081 魔力付与の成功
エリカとのデートの際に初めて成功した『身体強化』だが、その翌日に筋肉痛になることもなく無事だった。やはり強化した時間によって筋肉への負荷が違うのだろう。
どのくらいの時間なら大丈夫なのかを検証すべきなんだけど、やる気が起きないよ。そりゃそうだ。翌日、筋肉痛になるんだから…。今度教会で女神に尋ねてみよう。
もう一つの技術である『魔力付与』、つまり武器に魔力をコーティングする技術だけど、こちらもなんとかマスターできそうだ。
今、アパートの裏庭に鉄棒を立てている。太さは直径2cmで長さは2m、その鉄棒を50cmほど地面に埋め込んでいるのだ。苦労して深さ50cmの穴を掘り、鉄棒を立ててからそこにコンクリートを流し込む。これで来週の休日には訓練に使えるようになっているだろう。
んで、次の休日、早朝から俺はその鉄棒の前に木刀を構えて立っていた。まだ暗い早朝である理由は、あまり他人に見られたくないからだ。
木刀に魔力をまとわせ、それを硬化させる。一応、刃に当たる側が鋭利になるようにイメージしてみよう。
『身体強化』を発動させてから、木刀を袈裟懸けに振りぬいた。
あれ?鉄棒に当たった衝撃が手に伝わると思っていたら、なぜかあっさりと振り抜けたよ。やべぇ、木刀が折れたかな?
そして、一瞬の後、鉄棒がゆっくりと二つになって上半分が地面に落ちた。えええ?嘘だろ?木刀で鉄の棒を斬っちゃったよ。まじか?
木刀の状態を確認すると、傷一つ付いていない。うーん、これは相当やばい技術なんじゃないか?てか、せっかく苦労して地面に埋めた鉄棒が短くなっちゃったよ。
横で見ていたアリスちゃんが手を叩いて喜んでいる。
「マーク様、すごいです。手品みたいです」
まぁ、確かにあり得ないって意味では手品みたいだね。俺もちょっと信じられないよ。
あとは発動までの準備時間だな。すぐに『魔力付与』を発動できるように練習していこう。もちろん『身体強化』もだけど。
そう言えば、森に落ちてる木の枝なんかにも『魔力付与』できるのかな?まぁ、おそらくはできると思うけどね。あと、素手つまり手刀にも『魔力付与』ができれば面白いな。もしそれができるのなら、無手での無双ができるかも。うーん、男のロマン。
その日の昼前に一人で教会へ行った。
大聖堂で跪いて祈りを捧げると、すぐに女神の声が聞こえてきた。
『マーク、今回は前回の祈りより2週間しか経っていませんが、どうしましたか?』
身体強化と魔力付与に成功したことを報告しようと思いまして。あと、身体強化の筋肉にかかる負荷について、詳しいところを教えてください。
『それはおめでとう。あなたの今の筋力であれば、身体強化が3分以内であれば負荷はほとんど無いはずですよ。つまり翌日の筋肉痛はありません。ただし、5分が活動限界ですから、気を付けてくださいね。5分を過ぎるとその場で動けなくなってしまいますよ』
なるほど。アンビリカルケーブル断線後に内部電源のみで動く場合の活動限界と同じですね。って、何の話だよ。
『あなたもエヴァ好きだったのですね。私も好きなんですよ。新劇よりも旧劇ですよね、やっぱり』
いや、俺は新劇の序が好きですけどね。特にラストの「笑えば良いと思うよ」のところとか。てか、テレビ版とか前世では年齢的に見てないですよ。
このあと、なぜか地球(日本)のアニメの話で盛り上がった女神と俺だった。意外とオタクな女神だった。




