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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第6章 大陸暦1152年
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074 蒸気自動車②

 急ピッチで開発された排土板とローラーだけど、蒸気自動車の前に排土板、後ろに牽引(けんいん)式でローラーを付けるように改造された。

 それを国宝レベルのマジックバッグに格納していくわけだが、セキュリティ設定でゴードン室長に一時的に利用権限を与えてもらったりするのがかなり大変だったらしい。なにしろ国宝級だから…。

 で、王都郊外の実験場予定地なんだけど、土木工事の請負業者が手配した土木作業員によってある程度は整地済みになっていた。あとは仕上げだけだ。

 研究室の留守番を除き、ゴードン室長以下10名が現地に来ているよ。もちろん、俺も。

 実験場は幅10メートル、全長3000メートルの直線路として整備される予定だ。これは長いようでいて、それほどでもない。時速100kmまで加速する区間、最高速度を維持する区間、減速区間と考えると、最高速度を維持できるのはせいぜい1分間くらいじゃないかな?

 その3000メートルを時速5kmくらいのスピードで整地していく。一往復70分くらいかな?それを5回ほど往復させるので、6時間くらいかかることになる。

 土木作業員と俺達研究員の見守る中、運転者は交代しながらになるけど、あっという間に地面が踏み固められていく。土木作業員が目を丸くして驚いているよ。本来なら何日間もかけて行う作業が一日で完了しそうなんだから、驚くのも当然だ。いや、実際に道路工事の革命になるかもしれない。


 朝から始めた作業は夕方には終了した。

「良い感じですね。かなりしっかりと踏み固められていますが、本当はコンクリート舗装にしたいところですね」

 俺の発言にゴードン室長が反応した。

「コン…何だって?まだ何かあるのか?」

「コンクリートです。えっと石灰岩ってありますよね。あれを細かく砕いて粉状にします。そこに砂と水を加えてよく練るとドロドロな状態になるんですが、一日くらい()てばカチカチに固まるんですよ。それをコンクリートって言います」

 古代ローマにも存在した技術だから、この世界にも当然存在すると思っていたんだけど無いのかな?

「知らねえぞ、そんなもの。外国の技術なのか?」

「えっと、そうですね。遠い遠い異国の技術で、なんかの本で読んだんですよ」

 異国というより異世界だけどね。

「お前と付き合ってると、新しい技術が次々に出てくるからお(なか)いっぱいで消化しきれねぇよ」

 うんざりとした顔で愚痴られたけど、仕方ないじゃん。俺の上司であるという不運を呪ってくれたまえ。

「石灰と砂と水の配合比率までは覚えてないので、試行錯誤が必要ですが…」

「いや、もう外燃機関研究室の仕事じゃねぇよ。とりあえず、上に相談してみるわ」


 んで、結局この日、蒸気自動車の最高速度計測実験は行わず、実験はコンクリート舗装が出来上がり次第ってことになったのだった。まぁ、そのほうが正確に実験できるから良いよね。


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