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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第1章 大陸暦1146年
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008 生活魔法

 エリカが二週間で、俺が三週間で魔力を感じ取れるようになった。これって、姉さんに言わせるとかなり優秀らしい。

 次は魔力を体内で移動して手の平から放出する訓練だ。ただし、可視化しないと成功しているのかどうかが分からないので、特殊な器具を用いる。

 占い師が使うような大きな水晶玉(ガラス玉かもしれないけど)が台座に半分埋まっているのだが、そこに手を触れて魔力を放出すると水晶玉が光るらしい。さらにその光の強さは放出された魔力量に比例するとのこと。ちょっと面白そうだ。

 まずはドリス姉さんが見本を見せてくれた。右手が水晶玉に触れた状態で、目を閉じて集中している。と、徐々に水晶玉が光り始めた。

「ふぅー、こんなものかな」

 姉さんが水晶玉から手を離すと光が消えた。

 エリカと俺は思わず拍手してしまったよ。姉さんも得意げだ。

「ドリスお姉様、すごいです。どれくらいの期間、練習すればできるようになるのでしょうか?」

 エリカの問いは俺の疑問でもある。

「そうねぇ、私の場合は二か月くらいだったかしら。エリカちゃんならもっと早いわよ、きっと」

 うわぁー大変だな、魔法使いって(他人事(ひとごと)…二回目)。てか、俺も練習しなきゃいけないの?無意味なのに…。

「あんたは私の婚約者なんだから、付き合うのが当然でしょ」

 はぁ、まあ良いけどね。お嬢様の仰せのままに。


 ちなみに、俺は魔力移動の練習と並行して【車輪生成】の習熟度を上げる訓練もしている。昼に魔力移動、夜に【車輪生成】って感じだ。でも、なかなか水晶玉は光らない。ここまで練習開始から一か月は経過しているし、エリカは数日前に成功しているから俺も少し(あせ)っている。

 魔力を認識することはできるのだが、それを自由に移動できる気がしないのだ。うーん、漫画やアニメの念動力(サイコキネシス)みたいな感じでイメージしてみるか。動かす対象は体内魔力だけど。

 水晶玉に触れながら目を閉じてイメージしていると、姉さんやエリカが驚きの声を上げた。うっすらと目を開けてみると、おぉ!光ってるよ。しかもめちゃくちゃ(まぶ)しいんだけど。

「マーク、この光の強さは異常よ!」

 姉さんに異常者扱いされてしまったよ。俺、なんかやっちゃいましたか?

 …って、この定番のセリフを言えたのはちょっと嬉しい。でも魔法系の【恩恵(ギフト)】を持っていないから、全くの無駄なんだけどね。


「気を取り直して、次に進みましょう。二人とも魔力移動ができるようになったので、生活魔法を教えます」

 え?生活魔法?それって魔法系の【恩恵(ギフト)】じゃないの?

「生活魔法は誰でも使える魔法です。もちろん魔力移動ができることが大前提だけど」

 ドリス姉さんの説明によれば、マッチ棒の先くらいの火を生み出す『ファイア』、ちょろちょろ流れる水を出す『ウォーター』、部屋の掃除なんかに使う『クリーン』の三つは魔法陣さえ用意すれば誰でも使えるらしい。

 すごい!生産系【恩恵(ギフト)】持ちの俺でも魔法が使えるのか。めっちゃ嬉しいんですけど。

「魔法陣はこれよ」

 10センチ四方くらいの大きさの金属板に精緻(せいち)な模様が描かれている。それが三枚。それぞれ『ファイア』『ウォーター』『クリーン』と書かれていた。


「あ、一つ注意しておくけど、魔法の練習をするなら必ず屋外か魔法練習場で行うこと。危険だからね」

「はい、分かりました、ドリスお姉様。それではすぐに外に行きましょう」

 エリカが散歩をねだる子犬のようになっている。てか、俺も早く試したい。


 うちの屋敷の裏庭に出てきた俺達は、ドリス姉さんの説明を一言も聞き漏らすまいと集中している。

「左手でこの板を支えて、右手の人差し指をここの模様に付けるの。で、魔力を指先から放出すると…」

 目の前の何もない空間から水が(したた)り落ちた。最初は危険性の低い『ウォーター』で試してみるようだ。

「それじゃ、まずはエリカちゃんからやってみようか。そのあとはマークね」

 エリカが何の問題もなく成功し、俺も試してみたら成功した。続けて『ファイア』では小さな火の玉が目の前に浮かんだのを見てかなり感動したよ。ただし、『クリーン』だけは効果がよく分からなかった。これは部屋の中で発動すると(ほこり)だらけの状態からきれいな状態に変わるらしいんだけど、練習してるのは屋外だし、部屋の中ももともときれいに掃除されてるからなぁ。

 なお、消防車の放水のように水が出たり、火炎放射器のように炎が噴き上がったり、そういう過剰な威力になって「な、なんという魔力量だ。こいつ人間か?」などと驚かれるような中二病的展開を妄想してみたが、全然普通の威力だった。おーい、女神さんや、転生者特典は?


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