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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第6章 大陸暦1152年
82/160

082 聖人

 せっかく教会に来ているんだから、ずっと疑問に思っていたことを聞いておこうかな。


 そう言えば、今更(いまさら)と言えば今更なんですけど、この世界の単位って長さだったらインチやメートル、重さはグラムに温度は摂氏とか、なぜか地球と同じですよね。どうなってるんですか?時間についても、分や秒は60進数だし。

度量衡(どりょうこう)については地球のものをパクりました。別に良いじゃないですか。地球に迷惑をかけているわけじゃなし』

 まぁ、俺としては馴染(なじ)みのある単位でありがたいですけどね。てか、インチはあるのにフィートやヤードが無いのはなぜ?

『私としてはメートルが好きなんですよ。でも、なぜかタイヤやピザの大きさはインチ表記ですからね。それを踏襲(とうしゅう)しただけです』

 確かに…。ハードディスクドライブの円盤の直径なんかもインチですね。大砲の口径についてはアメリカではインチ表記、日本ではメートル表記になりますけどね。

『あとは、私が日本のアニメを好きだからってのも理由としては大きいですね。あ、そうそうアニメと言えば、魔力付与で南斗なんちゃら拳みたいなことが実現できますよ。魔力を体内循環させるのが身体強化、身体の外側つまり皮膚の表面にコーティングするのが魔力付与だと思ってください』

 おお!できるのか、南斗○拳。それはぜひ実現したいところだな。ちなみに、女神様は今でも新作アニメをチェックしているんですか?

『もちろんですよ。最近は「なろう系」と呼ばれる異世界転生ものや異世界転移ものが流行(はや)ってますよ』

 へぇー、そうなんだ。てか、俺も異世界転生の当事者なんですけどね。


 …などという雑談を女神としたあと、いつも通り教会に多額の寄付を(おこな)ってから家路(いえじ)についた俺だった。


 アパートに帰宅すると庭に馬車が停まっていて、御者台にはセシリアさんが座っていた。

「こんにちは、セシリアさん。お久しぶりです。アンネットやソフィアちゃんが来ているのですか?」

「マーク様、こんにちは。ええ、そうですよ。すでにお部屋に入っていることと思います」

 家主(やぬし)不在であっても、来客が勝手に部屋に入っているのはいつも通りだ。もちろん、アリスちゃんがいるからなんだけど。

 で、帰宅した俺は、なぜかお客様方から「お帰り」と言われるわけだけど、いつも妙な気分になるんだよね。まぁ良いけどね。

「ただいまー。皆、お久しぶり」

「マーク様、お帰りなさいませ」

「マークお兄ちゃん、お帰りー」

「マーク、お帰りなさい」

 順にアリスちゃん、ソフィアちゃん、アンネット嬢の言葉だね。

「マーク、遅いわよ。また教会に行ってきたそうね。あんたのことが教会で噂になってるそうよ」

「へ?エリカさん、どういうことだい?噂って?」

「安心しなさい。良いほうの噂よ。あまりにも長い祈りの時間と、個人でありながら王室に次ぐくらいの寄付金の額のせいで、あんたに聖人の称号を与えようかって話になってるそうよ」

 うわぁ、まじかよ。聖人って言われても、別に奇跡を起こしたりしてないぞ。

「マークお兄ちゃん、すごいっ!エリカ先生、それ本当ですか?」

「まだ噂の段階だけどね。それにしても何をそんなに長く祈っているのやら」

 女神とアニメの話をしてました。


 ・・・


 …とは言えないよね、さすがに。

 あ、でも聖人の称号をもらって教会の後ろ盾を得れば、女神から託される予定の仕事(未開拓領域における魔物の保護活動)がやりやすくなるかもしれないな。


 そして次なるジョセフィンさんの発言が物議(ぶつぎ)(かも)すことになった。

「マーク様が聖人となられれば、この国では貴族と同等の権威を持つことになるでしょう。それこそ、貴族のご令嬢との婚姻も可能になるでしょうね」

 エリカとアンネット嬢とソフィアちゃんの目が輝き、アリスちゃんが悲しそうに(うつむ)いた。

「マーク、あんたが聖人になった瞬間、私との婚約を復活させるわよ」

「エリカ先生、ずるいです。マークお兄ちゃんと婚約するのは私ですよ」

 エリカとソフィアちゃんの口論が勃発(ぼっぱつ)しそうになったので、俺は(あわ)てて言った。

「ちょっとジョセフィンさん、まだ仮定の話ですからね。それに俺はそういう話が来たとしても、お断りするかもしれませんし…」

 そう、聖人なんて目立ち過ぎるんだよ。俺の求めるライフスタイルとはかけ離れているしね。これを聞いたアリスちゃんが嬉しそうに微笑んだのを見て、やはりこの子を悲しませるようなことはしたくないなと思ったよ。恋心とは少し違うんだけど(親心のほうが近いかも…)。


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