066 自転車①
自転車開発チームは34歳のロバートさん、31歳のマイケルさん、26歳のエドワードさん、それに14歳の俺で、俺以外の全員が【鍛冶】の【恩恵】を持っていた。
設計図を書いたり実際の工作を行うのは俺以外の3人で、俺はゴムベルトやベルト押さえに使うバネなどを手配する。あと、全体の指揮というかコーディネイトだね(馬車を作ったときと似ている)。
もちろん、<自転車のタイヤ>も生成するよ。前輪は20インチ、後輪は10インチの車軸付き2輪だ。あ、すでに空気入れはかなり普及しているので、その点は安心だ。リヤカー製造の鍛冶屋のおじさんには感謝だね。
サドルやハンドルの持ち手の部分には革を用いるので、そのあたりの手配も俺の役割だね。
ブレーキパッドはゴム製なので、これも忘れずに手配する。左側のブレーキレバーが後輪ブレーキ、右側のブレーキレバーが前輪ブレーキなのも前世の自転車と同じだ(俺が使いやすいように…)。
こうして一か月後に試作品が完成したので、最初に俺が乗ってみた。ペダルをこぐと軽快に走り出し、時速で10~20km/hくらいのスピードが出ているよ。左右のブレーキも問題なく効いているし、ハンドル操作による旋回もスムーズだ。
王宮の敷地内を一回りしてきた俺はスタート地点に戻ると言った。
「すばらしい出来栄えです。今のところ何の問題も見られません」
最年長でチームリーダーのロバートさんが言った。
「そうかそうか。よし、それじゃ次は俺の番だな」
ロバートさんの乗る自転車が見えなくなり、しばらくしてから戻ってきた。そのあと、年齢順にマイケルさんやエドワードさんも乗ってみて全員が感動していた。
「面白ぇな、これ。そうだ!チーム全員分の自転車を作って競争してみようぜ」
…って、競輪かよ。
「試作零号機はこれで良いとして、次の初号機は変速機付きにしましょうよ」
「その変速機って何だ?」
「ペダルの回転と車輪の回転の比率を変える仕組みです。上り坂では1対2くらいにして、下り坂では1対5くらいにするんです」
この試作零号機の比率はペダル1回転で車輪が3回転、つまり1対3になっている。
試作零号機にはすでにフリーホイール機構(こぐのを止めても車輪は回り続ける機構)は付けているけど、これに変速機を付ければ製品として販売できるレベルになるだろう。
「ほう、なるほど。それは面白そうだ。後輪に付けているプーリーの大きさを3種類にして、ベルトをどのプーリーに付けるのかを切り替えられるようにすれば良いんだな」
さすがプロだな。わずかな情報からすぐに変速機の構造を思いついたみたい。
なお、この試作零号機のテスト走行を見ていた他の王宮職員から、このあとめちゃくちゃ問い合わせが入ることになったのは余談である。




