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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第6章 大陸暦1152年
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079 最高速度計測実験

 土木・建築研究室でのコンクリートの研究によって、石灰と砂や水の最適な配合比率が判明した。これによって郊外実験場の(10メートル×3000メートルの)3万平方メートル分のコンクリート舗装が行われた。余談だけど、石灰をかなりの高温で加熱して生石灰(せいせっかい)まで作っていたよ。すごいな。

 深さとしては2cmずつ硬化させ、それを5回繰り返すことで10cmの深さまでコンクリートになるようにしたそうだ。この(あた)りは俺のアドバイスじゃないよ。

 コンクリートの流し込みに一日、硬化させるのに一日、それを5回繰り返したのでトータルで10日はかかっている。途中で雨が降らなくて良かった。

 このとき活躍したのも蒸気自動車だった。後部のローラーを外して、代わりにコンクリートの入った貨車を引っ張っている。前世のミキサー車のように回転させ続けることで硬化を防ぐってのができないので、人力でかき混ぜ続けなければならないという、なんとも重労働だった。もちろん、最年少の俺はこのかき混ぜに強制参加です。

 一定の速度で流れ出るコンクリートをきれいにならす作業員もいて、そちらも大変そうだった。それでも一日で3万平方メートルの面積にコンクリートを敷き詰めることができたのは蒸気自動車のおかげだろう。これをあと4回やることを考えて、気が遠くなったけどね。


 完成した実験場の出来栄(できば)えは素晴らしく、飛行機の離着陸すらできそうだったよ。飛行機なんて存在しないけど。

 そして今日は外燃機関研究室の全員と土木・建築研究室の全員がこの郊外実験場に集合している。

 蒸気自動車の排土板や牽引していたもの(ローラーや貨車等)は取り外され、さらに一定以上の速度が出ないようにしていたリミッターについても解除されている。今日は蒸気自動車の最高速度を計測する日なのだ。めっちゃ楽しみ!

「運転は誰がやる?」

「はいはいはい!私がやりたいです!」

 ドライバーに立候補したのはマーガレットさんだ。蒸気レシプロエンジン開発の功労者だね。

「この路面の中ほど、ここから2100メートル付近に赤い旗を立てていますから、そこを越えたらすぐにブレーキをかけてくださいね」

 俺がこの注意を述べた理由は、予想最高速度とブレーキ性能から考えてそこからブレーキをかけないとオーバーランする可能性があるからだ。まぁ、コンクリート舗装の部分を越えても土がむき出しの地面に変わるだけで、山や(がけ)があるわけじゃないけどね。


 速度計測なので1000メートルと1200メートル地点に時間計測員を置いて、まず1000メートルラインを越えた瞬間に担当者が旗を上げる。それを見た1200メートル地点の担当者が時間計測を開始、自分の目の前の1200メートルラインを越えた瞬間に計測を終了。それまでの時間が200メートル走のタイムとなる。

 これで時速が算出できるってわけだ。

 ちなみに、100km/hまで加速する時間が30秒だと仮定すれば、そこまでの距離は約420メートル。そこから1分間最高速度で走り続けるとスタート地点から2100メートルになる。それからブレーキをかければ余裕で3000メートル以内には停車できるだろう。…って計算で、3000メートルの実験場を整備したわけだね。


「準備は良いですか?」

「ええ、いけるわ」

「ではスタートしてください」

 ゆっくりと進み始めた蒸気自動車は徐々にその速度を上げていく。約50秒後に1000メートルラインの旗が上がった。あとは遠すぎて状況が全く分からない。

 しばらくしてUターンして戻ってきた蒸気自動車には、タイム計測員も一緒に乗っていた。途中で拾ったんだな。

「タイムは何秒だった?」

 ゴードン室長の問いにタイム計測員の人が答えた。

「はい、7秒でした」

「200メートルを7秒ってことは、時速に換算すると、ええっと…103km/hってことだな」

 暗算(はや)っ!小数点以下の時間計測をしていないし、誤差もあるだろうからあくまでも目安だけど、約100km/hは達成できたってことだな。

「すごいスピードでしたよー。まさに、快っ感って感じでした。少しだけ怖かったですけどね」

「おい、マーガレット。まさか、ちびってないだろうな」

「馬っ鹿じゃないの?セクハラで訴えますよ。全くもう」

 ロバート室長の軽口にマーガレットさんが反論した。この世界にもセクハラってあるんだ…。怖いな、気を付けておこう。

 まぁ、そんなことはどうでも良い。実験は大成功で終わったのだった。あ、もちろん、このあと追加で2回ほど計測し直したけどね。誤差もあるだろうし。


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