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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第6章 大陸暦1152年
80/160

080 王国上層部へのお披露目

 王室所有の馬車(カーチス家が献上したやつ)に乗って国王陛下や王太子殿下、王女様のお一人に宰相や重臣達、総勢8名が郊外実験場に来ている。もちろん、護衛の近衛騎士団30騎も一緒だ。

 外燃機関研究室からはゴードン室長とマーガレットさん、土木・建築研究室からはロバート室長が別の馬車で来ているんだけど、そこになぜか俺もいる。俺は()らないんじゃないか?と主張したんだけど聞き入れられなかったのは残念だ。

 まずはロバート室長が説明を始めた。

「土木・建築研究室のロバートと申します。この実験場に使われております石灰岩から作られたものは、コンクリートと申します。極めて固く、かつ造形をしやすい素材であります。将来は道路や建物に活用できるでしょう」

「ふーむ、なるほど。石組みの砦などをこれに変えれば建設工期が大幅に短縮できそうだな」

 陛下自らコンクリートを触りながら、興味深そうに言った。

「はっ、仰せの通りにございます」

 陛下はなぜか俺のほうを見てニヤッと笑った。何なの?


 次にゴードン室長の出番だ。

「外燃機関研究室のゴードンです。蒸気機関の利用例の一つとして蒸気自動車を製作しました。これなる研究員が運転してご覧に入れますので、ご照覧くださいませ」

 ゴードン室長がマーガレットさんに合図をすると、打ち合わせ通りすぐに蒸気自動車を動かし始めた。ボイラーの火はすでに()かれている状態にしていたからね。

 スタートこそゆっくりだけど、次第に速度を上げていき、すぐに小さくなった。なにしろ100km/h出るからね。

 しばらくして戻ってきたときには見学者全員が驚きに目を見張っていたよ。どうですか?すごいでしょう?

「これは馬よりも速いのか?すごいものを作ったものだな」

 陛下が感嘆しながら言った。ただ、そのあとにまた俺のほうを見たよ。


「王宮の予算を()いて二つの研究室を立ち上げた甲斐があったというものだな。どうだ、宰相よ。お(ぬし)はこれらの研究開発に金を使うのを反対しておったよな」

「ははっ、(わたくし)の目が曇っておりましたこと、反省致しております」

「くっくっく、マーク・カーチスという天才が我が国に生まれたことに感謝せねばな」

 …って、別に俺の功績じゃないんですけど…。一応、『天才』ってところは否定しておきたい。

「恐れながら発言をお許し願えますでしょうか?」

「おお、良いぞ」

「感謝致します。えー、謹んで申し上げますが、私は天才ではありませんし、これらの新技術も私の功績ではありません。全ては優秀な研究員の方々の功績であります。それをご理解いただけますよう、何卒(なにとぞ)お願い申し上げます」

 ゴードン室長、マーガレットさん、ロバート室長が驚いて俺を見ているけど、実際に俺は何もしていないよ。色々と口を出しただけです。

「優秀な研究員の功績であることはもちろん承知しているとも。そこにはそなたも入っているがな」

「はっ、ありがとうございます。なお、一つ申し添えておきますと、蒸気自動車の真骨頂(しんこっちょう)はその速度ではなく、土木工事に使う道具としての有用性でございます。この実験場の整備にも大いに役立ったことをご報告申し上げます」

 俺は土木・建築研究室の所属でもあるからね。この点はアピールしておきたいところだ。

「うむ、それはすでに報告を受けておる。それにしても感無量よな。石油の精製から始まり、ついには新しい動力機関まで開発してしまったわけだからな。近隣諸国に比べて我が国が一歩、いや十歩、二十歩ほど先に進んでおるだろうよ。これからは防諜(ぼうちょう)や防衛にも気を配らねばならぬな」

 確かに防諜、つまりスパイ対策は必要だろうね。あと、他国が我が国を侵略してくる可能性も高まるかもしれない。国境への迅速な兵力展開のためにも鉄道建設は重要になるかもね。


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