表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第7章 大陸暦1153年
99/160

099 マイフォーディア王国の王都

 マイフォーディア王国の王都に着いたのは、フルルーフ王国の王都を出発してから12日目のことだった。

「マーク君、エリカさん、アリスさん、君達が護衛に付いてくれて本当に助かったよ。君達のこれからの旅路に(さち)あらんことを祈っているよ」

「ありがとうございます。こちらこそ馬車に便乗させていただいて助かりました。フルルーフ王国への帰路も気を付けてくださいね」

 まぁ、途中で出会った盗賊団みたいなのが、そんなに頻繁に出現するとは思えないけどね。


 なお、この国の王都は、さすがに王都だけあってかなり栄えているようだ。我が国の王都と同じくらいの規模だろうか。

 まずは運送業者か商会を探して、テトレドニア公国行きの便(びん)が無いかどうかを調べてみよう。あ、その前に教会で女神に報告したほうが良いかな?

 今日はこの王都に泊まる予定なので、先に宿屋を見つけるべきか。

 考えた結果、まずは宿屋に入って、そのあと俺だけが教会に行って報連相ほうれんそう(報告・連絡・相談)をすることにした。テトレドニア公国への行き方は女神に聞いたほうが早いしね。

 俺達は三人ともかなりの金持ちで、マジックバッグに全財産を入れて持ち歩いている。なので、かなりの高級ホテルであっても何泊もできるよ。目についた高級そうな宿屋に入って、受付の人に部屋の空きを尋ねたところ、一人部屋を3つ確保できた。一人一泊2万エンらしい。食事が付かないことを考えると、そこそこ良い値段だな。

 エリカとアリスを宿屋に残し、俺は一人で教会へ出かけた。場所は宿の人に聞いたんだけど、徒歩5分くらいの近さだった。


 大聖堂で祈りを捧げる体勢になったあと、女神に呼びかけるとすぐに返事があった。

『マイフォーディア王国の王都に到着したようですね。順調順調』

 順調?いえ、途中で盗賊団に出会いましたけどね。

『そのくらい普通ですよ。そう、想定内です』

 本当ですか?想定内という言葉を使いたいだけじゃないですか?

『いや、本当に想定内ですよ。未来は不確定で、ちょっとした刺激で変化してしまいますが、今回の盗賊団の一件は99%以上の確率で予想できていました』

 はぁ?だったら事前に言っておいてくださいよ。知っていれば回避できたかもしれないのに。

(さら)われた女性達のことを忘れていませんか?あの子達を救うには盗賊団を壊滅させるしかなかったでしょう?』

 うーん、確かに。どっちみち回避することはできなかったかな。

『そうでしょう、そうでしょう。必要ならばきちんと事前に伝えますからね。まぁ、今回は女神の使徒として、十分な働きだったと褒めてあげましょう』

 はぁ、まぁ良いですけどね。あ、聞きたいことが一つ。次の国、テトレドニア公国へ行く方法って教えてもらえますか?

『今泊まっている宿屋の近くにマイセン商会という貿易商の店があります。そこを訪ねてみなさい』

 おお、話が早いな。んじゃ、これで。テトレドニア公国に着いたら、また連絡します。

『えええ?早いよ、早過ぎるよ。もう少しおしゃべりしようよ。ほら、天下五剣の話とかさ』

 やはり知ってたか…。さすがです、オタク(しん)様。

 このあと、女神とオタクな会話をしたわけだけど、あまりに祈りの時間が長いせいで神父さんやシスターさんにめっちゃ心配されたのは、なんだかデジャブー。


 教会から宿屋に戻る前にマイセン商会を探してみた。宿屋の3軒隣で本当に近くだった。

「すみません。ちょっと良いですか?」

「いらっしゃいませ。どうぞ中へお入りください」

 俺が店の中へ入ると、初老で貫禄のある店主(?)が店の奥から出てきた。

「私と連れ二人はテトレドニア公国へ行きたいと思っているのですが、こちらのお店では()の国へ行くような馬車便(びん)などは運行していないでしょうか?」

「馬車ではありませんが、馬に荷を載せて人間は徒歩で行く隊商(キャラバン)であれば、テトレドニア公国への定期運行がございますよ。三人分は無理ですが、一人分なら馬に乗っていただいても構いません。もちろん、その一人分の運賃はいただきますが…」

 おお、だったらエリカを馬に乗せて、俺とアリスが歩けば問題ないな。

「ぜひ、それでお願いします。それで次の便はいつ頃出発するのでしょうか?」

「ええっと、次は二日後の出発ですね。ちょうど前回の隊商(キャラバン)が戻ってきたばかりなので、お客様方は運が良い」

「あ、それで一人分の運賃って、おいくらでしょうか?」

「テトレドニア公国の首都までは約500kmですからね。一日20kmを進むとして25日間となります。一日分の運賃が2万エンとして50万エンになりますかな」

「当然、食事代などは別会計ですよね?」

「はい、徒歩で同行される方の分も含めると、食事代だけでも三人分で30万エンはいただきたいですな」

 えーっと、一人一日4千エンか。まぁ、妥当なところかな。

「基本的に野宿ですか?それとも宿場町の宿屋に泊まるのですか?」

 野宿だったら食事の手配もお願いしよう。宿場町で泊まることが多いのならいらないかな。

「基本は宿場町での宿泊と食事になりますな。なので、食事を予約される方はほとんどおりませんね」

「分かりました。それでは食事手配は不要ということにして、一人分の運賃50万エンだけをお支払い致します。徒歩での同行については無料ですか?」

「もちろんでございます。では馬のほうは手配しておきますので、明後日の出発日には朝8時にここにおいでくださいませ」

 よし、これで次の国への移動手段は確保できた。俺とアリスは徒歩だけど…。まぁ、一日20kmくらいなら全然問題ないだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