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第五話 SPY × FAMILIAR

【登場人物紹介】

七重(ななえ)

 「妖しい、僕のまち」より登場。

 正体は“大百足(おおむかで)

 血気盛んで忠誠心の厚い若武者。

 山本五郎左衛門さんもとごろうざえもんの眷属。


朱闇(しゅあん)

 「妖しい、僕のまち」より登場。

 正体は“土蜘蛛(つちぐも)

 良識のある細マッチョ美形。

 神野悪五郎(しんのあくごろう)の眷属。


白菊(しらぎく)

 「妖しい、僕のまち」より登場。

 正体は“茨城童子(いばらぎどうじ)

 銀髪に青い瞳を持つ男装の麗人。

 紅刃(くれは)酒呑童子(しゅてんどうじ))の眷属。



朱闇「…という訳で」


七重「ちょっと待て、速やかに待て!」


朱闇「どうした、七重」


七重「何が『…という訳で』だ!説明が一切無いだろうが!一体、どういう顛末を経れば、朱闇(貴様)がスパイ能力がバカ高い表向きは良識のある父親で、白菊(この女)が殺人も厭わぬ極道で表向きは慎ましやかな母親で、俺が暗器を使いこなす護衛で表向きはごく普通の小学生なのだ!?」


朱闇「頼んでもいないのに、行き届いた人物設定の説明、感謝する」


白菊「相変わらずうるさい奴だな。仕方ないだろう。今回の件は我らが主からの直々の指令だ。ならば、全力を持って遂行に動くのみ」


七重「俺が言いたいのはそこではない!主命とあらば命を賭す覚悟はある!」


朱闇「では、何が不満なのだ?お父さんに話してごらん」


七重「誰がお父さんだ、誰が!」


白菊「仕方が無いわ、あなた。この子も大きくなったし、反抗期なのよ」


七重「貴様もしれっと母親役になりきるな!」


朱闇「聞け、七重。此度の任務は潜入捜査になる。そのために、我ら精鋭三人がそれぞれの陣営から選ばれたのだ。そして、こうして仲の良い普通の家族として怪しまれないよう振る舞い、対象の情報を入手する必要がある」


七重「それはいいとして、何で俺が小学生なのだ!?どう見ても無理があるだろう!」


白菊「最近の人間の子ども達は発育もいい。貴様のガタイでも何とか通用するだろう」


七重「いやかなり無理があるぞ!仮に百歩譲ってこれで通すとして、何で俺がつんつるてんの制服姿にならねばならんのだ!?」


朱闇「今回潜入する先は、私立の名門小学校だ。そこに出入りするためには、怪しまれない格好を…プフッ…する必要がある…ゲフンゲフン」


七重「…シリアスな表情のままで笑いを堪えるな。殺意が沸く」


白菊「そうだぞ、朱闇。せっかく七重が体を張っているのだ。笑いものにするのは感心しないぞ」


七重「そういう殊勝な台詞は、俺の方をまっすぐに見て言え。あと、肩が震えているのは、どう見ても笑いを堪えているようにしか見えんのだが?」


朱闇「何にせよ、これから件の名門小学校で学校説明会が開かれるという。早速潜入するぞ」


七重「…本気でこの格好で行くのか…?」


白菊「心配するな。我々も保護者としてついていく。どこから見てもごく普通の家族に見えるだろう」


七重「だから、俺の方を見て、ちゃんと喋れ!」



~名門小学校「私立降神アカデミー」~



朱闇「ほぅ…さすがは名門。施設も洗練されているな。校内の雰囲気も一味違う」


七重「…そうだな」


白菊「保護者の顔ぶれもそうそうたるものだ。各業界の名士や子息ばかりだ」


七重「…そうだな」


子ども「ママー、あのお兄ちゃん、僕と同じ制服着てるよー。大人なのにおかしいねー」


母親「しっ!指差すんじゃありません!あと、見ちゃいけません!」


七重「ぬがーーーーーっ!やはり、この格好では怪しいだけではないか!!」


朱闇「こらこら、騒ぐんじゃない。皆さん、ビックリしまうだろう?」


白菊「この子ったら、小学校に来ることができて、嬉しくってはしゃいでしまったのね。おほほほほ…」


ジャキ…(←七重の後頭部に銃を押し当てる)


七重「!?」


白菊(騒ぐな。周囲に怪しまれる)


七重(この行為の方が十分怪しいぞ!)


