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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第5章 大陸暦1151年
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067 自転車②

 さすがに変速機(ディレーラー)の製作は一筋縄ではいかず、作り直しては調整を行うという作業を繰り返すことになった。

 それでもさすがはプロフェッショナルというべきか、二週間ほどで変速機(ディレーラー)付き自転車の初号機が完成したよ。ちなみに、開発期間が短いのは試作零号機を改造したからだ。

 試作零号機のときと同じく、まずは俺が乗車してみた。うん、変速も問題ないね。1速、2速、3速と名付けた3段階の変速比も良い感じじゃないかな?王宮の敷地内には坂道が無いからよく分からないけど。

「へぇー実際に走ってみると、変速機ってのはかなり楽だな。試作零号機の変速比がこいつの2速にあたるわけだが、速度が上がってきてから行う3速への切り替えが気持ち良いぜ」

 極めて説明的なセリフを発したのは、俺の次に乗ったロバートさんだ。

 3速への切り替えで、おそらく30km/hくらいは出ているんじゃないかな?距離と時間から正確な時速は算出できるけど、テスト項目の中に一般的な成人男性が乗車した際の最高速度計測も含めておこう。


 このあと、テスト項目を並べたチェックリストを片手に、様々なテストを行った。

 直径10インチ(25.4cm)の後輪の円周は約80cm。ペダル回転数(ケイデンス)が毎分60回転(1秒間に1回転)から毎分120回転(1秒間に2回転)ならば、変速比ごとの速度範囲は次のようになる(キロメートル/時をkm/hと表記)。要するに理論値だね。

・1速(1対2)…6km/h~12km/h

・2速(1対3)…9km/h~17km/h

・3速(1対5)…14km/h~29km/h


 実際に100mを何秒で走れるかを計測してみた結果、(おおむ)ねこの範囲内だったけど、さすがに120rpmのペダル回転数(ケイデンス)を維持するのは難しいようだ。

 なので、おおよその目安としては、1速で9km/h、2速で13km/h、3速で22km/hってところかな。

 100mを15秒で走れる人の速度が24km/hってことを考えると遅いように思えるかもしれないが、楽にこの程度の速度を継続的に出せるってのが重要なのだ。それに人の歩く速度は約4km/hだから、それに比べればめちゃくちゃ速いからね。


 この初号機の所有権は王宮にあるけど、ゴードン室長の厚意で誰か一人に貸与することが決まった(耐久テストも兼ねている)。あれ?仕事で資材運びなんかに使うって名目じゃなかったっけ?まぁ、良いけどさ。

 外燃機関研究室にはゴードン室長以下15名(俺も含めて)が所属しているんだけど、全員でくじ引きを行うことになったよ。え?全員?いやいや、自転車開発チームの4人だけでくじ引きするべきだろ。とは言えないけど…。

 そして、当選したのはご都合主義的に俺…ではなく、若くて可愛い女性の研究員だった。

「ふっふっふ、自転車は私の物ってことですね。もう一生返しませんよ」

 …などと不穏な発言をしている当選者の女性は邪悪な笑みを浮かべていた。いや、返せよ。


 ちなみに、初号機の設計図は民間に広く公開されることになり、誰でも自由に製造できるようになった。なにしろ特許制度が無いからね。

 もっとも、これによって俺への車輪生成依頼が増えるはずなので、俺としては痛し(かゆ)しかな。てか、俺の自転車は自分で買えってことかよ。まぁ、買うけどね。

 いや、待てよ。鍛冶屋のおじさんに3輪ではなく、2輪で特注しようかな。俺としては2輪車のほうが乗りやすいし…。


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