腹減ったな。腹時計は、待ってはくれない。丁度、昼過ぎでどこも混雑している。
俺たちは自分の好きな列に、並んでやっと休憩場所の机に戻ってくる。
思わず、真一のまえの小さな器のサラダに目がいく。
香枝が「おまえ、俺の半分やるよ」と、言って分けようとすると
真一は、慌てて手でさえぎる
「おれ、小食なんだ。もう、何年もそうだから。大丈夫」そうは、いっても。だから、青白いんだよとは言えず。
進と香枝は、大好きなカツ丼定食を食べつくす。その間で、真一はキャベツの千切りをゆっくり食べる。香枝は青虫みたいだなと思ったが口には出さなかった。