白菊(いいから!この場を誤魔化すために今は楽しそうにしろ。できるだけ無邪気にな)


七重(こ、この格好でそんな真似できるわけ…)


ゴリ…(←さらに銃を押し当てる)


白菊(ここでの殉職を希望か?そのナリで屍を晒してみるか?)


七重「…わ、わーい!小学校、楽しいな~!(棒読み)」


白菊「あらあら、しょうがない子ね♡」


七重「…いっそ死にたい…(血涙)」


朱闇「ナイスだ、白菊…じゃなかった、母さん。さあ、二人とも校舎へ急ごう。説明会が始まってしまうよ」


白菊「あら、いけない。もうそんな時間なのね。さ、行くわよ、七重ちゃん」


七重「七重ちゃんだぁ!?」


ドスッ(←みぞおちにレバーブロー)


七重「おごっ!?」


白菊「あらぁ、急にうずくまってどうしたの、七重ちゃん?おなかが痛いのかしら?」


朱闇「それはいかん。早くトイレに連れて行ってやろう」


白菊「ええ、そうね。さあ、行きましょう、七重ちゃん」


ズルズル…


七重「…き、貴様ら…後で…覚えていろよ…」



~校内~



朱闇「さて、とりあえず、無事に侵入できたな」


白菊「まったく…七重が騒ぐから、一時はどうなることかと思ったぞ」


七重「やかましい!俺のせいみたく言うな!大体、潜入捜査なら、わざわざ変装して正面から乗り込む必要は無かろう!?


朱闇「ここのセキュリティーを甘く見るな。腐っても名門校、下手な方法で潜り込んでもあっさりバレてしまうぞ?」


七重「こんなクソ変装の方が思いっっっっっきりバレるわ!」


白菊「静かにしろ。ここからは関係者以外立ち入り禁止のエリアだ。速やかにターゲットを探すぞ」


朱闇「それなら既におおよその居場所は掴んでいる。こっちだ」


七重「なあ、もう潜入してるんだし、この変装は止めてもよかろう?」


朱闇「ダメだ。万が一、潜入がバレた場合、こちらの素性を誤魔化すために必要になる」


七重「…段々と…いやどちらかと言えば最初からだが…貴様らの脳が正常か否か、疑いたくなる…」


朱闇「着いたぞ。この部屋に学校のトップがいるはずだ」


七重「そう言えば、ターゲットって一体どんな奴なんだ?それに、潜入してどんな情報を探るつもりなんだ?」


白菊「情報によれば、この学校は裏社会でも悪名高いある人物が経営しているそうだ。そして、学校という施設を隠れ蓑にし、非合法な方法で相当な利益を上げているという」


朱闇「そうして得た権力は、今や神野様も無視できないほど拡大していてな。早々にカタをつける必要があるというわけだ」


七重「成程。山本様もそれで…」


白菊「そいつは大江山組(うち)領地(シマ)も狙っている節があってな。紅刃お嬢様も早々にケリをつけてしまいたいそうだ」


朱闇「そして、今回の潜入捜査の目的だが、ターゲットの正体を突き止め、組織の全容を掴むことになっている」


七重「何だ、偵察だけか」


朱闇「いいや」


白菊「このメンツが集ってそれだけではもったいないと思わんか?」


七重「…つまり、あわよくば敵将の首級を上げる…ということか」


朱闇「そういうことだ…行くぞ!」


ギィ…


七重「…暗いし、無人だぞ?」


朱闇「おかしい…ターゲットは用心深いから、ここから滅多に動かないと聞いていたが…」


カッ


白菊「うっ、照明が…!?」


??「ようこそ、我が校へ」


七重「何者だ!?」


??「私はこの降神アカデミーの総責任者。そして…」


バタン!


