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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第6章 大陸暦1152年
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076 デート①

 いつの間にか16歳になっていた俺だが、この国には(いや、この世界には…かな?)誕生日を祝ったりプレゼントを貰ったりといった風習は無い(10歳の誕生日だけは別格だけど)。

 なので、気が付いたら誕生日を過ぎていたって感じだな。

 なお、仕事に追われて毎日大変だけど、休日にはしっかりと休めている。それもこれもアリスちゃんのおかげだ。料理・洗濯・掃除などの家事を俺自身がやるべきなのに、アリスちゃんが全てやってくれているんだからね。まじで感謝してます。家政婦としての報酬を出そうとしても、(がん)として受け取らないし…。

 というわけで、日頃の感謝の印として休日にアリスちゃんとデートしようと思う。二人で街に出かけて、アリスちゃんにアクセサリでも買ってあげよう。お昼もちょっと高級なレストランで食べたりしてね。

 休日の前日の夜、そう提案すると二つ返事で了承してくれた。


 そしてデート当日。友人達がやってくる前に出かけようと、朝早くから準備している。まぁ、来るかどうかは分からないけど、だいたい誰か来ているしな。

「マーク様、早く出かけましょう。早く早く!」

 アリスちゃんに()かされて二人でアパートを出た。するとそこには早朝にもかかわらず、アリアが立っていたよ。

「おっと、アリア、おはよう。俺ん()に来たのかい?ちょうど今から出かけるところだったんだが」

「マーク、アリス、おはよう。あれぇ?お邪魔しちゃったかなぁ?もしかして二人でお出かけですかぁ?」

 その語尾を伸ばす(しゃべ)り方やめろや。

「アリア、おはよう。今からマーク様とデートなので、今日はお相手できないよ。ごめんね」

「えええ?私もついていきたいなぁ。チラッ」

 チラ見すんなや。てか、口で言ってるし。

「あー、今日はアリスちゃんへのお礼だから、アリア、遠慮してくれ」

「ええ、行きたい行きたい。アリス、あんたとあたいの仲じゃん。ね?良いよね?先っちょだけ」

 何の先っちょだよ。エロいよ。

「ダメなものはダメだ。今度アリアともデートしてやるから、それで勘弁してくれ」

「マーク様、可哀想だからアリアも一緒で良いですよ。三人でデートしましょう」

 三人で行動するのをデートと言うのだろうか?まぁ、アリスちゃんが良いなら、俺も良いんだけど。てか、アリアのやつ、相変わらず押しが強い、強すぎるよ。

 結局、三人で商店巡りをすることになったんだけど、アリスちゃんに何か買ってあげようとすると、ほぼ同額のものをアリアにも買うはめになってしまった。うん、メンタルも強いようです。


「お昼はちょっと奮発してここで食べよう。俺が(おご)るから心配いらないよ」

 かなりの高級レストランの前で俺が二人に提案すると、アリスちゃんとアリアの反応は両極端だった。

「マーク様、こんな高級なお店ではなく、もっと安い所で良いですよ」

「さっすがマークだね。太っ腹ぁ。よっ!お大尽(だいじん)

 どちらがどちらの発言なのかは言わなくても分かるだろう。

「俺もこういう店には入ったことないから、一度は経験しておきたいんだよ。良いよね?」

「うん、良いよ」

「いや、アリア、君には聞いてない。って、君はすでに同意してると分かっているから、聞く必要が無いって意味ね」

「私も良いですよ。マーク様のためならば、どのような場所にもご一緒致します」

 重い、重いよ、アリスちゃん。なぜこんなに(した)われているのか、俺にはさっぱり理由が分からないんだけど。


 高級だけどドレスコードなんかが無い店で良かった。俺達は見るからにザ・平民って服装だからね。

 俺は案内するウェイトレスにチップを握らせて、良い席に案内してくれるように頼んだ。平民の若造(わかぞう)ってことでなめられて、トイレの近くの席なんかに案内されると嫌だからね。

「こちらのお席へどうぞ」

 案内されたのは通りに面した窓際の席で、なかなか良い席だった。

「皆、ランチのコースで良いかな?」

「はい」

「あたいも分からないからマークにお任せするよ」

「じゃあ、ランチのコースを三つ。飲み物はお酒じゃなくて、ジュースにしてください」

 ウェイトレスに注文したランチのコースは一人前が5千エンだったので、かなりの高級レストランだよ。まぁ、ディナーコースは1万エンってメニューに書いてあったんだけど。

 あと、俺達三人は成人しているので酒を飲んでも構わないんだけど、お昼だから酒はやめておこう。


 料理はさすがに美味(うま)かった。高級な素材を腕の良いシェフが調理したのだろう。値段だけのことはあったよ。

 余談だけど、テーブルマナーについては俺は元貴族なので問題ない。アリスちゃんもメイドとして給仕の経験があるから当然知っている。未経験なのがアリアで、俺がしっかりとレクチャーしてあげたよ。

「おいしかったねぇ。マナーを考えなくて良かったら、もっとおいしかったと思うんだけどな」

「アリア、将来恋人とこういう店に来るかもしれないから、テーブルマナーを覚えておいて損は無いよ」

「はーい、またマークが連れて来てくれるのを楽しみに待ってるよ」

 いや、ほんとメンタル(はがね)かよ。

「マーク様、おいしかったです。ありがとうございました。今日のことは一生忘れません」

 アリスちゃんは相変わらずだけど、喜んでくれたようで良かった。


 このあと、三人で俺のアパートへ向かったんだけど(てか、俺とアリスちゃんは帰宅ってことだけど)、アパートの前に馬車が停まっていて、馬車の横にはエリカが腕組みして仁王立ちしていた。

 回れ右して逃げ出したくなったけど、いや、やましいことはしていないはずだ。大丈夫、俺は無実だ。そう、心の中で繰り返す俺だった。


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