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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第1章 大陸暦1146年
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009 10歳のアリス

 うちの屋敷の使用人は、筆頭の執事さんと五人のメイドさん、料理人一人と庭師一人から成る。布生成の【恩恵(ギフト)】を持ち、俺に生産系【恩恵(ギフト)】の使い方を教えてくれたターニャさん、年配のメイド長と最年少のアリスちゃん、そのほかにも20代前半のメイドさんが二人いる。ターニャさん以外は全員商業系の【恩恵(ギフト)】持ちだ。

 このうちアリスちゃんが年末の12月に誕生日を迎え、教会で【恩恵(ギフト)】を授かることになった。

 メイド長に連れられて教会に行ってきたアリスちゃんは、屋敷に帰ってきたときにはニッコニコだった。そんなに良い【恩恵(ギフト)】を貰えたんだ。何だろう?

 うちの家族が揃う夕食の時間、食堂でアリスちゃんから結果を報告してもらった。個人情報ではあるんだけど、再来年に通う学校の関係があるため(就学準備)、雇い主へ報告するのは通例なのだ。

「皆様、本日は仕事を抜けて申し訳ありませんでした。私が頂いた【恩恵(ギフト)】は【ガラス生成】というものでした」

 10歳になったアリスちゃんが誇らしげに言った。教会のシスターによると希少性の高い【恩恵(ギフト)】らしい。ここフルルーフ王国の王都でも、この【恩恵(ギフト)】の持ち主は極めて少数だそうだ。

 習熟すれば、メイドではなくガラス職人として工房を構えることも夢ではない。うん、素晴らしい。てか、アリスちゃんに馬車の窓ガラスを作ってもらえるな。

「【ガラス生成】とはまた良い【恩恵(ギフト)】を頂いたものだ。再来年からマークとともに技術学校へ通うことになるが、学校の卒業まではメイドとしての働きも期待しているよ。もちろん、卒業後はうちを辞めてガラス工房を立ち上げても構わないからね」

 父上がアリスちゃんに優しく言った。

「旦那様、ありがとうございます。将来のことはまだ分かりませんが、メイドとしてしっかり勤めさせていただきます」

 ちなみに、【恩恵(ギフト)】を貰う前は『メイド見習い』なんだけど、10歳の誕生日からは『見習い』が取れる。あと、14歳になったあとの3月に学校を卒業するんだけど、その翌月の4月に成人することが定められている(この国では)。…って早いんじゃないの?成人するのが。


 ここでエリカが不服そうにつぶやいた。

「マークと同じ技術学校に通えるなんて羨ましい…」

 あー、確かに、入学の時点で周りに知り合いがいるかいないかって重要だよな。下手したらボッチになるかもしれないし…。俺も知り合いができて嬉しいんだけど、アリスちゃんとしては雇用主の息子が同級生ってのは嫌かもしれない。ごめんよ、アリスちゃん。

 アリスちゃんは(エリカとはタイプが異なるものの)美少女と言って差し支えない容姿なので、きっと学校でも人気者になれると思うよ。

「マーク様と同じ学校に通えるなんて…嬉しい」

 アリスちゃんの小声でのつぶやきを聞き逃さなかった俺だが、それって本当かな?本当だったら俺も嬉しいよ。


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