七重「扉が…!」


??「皆さんのお越しを歓迎したします」


白菊(罠か!)


朱闇(落ち着け!二人とも、不用意に動くな!)


??「フフフ…」


七重「…フン、どうやらこの変装もここいらが潮時のようだな、朱闇よ」


朱闇「いいや、待て。おい、白菊」


白菊「うむ…まあ!はじめまして。私たちは貴校の学校説明会の参加希望者です。会場がこちらと伺ったのですが…?」


七重「おい!?この期に及んで…」


??「あらあら、でしたらこちらで間違いありませんよ。分かりにくかったらすみませんね」


七重「はあっ!?」


朱闇「本日は大変参考になる説明会に出席が出来て光栄です、ああ、申し遅れました。私は父親の朱闇と申します。こちらは妻の白菊。そして、息子の七重です」


??「ご丁寧にどうも。私は当校の学長を務めております、沙牧(さまき)と申します。以後、よろしくお願いしますね」


七重「き、貴様は…!」


朱闇「…ふむ。これは厄介な」


白菊「ああ。よりにもよってあの『砂の魔女(サンド・ウィッチ)』とはな」


沙牧「どうしました?何か問題でも?」


七重「ありまくりだろ!…いや、ある意味、黒幕役としてはうってつけなのか…?」


白菊「何にせよ、なし崩し的に黒幕の正体を探るという任務は果たしたわけだが…どうする?」


朱闇「ふむ…あわよくば組織の壊滅を目論んでいたが、状況は向こうが圧倒的に有利か…よし、家族の偽装を続けよう」


七重「正気か!?」


朱闇「やむを得ん。ここで捕まるわけにもいかんしな。この難所を乗り切り、神野様たちへ情報を持ちかえることを優先しよう」


白菊「心得た。いいな、七重」


七重「ここまで恥を忍んで来て、手ぶらで帰っていいわけなかろう!貴様らがやらぬなら、俺がやる!」


朱闇「あ、待て!」


七重「問答無用!くらえ【斬山鎧装(ざんざんがいそう)】!!」


シュララララ…ガシャーン!


七重「何だ!?」


朱闇「奴の姿が消えた!?」


白菊「モニターだ。奴め、最初から映像で会話を…」


沙牧(あらあら。せっかくいま流行りのWeb開催を用意しておりましたのに…)


七重「卑怯者め、姿を見せろ!」


沙牧(と申しましても、私はいまドバイですし…)


朱闇「…本当のようだな。声はするが、妖気は感じられん」


白菊「仕方があるまい。今日のところは相手の正体が分かっただけでも収穫としよう」


沙牧(仕方…りません…説明…また…機会に…)


朱闇「音声が途切れた。どうやら、終幕か」


白菊「では、早速撤収しよう。聞こえてくるあの警報、どうやらセキュリティが作動したようだ」


七重「なあ、せめてこの胡乱な学校だけでも破壊しないか…?」


朱闇「たわけ、一般人もいるんだぞ」


白菊「さあ、行くぞ」


七重「ぐぬぬぬぬ…!このやるせない怒りはどうすれば…!」


朱闇「また次回にでもとっておけ。あと、その制服もちゃんと洗ってとっておけよ?まだ使えるんだから」


七重「二度と着るか、こんなものーーーーーーーーーーッ!!」



 こうして、三人は辛くも任務を達成し、脱出することができた。

 しかし、沙牧の野望は謎に包まれたままである。

 それを打ち破り、主に褒めてもらうため、三人の戦いはまだまだ続くのであった。



~後日・山本邸~


山本「ブッ…ククク…あはははははは…!!何だ、これ!サイコーだな、おい!!」


七重「………」


山本「神野のところの若造から記録映像だって送ってきたから何かと思って見たら…はははは、腹がよじれる…!おい、七重、よく似合ってるぞ、制服…wwww」


七重「朱闇ンンンン!!コロす…!!!!!」



                          《END》

次話は13時に投稿予定です

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