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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第1章 大陸暦1146年
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007 婚約者

 俺はエリカの件を家族全員に相談してみることにした。

 父上も母上も二人の兄もエリカのことを気の毒がった。ただし、気の毒に思ったのは【恩恵(ギフト)】そのものに対してではなく、アトキンス家の環境に対してだ。うちの家族全員【死霊魔法】に対する偏見は無いみたいで一安心だよ。

 ただ、ドリス姉さんだけが気味悪そうに言った。

「お化けを操る能力よね。ちょっと怖いんだけど」

 これが一般の人の反応だよね。ここで俺が反論した。

「姉さん、考えてもみてよ。怖いお化けを支配下におけるエリカがいれば、お化けなんて怖くなくなるんだよ」

「え?ああ、そうか。エリカちゃんと一緒ならお化けは手下ってことになるのか。それはぜひエリカちゃんと仲良くならなくちゃ」

 くっ、ちょろいんだけど、姉さん。


 この家族会議のあと、父上と母上がアトキンス家と話し合った結果、エリカとお付きのメイドさん一名(俺をエリカの部屋まで案内してくれた人)がうちの屋敷に住むことになった。

 さすがに養女としてというのは子爵家の世間体(せけんてい)的に受け入れられなかった(特定の【恩恵(ギフト)】に対する差別は問題になるからね)ので、俺の婚約者として将来の(とつ)ぎ先での行儀見習いという名目になったよ。

 エリカ本人が婚約者という立場に納得しているのかは分からないけど、まぁ単なる建前だからね。アトキンス家の屋敷で迫害されて暮らすより、うちの屋敷のほうが100倍マシだろう。

 この話がまとまったあと、二人きりになったときにエリカに言われた。

「あ、あんたの婚約者ってことになったけど勘違いしないでよね。あんたが私の白馬の王子様ってわけじゃないんだからね」

「ああ、分かってるさ。君を助けたいと思ったのはうちの家族の総意だからね。もちろん俺もだけど…。それに俺は成人したらこの家を出なきゃならないし、それまでの仮の婚約だよ」

「ふ、ふん。分かってれば良いのよ。…でも、あんたが部屋に来てくれたときって............」

 エリカの後半の言葉が小声でささやいた感じだったため、全然聞き取れなかった。てか、相変わらずツンデレお嬢様だな。

「『良いのよ』のあとが聞こえなかったんだけど、もう一度言ってくれないかな」

「もう!この話はここで終わり。良いわね!」

 右手の手の平で思いっきり背中を叩かれたよ。暴力系ツンデレお嬢様か?


 そんなわけで同棲(どうせい)することになったのだが、屋敷が同じってだけであって別にロマンスが芽生(めば)えるわけではない。あくまでも仮の婚約だからね。

 まぁ、それはともかく、エリカが魔法学校に入学する前に、ある程度は魔法の練習をしておきたい。

 【死霊魔法】に関する魔導書は別途購入するとして、とりあえず魔力の移動に関して、母上やナッシュ兄さん、あとドリス姉さんから習うことになったらしい。

 特にドリス姉さんが張り切っていた。魔法学校でも後輩ってことになるしね。

「あんたも一緒に受講しなさいよね」

 そう、なぜかエリカの発案で俺も一緒に魔力移動を練習しているのだ。いや、俺は魔法系の【恩恵(ギフト)】が無いから意味ないんですけど…。

「姉さん、どうもよく分からないんだけど、意思の力で魔力を動かせるの?てか、それ以前に魔力を感じ取れないんだけど」

「私もマークと同じ。ドリスお姉様、何かコツがあるのでしょうか?」

 俺やエリカの泣き言にドリス姉さんが答えた。

「そうねぇ、一か月で魔力を感じ取れるようになれば、優秀なほうじゃないかしら」

 はぁー?まじかよ。魔法使いさんは大変なんだな(他人事(ひとごと))。いや、生産系の【恩恵(ギフト)】なら勝手に魔力が減るだけだし。


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