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梅雨でも晴れ渡る

作者: hito

 先週あたりから梅雨の季節に入り、今日は朝から小雨。僕は玄関の靴箱にかけてあるお気に入りの傘を手に取り外で出た。傘をさすのは面倒だが、雨が地面をたたく音は好きだ。少し歩くと小学生ぐらいの男の子たちが楽しそうに会話している。彼らが僕に気づいて挨拶してきた。

「おはようございます!」

 高校2年生の僕は少々恥ずかしい思いもあるが、その挨拶に返答した。

「おはようございます。足元気をつけてね。」

 思春期終わりかけという年齢ではあるが、こちらから見ず知らずの相手に話しかけるのは勇気がいる。彼らの勇気のいらない挨拶はうらやましく思えた。

 ところで、思い出したくもないが、今日は国語と数学の実力テストの日だ。出題範囲は中学から高校一年生までに学んだ範囲。まさしく、これまで学んだことをいかに理解して問題に挑めるかという実力が試される。

 小学生たちと別れ、10分ほど歩くと校門がみえた。色とりどりの傘をさした同年代の高校生が同じ場所に吸い寄せられている。傘をしまい下駄箱で靴を履き替えていると、背中を軽く叩かれ、同時に誰かに声をかけられた。

「おはよ!あららー?ちょっと浮かない顔やない?」

 3つ先の下駄箱にいる人に話しているのかと思えるほどのハッキリとした大声。蓮花れんげという名のブロンズセミロングの髪型に赤目の彼女は、僕にニンマリと笑顔を向けている。そんな彼女に僕は少々驚きながらも、彼女の4分の1ぐらいの声量で答えた。

「そりゃ、やりたくもない実力テストの日だからねー。」

「でもさ!テスト終わったら、すぐ帰れるやん!今日は遊べる時間いっぱいある!」

 蓮花の底のない前向きな思考には救われる。実力テストが終わった後のことについて考え始めると、少し曇っていた気持ちが晴れてきた。

「まあ、確かにな。ありがとな!」

「えー?もっと感謝して!頭が高い!」

 なんやかんや話しているうちに教室に着いた。ふと、蓮花と実力テストが終わったらカラオケに遊びに行きたいと思ったが言い出せない。そう考えて蓮花をふと見ると、その赤目とばっちり目があった。

「カラオケ行きたいって目してる!」

 その赤目には相手の心の情報をスキャンする機能でもあるんですか?僕はその視線から目をそらした。それ以上の情報を彼女に汲み取られることを阻止するためだ。

「どうだろうね。」

 少しふてくされた感で僕は答えた。しかし、それは彼女のスキャンが正確であったことを教えているようなものだった。蓮花はお得意のニンマリとした笑顔を作って自分の机へと向かった。僕も自分の机へと向かい座って実力テストの準備にとりかかった。僕は実力テストが終わったら蓮花をカラオケに誘う、という決意を強めていた。

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