第三話 荒野の“ぬらりひょん”
【登場人物紹介】
・ロウ
「GUN-KNIGHTS - ガンナイツ -」の主人公。
旅の風来坊だが、その正体は「戦場の悪魔」と恐れられた魔銃騎士。
清貧を謳い、便利屋家業を営む大食い野郎。
・詩騙 陽想華
「生徒怪長は"ぬらりひょん"」のヒロイン。
降神高校生徒会のトップで、通称「生徒怪長」
その正体は“ぬらりひょん”
一見、聡明で美人な才女だが、中身は全てにおいて残念なヒロイン。
逃げ足だけは超一流。
・???
謎の脇役で、苦労人。
「ワイルドアース」…無尽の荒野が広がり、人も文明も疲れ果て、乾いた世界。
そのちょっとファンタジックでウエスタンな異世界を行く二人組がいた。
ロウ「…で、今回はお前さんの登場か…いや、タイトルからして、あからさまに不穏な空気は感じていたんだがよ(溜息)」
陽想華「はっはっは、そう心配そうな顔をしないでくれ。こちらの世界は初めてだが、ホラあれだ、要は銃をぶっ放して悪党どもを血祭りにあげればよいのだろう?」
ロウ「まあ、その解釈は否定しないけどよ…お前さん、銃を取り扱ったことがあるのか?」
陽想華「思クソない!(「超初心者」と書かれた扇子を広げる)」
ロウ「うわぁ、思いきり胸を張りやがったよ、この生徒怪長サマ。一応聞くが、その自信の表れはどこからくるんだ?」
陽想華「銃が打てなければ、お菓子を食べればいいじゃないか!(「革命」と書かれた扇子を広げる)」
ロウ「意味不明だし、思いっきり死亡フラグだぞ、それ」
陽想華「まあ、ロウ氏もいることだし、その辺は何とかなるだろう。それより、これからどうするのかね?」
ロウ「んー、まあ俺は当てのない旅を続けてるし、とりあえずさ迷うぞ」
陽想華「さ迷うって…何かしら目的はないのかね?」
ロウ「あ、一応何か探してるっていう設定で旅をしてるんだったな。まあ、そこはネタバレになるから、ここで言及するのはパス」
陽想華「む、訳ありということか。いいだろう、私もその辺には触れないようにしよう。貴作品とはお互いに不定期連載の仲だし、どうせ作者も多くは詰めてはおらぬのだろうし(「無責任」と書かれた扇子を広げる)」
ロウ「汲んでくれてサンキューだぜ。よし、んじゃここいらでメシにでもするか」
陽想華「おお、異世界料理か。それは興味深い。私もちょうど空腹を覚えていたところだ。で、どこの料理店に行くのかね?見たところ、周囲には街も見当たらないが…」
ロウ「ん?ああ、それならそこにちょうどいい砂地があるから、そこにしよう」
陽想華「砂地?ああ、成程。砂の熱を利用した蒸し料理の類かね?それはいい。異世界情緒に満ちた野趣溢れる料理だ(「珍味」と書かれた扇子を広げる)」
ロウ「お、なかなか感が鋭いな。ご明察の通りだ。ちょっと待ってな」
ざすっ(←砂地に手を突っ込む)
ロウ「ええと、この辺に…お、捕まえた」
陽想華「………」
ロウ「見ろ、丸々太ったのがいたぞ」
陽想華「…ロ…ロウ氏…その…手の中で…蠢いている怪奇生物は…何かね…?(硬直)」
ロウ「地虫(生食用)」
陽想華「ちょ!ちょっと待ってみよう!『蒸し料理』と言ってなかったかな!?」
ロウ「おう。だから『虫料理』だろ?」
陽想華「こ、昆虫食とは…(汗)」
ロウ「こうやって、新鮮なうちに生でかぶりつくとイケるぜ?」
パリグシャ…モグモグ
陽想華「…うっ…(顔面蒼白)」
ロウ「ん~、エクセレント♪ホレ、お前さんの分」
陽想華「ええええええええ遠慮する!あと、口元からどす黒い緑色の汁を垂らして近付かないでくれ!夢に見そうだ…!」
ロウ「うまいのに…」
陽想華「ご、ご厚意だけ受け取らせてもらう」
ロウ「じゃあ、残りはいただくぞ…って、ん?」
???「両者動くな!」
陽想華「む、何奴!?」
ロウ「聞くまでもないぜ。こういうパターンで登場するのは、大抵…」
???「そう。物取りと相場が決まっている」
陽想華「………」
???「………何か?」
陽想華「いや…一体何をしているのかね、副会長?」
副会長「その名で呼ばないでいただきたい。今は名もない野盗団のボスです」
陽想華「それは、その『世紀末だぜ、ヒャッハー』な服装を見ればよく分かるのだが」
副会長「ならば、事情を汲んでいただきたい。あと、僕も好き好んでこのキャスティングに同意してはいませんので」
ロウ「お前さんの知り合いか?あのヒョーロクダマ」
陽想華「うむ。彼こそ我が降神高校生徒会が誇る№2。我が右腕にして我が左腕。そして。我が頭脳にして我が責任回避の盾、その他諸々。その名も副・会・長!(「捨て駒」と書かれた扇子を広げる)」
ロウ「…結論、お前さんはその組織で何をやってんだ?」
副会長「おい、あの女だけは生かして帰すな。構わんから滅殺しろ。優先的にな」
ロウ「…色々苦労してそうだな、アンタ」
副会長「ご同情痛み入る。しかし、この場は配役に従うのがこのふざけた共演に出番を与えられた者の宿命…コホン…野郎ども、やっちまえ!」
ロウ「涙ぐましい配役根性…(涙)」
陽想華「はっはっは、その意気やよし!では、お相手仕ろう!ゆけ、ロウ殿!(「無双」と書かれた扇子を広げる)」
ロウ「だが断る」
陽想華「ドギャァーーーーーン!!…などと効果音を入れている場合ではない!何故ゆえにっ!?」
ロウ「知らなかったのか?俺は清貧を貫く正義の便利屋だ。よって、無償の労働はポリシーに反する」
陽想華「『正義』という言葉とここで私を守らない状況は微妙にマッチしてなくないか!?」
ロウ「っつってもなぁ。今は腹も空いてるし、労働意欲が湧かないんだよなぁ」
陽想華「さっき奇怪な昆虫を美味そうに食べていたはずだが!?」
ロウ「あれだけじゃ足りないよ。俺、育ち盛りだもん」
陽想華「推定二十歳近い男が『もん』とか言っても可愛くない!」
ロウ「おっと、そうこう言ってる間に野盗団の皆さんが迫ってるぜ」
陽想華「わ、分かった、君を護衛に雇う!なら、良いだろう!?」
ロウ「毎度あり♪」
陽想華「まったく、君という主人公は…で、いかほどになる?」
ロウ「んー、そうだな…パチパチパチりと…こんなもん?」
陽想華「ふむ、それなら何とかなるな」
ロウ「ちなみに、いつもニコニコ現金前払いだぜ?」
陽想華「………え゛(財布から引っ張り出したカードを持ちつつ硬直)」
副会長「かかれーーーーーーーーーーーーーーぃ!!」
陽想華「あーーーーーーーーーーーーーっ………!!」
「ワイルドアース」…無尽の荒野が広がり、人も文明も疲れ果て、乾いた世界。
そのちょっとファンタジックでウエスタンな異世界を行く二人組がいた。
いや訂正しよう。
二人は一人になったという。
~おしまい~
次話は11時に投稿予定です