059 卒業制作⑤
結局、まずは販売価格を決めなければ話は始まらないってことになった。
材料費は俺のほうで一括して把握しているので、あとは手間賃(人件費)をどうするかが問題だね。
材料費と人件費を合わせたものを製造原価として、そこに2割くらいの利益を乗っければ良いよね。
参考までに4頭立ての10人乗り馬車がどうだったかを記すと以下の通り。
・鍛冶:200万エン
・木工:400万エン
・裁縫:150万エン(ソファと革製品合わせて)
・馬:100万エン(4頭)
・ガラス:50万エン
・車輪:100万エン
の1000万エンが原価(というか業者への支払い)となる。
ここから2頭立ての5人乗り馬車を推測すると、全て半分として
・鍛冶:100万エン
・木工:200万エン
・裁縫:75万エン(ソファと革製品合わせて)
・馬:50万エン(2頭)
・ガラス:25万エン
・車輪:50万エン
の500万エンだ。ちと乱暴な計算かな?
これに2割の利益をのせれば販売価格は600万エンになる。うん、いいところじゃないかな?前世の感覚からすると、めちゃ高級車ってことになるけどね。
で、材料費は
・鉄:20万エン
・木材:40万エン
・布及び革:10万エン
・馬:50万エン
の120万エンだったので、もしも600万エンで売れた場合の利益配分は次のようになるね。
(600万エン-120万エン)÷6=80万エン
材料費を俺が出しているので、俺だけ200万エンもらって、あとは各人80万エンずつってことになる。
本当は各人の労力が異なるので、個別に算出したほうが良いのかもしれないけど面倒くさいんだよ。
「こんなものでどうかな?」
俺が全員に販売価格および利益配分案を提示してみると、概ね賛成だった。
「私は貰い過ぎです。こんなに貰えるほど働いていませんので、私の分は30万エンにしてください」
アリスちゃんが言ったので、俺も減額を申し出た。
「だったら俺も貰い過ぎだよ。俺の利益も30万エンにして二人分の差額である100万エンを四人で分けてもらおう」
もちろん材料費は貰うので、俺が150万エン、アリスちゃんが30万エン、エリザベス様とビルとアンネット嬢とアリアが各105万エンだね。うん、いい感じじゃないかな?
三か月分の人件費(設計まで含めると約半年分)としては妥当なところだろう。
「私は最初のマーク案通り、全員均等に配分するべきだと思うのだけど」
エリザベス様の言葉に俺が反論した。
「いや、やはり作業量というか労力が全然異なるのに同額ってのは悪平等になるよ。俺とアリスちゃんの心の平穏のためにもこの配分でお願いしたい」
「うー、だったら仕方ないわね。それで良いわ」
他の三人も異存ないようだ。
さて、あとはこの馬車を誰が買うかだな。




