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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第1章 大陸暦1146年
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006 幼馴染

 すぐ近所に子爵家の屋敷があって、俺と同い年の女の子、いわゆる幼馴染が住んでいる。その子の誕生日が9月初旬で、この前、教会の【恩恵(ギフト)】の()に行ってきたらしい。

 名前はエリカ・アトキンス。アトキンス子爵家の四女だ。

 俺は毎日のようにうちの屋敷に遊びに来るその子が、ここのところ顔を見せないのが気になっていた。何かあったのかな?

 仕方なくこちらから子爵家の屋敷を訪問してみた。

 いつも通り屋敷の裏口の使用人が使うドア(勝手口)から厨房にいる料理人さんに伝言を頼んだ。そこからメイドさん経由でエリカに伝わるはずだ。

 しばらく待っていると気の毒そうな顔をしたアトキンス家のメイドさんがやってきて言った。

「マーク様、エリカお嬢様はお会いしたくないそうです。申し訳ありませんがお引き取りください」

「え?どこか具合でも悪いのでしょうか?だったらお見舞いでも…」

「いえ、身体は健康なんですが、心が…はっ、すみません。今のは聞かなかったことにしてくださいませ」

 え?心?…(ふさ)ぎこんでいるってことかな?

 うむ、俺自身は嫌われるようなことをした覚えはない。となると、やはり受け取った【恩恵(ギフト)】に何か問題でもあったのか?

 俺が力になれるかどうかは分からないし、俺に話しても意味が無いかもしれない。でも前世の知識で何かアドバイスできるかもしれないよね。何とか会えるようにしてもらえないかな?


「お願いします。俺をエリカの部屋の前まで連れていってもらえませんか?何か力になれるかもしれません」

 俺はメイドさんに頭を下げた。たしかこのメイドさんは平民だったと思うけど、頭を下げるくらい何でもない。

「あ、頭をお上げください。…分かりました。私の責任においてお通しします。最近は食事も(ろく)にとらず、(ふさ)ぎこんでおられますので、もう見ていられません」

 ありがとう。もしも馘首(くび)になったら、うちで雇ってあげられるよう両親を説得するよ。


 俺はエリカの部屋の前まで来ると、ドア越しに静かに語り掛けた。

「エリカ、マークだよ。部屋に入れて欲しいんだけど良いかな?」

「・・・」

 返事が無いな。部屋にいることは分かっているんだが…。

「エリカ…」

「うるさい!会いたくないの!」

 金切り声で叫ばれてしまった。でも、これで諦めるわけにはいかないね。

「ねぇ何があったのか、聞かせてくれないか?俺達友達だろ?」

「あんただけには話せない。聞けば私のことを嫌いになるもの」

「そんなことがあるものか。何があっても嫌いになることはないと女神様に誓うよ。だから部屋に入れて欲しい」

「・・・」

 しばらく待っていると鍵の開く音がして、少しずつドアが開き始めた。

 顔をのぞかせたエリカは少しやつれた感じだけど、思ったよりも元気そうだ。なお、容姿は肩までの長さの茶色い髪に黒い瞳の可愛らしい女の子だよ。幼馴染が可愛いって人生勝ち組かよ。


「久しぶりだね。元気そうで安心したよ」

 にっこりと微笑んで話しかけた俺に少し頬を染めているエリカ。イケメンパワーでどやぁって感じだ。

「どうぞ入って」

 言葉少なに部屋の中に招き入れてくれた。

「まず最初に言っておくけど、俺を屋敷に入れてくれたメイドさんを責めないで欲しい」

「うん、もちろんだよ。彼女には感謝してる」

 良かった。それじゃ本題に入るとしますか。

「エリカの【恩恵(ギフト)】に何か問題があったのかい?できれば俺に教えてくれないか?」

 回りくどい聞き方は嫌いなので、もう単刀直入に聞くよ。

「…うん、これを聞くと、きっとマークは私を避けるようになるよ」

「そんなことはしない。断言するよ。いや誓うよ。命をかけても良い」

「…分かった。私が女神様から頂いた【恩恵(ギフト)】は【死霊魔法】だったの」

「は?なーんだ、かっこ良いじゃん。そうかネクロマンサーか、良いなー。俺の【車輪生成】と交換してもらいたいくらいだ」

「へ?気持ち悪くないの?お父様もお母様もお兄様もお姉様もメイド達もこの屋敷にいるほとんどの人が私のことを気味悪がっているのよ?」

「女神様が役に立たない【恩恵(ギフト)】を与えることは無いよ。ん?というか、俺の【恩恵(ギフト)】と相性が良いかもしれないな」

 そう、馬車を作るのは簡単なんだけど、それだけじゃ面白くない。エリカの【死霊魔法】で死霊を使役して、馬無しでも動く車を作れるんじゃないか?

 死霊にそういうポルターガイスト系の能力があるのか分からないけど。


「あんたの【恩恵(ギフト)】と相性が良い?それ本当?」

「本当だよ。まぁ君がどこまで死霊魔法を極められるかにもよるけどね」

「そ、そう。ふ、ふーん、まぁ頑張ってみようかしら。決してあんたのためじゃないんだからね」

 …って、ツンデレかよ。

 まぁ少しは元気が出てきたようで良かったよ。でもエリカにとってこの屋敷はあまり快適な環境じゃないかもしれないな。味方のメイドさん(俺を案内してくれた人)もいるみたいだけど、おそらく敵のほうが多いと思う。【死霊魔法】に対する偏見はそれだけ根強いものがあるのだ。

 うーん、なんとかしてあげたいな。


 ヒロイン候補「エリカ」の登場です。

 とても分かりやすいツンデレです。


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