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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第4章 大陸暦1150年
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054 卒業制作③

 そろそろ年末になってきて、卒業制作の期限が近付いてきた。来年の3月には技術学校を卒業するからね。

 俺のグループのメンバーは夏休み明けからそれぞれが設計図を書き始め、もうそろそろ製作に入る頃合いだ。ソフィアちゃんの件でバタバタしていたけど、一応、進捗(しんちょく)管理はしているのだよ(プロジェクトリーダーなので)。

 エリザベス様の車台(シャシ)とアンネット嬢とアリアの馬車本体が中核なので、そこが予定通りに製作できていればなんとか間に合うだろう。


 で、今日は休日でジョンソン家を一人で訪問している。エリザベス様に招かれたのだ。

 型通りの挨拶の後、すぐに用件に入るエリザベス様。

「マーク、車台(シャシ)の設計図を書いたので見てちょうだい。何か意見があれば言って欲しいの」

 設計図の書き方を習ったばかりにしてはうまく書けているように思える。俺も専門家じゃないので、うまく批評できないけど。

「サスペンションは板バネで車軸懸架(けんか)にしたんだね」

 従来通りの馬車の仕様と同じで、特に冒険はしなかったようだ。まぁアリア経由で従来の馬車の設計図を見せてもらったみたいだし、板バネを使った馬車もこの家にあるからすぐに現物のサスペンションを確認できるからね。

「やっぱり初めての大きなものの製作では失敗したくないのよ。それにできるだけ自分の力だけで作ってみたいし」

 コイルスプリングを【バネ生成】の【恩恵(ギフト)】を持つ人(エイミーさん)に生成してもらえば?とアドバイスしていたんだけど、やはり板バネを自力で製作したいようだ。制振装置(オイルダンパー)も作れないし、ここは板バネのほうが良いかもしれないね。コイルスプリングは制振装置(オイルダンパー)と組み合わせないと、揺れが続いて乗客が酔うおそれもあるし。

「うん、分かった。それじゃこれで進めていこう。力が必要な作業など手伝いが必要なら遠慮なく言ってくれ」

 実際の製作は技術学校の中の鍛冶工房の一角を借りて行うので、ジョンソン家の屋敷での実作業は無い。今日は設計図を確認しに来ただけなのだ。


「では、こちらでお茶にしましょう」

 エリザベス様に連れられて行ったのは、よく日の当たるガラス張りのテラスみたいなところだった。冬の柔らかな日差しがポカポカと暖かい。温室みたいな感じだね。これだけの大きなガラスにはかなりのお金がかかっていると思うけど、さすがは伯爵家ってところだな。

「どう?ここのガラスは全てアリスに生成してもらったものなのよ。素晴らしいでしょう?」

 え?まじで?驚いたな。アリスちゃんは何も言ってなかったし。

「ふふん、マークを驚かそうと思ってアリスには口止めしておいたのよ。驚いてくれたかしら?」

「ああ、驚いた。素晴らしいの一言に尽きるよ。ほかの貴族達にも(うらや)まれるんじゃないか?」

「そうなの。お父様がお客様を招いては自慢しているわ。ふふふ」

 サプライズ成功でエリザベス様も嬉しそうだ。可愛いな。


「君の婚約者は招いたのかい?」

 何の気なしに質問したのだが、どうやらこれは地雷だったようだ。

「いえ、招待状を出しても色々な理由を付けて断られているわね。所詮(しょせん)、親同士で決めた婚約なのよ。あちらはあちらで愛する人がいるらしいわ」

「君はそれで良いのかい?」

 そいつは男の風上にも置けない奴だな。俺は義憤を感じていたのだが、エリザベス様は諦めの表情で言った。

「次の王宮舞踏会では参加者全員の目の前で婚約破棄を言い渡されるかもしれないわね。まぁ相手は侯爵家の嫡男(ちゃくなん)だからうちも文句は言えないはずよ。でも別に私も相手のことを好きじゃないし、婚約破棄は望むところだわ」

 友人であるエリザベス様を悪役令嬢みたいな役回りにさせたくない。とは言っても俺には何の力も無いけどな。


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