表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第6章 大陸暦1152年
87/160

087 女神との話し合い

 会議終了後、大司教、俺、国王陛下の順で退室しようとしたら、俺の足が何かに(つか)まれたように動かなくなった。俺の後ろにいた陛下がちょっと驚いたように突然立ち止まった俺を見たけど、あっさりと見捨てて部屋を出ていった。王太子殿下も同様だ。ちょ、助けてよ。

「マーク、あなたはここに残りなさいね」

 地の底から発するような声でエリカが言った。た、助けて!国王陛下、大司教猊下。

 このあと、家族や友人達からの質問攻めにあった俺だった。いや、質問は陛下がいたときにお願いしますよ。それでもなんとか、使徒であることは隠し通したけどね、はぁー(溜め息)。


 このあと、俺は教会に寄って上司(女神)に相談した。

『マーク、根回しは順調のようですね。これで来年の4月には旅に出られることでしょう』

 そうですね。かなり疲れましたけどね。ああ、平穏な日々が懐かしい。

『ふふふ、若者が何を言っていますか。あぁ、そう言えば精神年齢はアラフィフでしたね。これは失敬』

 いらっ。と・に・か・く、準備は順調ですよ。んで、相談なんですが、俺の幼馴染のエリカ・アトキンスが旅に同行したいと言っているのですが、どうしたものですかね?

『会議の場面は見てましたよ。相変わらずモテモテのようで(うらや)ましいですね』

 ダンやジョセフィンさんみたいなことを言ってやがる。エリカの俺への気持ちには気付いているし、俺もエリカのことは大切に思っている。だからこそ危険な目には合わせたくないのですよ。

『そうですね。でもあの子が同行することで、あなたの生存確率は跳ね上がることになりますね。私としては同行をお勧めします』

 ちなみに、エリカがいる場合といない場合の俺の生存確率って教えてもらえます?

『良いですよ。いない場合は30%、いる場合はなんと50%ですね。これは一緒に行くしかないでしょう』

 えええ?エリカがいても半々なの?どんだけ危険な任務なんだよ。まじかよ、死にたくねぇ。

『もしもこの任務で死んだら、また別の世界に転生させてあげますよ。安心してください』

 …って安心できねぇ!俺は何気(なにげ)にこの世界のことを気に入ってますからね。できれば天寿を(まっと)うしたい。

『嬉しいことを言ってくれるじゃありませんか。私の世界を気に入ってくれて良かったです。まぁ、死なないためにもエリカ・アトキンスを同行させなさい』

 はぁー、分かりましたよ。エリカ自身に危険が及ばないのであれば…。

『それは大丈夫です。あなたが守れば良いだけですからね』

 簡単に言ってくれますね。せめて物語のチート勇者のように全属性魔法の使い手とかだったら良いのに…。

『俺TUEEEはファンタジーの定番ですが、強さのインフレは話自体の面白さを消し去りますよ。やはり修行によって強くなるのが王道です。ジャッキーの偉大さが分かりますね』

 …って、香港映画まで網羅してるのか、この女神。どんだけ地球の娯楽が好きなんだよ。


 まぁ、とにかくエリカは連れて行きますよ。ほかに同行させたほうが良いって人はいますか?

『アリスですね。来年の3月末までに身体強化をマスターさせなさい。彼女には才能があります。そして、彼女を同行させることであなたの生存確率が60%に上がるという素晴らしさ。うん、これは連れていくしかないでしょう』

 はぁぁぁ?アリスって俺の隣の部屋のアリスちゃんのこと?嘘でしょ?

『本当です。魔力付与は難しいかもしれませんが、身体強化は確実にできるようになります。というか、あの子は旅に勝手についてきますよ』

 あー、俺もそんな気がしてた。一心同体とか言ってたし…。しかしながら、魔力感知と魔力移動から練習するには時間が足りないのでは?

『ふっふっふ、実はですね、その訓練をしていない人のほうが身体強化は早くマスターできるのですよ。個人差もありますが、だいたい三か月くらいですかね』

 えええ?魔力によって筋力なんかを増強する技術なのに、魔力移動はいらないんですか?俺は魔力移動で身体強化してますけど。

『うーん、魔力移動というよりも魔力浸透ですかね。身体中に魔力を染み渡らせるのが重要なのです。なので、魔法師のほうが習得は難しいと感じるでしょうね』

 えー、ということは俺の身体強化は完璧じゃなかったってことですか。

『そうですよ。もっと効率的に発動できるはずです。それこそ活動限界が30分とかになるくらいに』

 分かりました。もっと精進します。あ、そうだ。ほかの友人達にも身体強化の訓練をしても良いですかね?いくら「王家の影」が護衛につくとは言っても、本人の能力を上げておくに越したことはないので。

『それも許可しましょう。ただし、その友人達には他言無用を厳守させなさい。あまり広めたくはない技術なのですよ』

 了解です。それじゃ、あとは、俺とエリカ、アリスちゃんの3人パーティーで行動することを大司教に夢のお告げで伝えておいていただけると助かります。

『えええ、夢のお告げは大変なんですってば』

 そのくらい便宜を図ってもらっても(ばち)はあたらないと思いますよ。おっと女神だから(ばち)をあてる側でしたね。

『むー、仕方ありませんね。まぁ、そのくらいはさせてもらいますよ。面倒くさいけど…』


 こうして女神との話し合いは終わった。

 エリカとアリスちゃんの件については、先々教会側から何らかのアクションがあるだろう。

 あとは、アリスちゃんやその他の希望者に『身体強化』の訓練を行えば良いってことか。訓練完了が旅立ちの日までに間に合えば良いんだけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