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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第4章 大陸暦1150年
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052 マジックバッグ生成④

 俺は女神との約束通り、月に1回は教会に通っている。毎回ちょっとした雑談をするくらいで、時間も5分くらいだ。実はこの女神、寂しがり屋なんじゃないの?いつも嬉しそうに世間話に興じているんだけど。

 転生時に与えられた使命(車輪の普及)はすでに果たしているから、俺のほうも気楽なものだ。『使徒』って言っても、世界の危機を救うわけじゃないし…。

『ソフィア・アーレイバークの魔力量は順調に増えていますよ。そろそろ最も小さいサイズのマジックバッグの生成に成功するかもしれませんね』

 早すぎると思うかもしれないが、なんと一か月で魔力感知と魔力移動をマスターしてしまったソフィアちゃんなのだった。天才か?はたまたエリカ先生の教え方が良かったのか。

 すでに毎日魔力枯渇状態にしているので、順調に魔力量が増加しているらしい。

 でもエリカが家庭教師になってからわずか三か月なんだけどな。俺の見込みでは最速で半年、最悪の場合は1年はかかると思っていたよ。

『一週間後にアーレイバーク家を訪問してみなさい。このペースならば、おそらくそのくらいの時期でしょう』

 へぇー、楽しみだなあ。来週の休日にでも行ってみよう。

 こうして女神との雑談を終えた俺は、教会への多額の寄付を行ってから家路についたのだった。あとで知ったんだけど、長い祈りの時間(と言っても、5分から10分くらいだけど)と個人としては多額の寄付金のため、敬虔(けいけん)な信者として俺は教会の中で有名人になりつつあるらしい。まぁ宗教団体ともめるのは困るので、良いんじゃないかな。敬虔な信者ではないけど…。


 そしてこの一週間後、俺はエリカとともにアーレイバーク家を訪問した。

「マークお兄ちゃんだ、嬉しい!エリカ先生、こんにちは」

 ソフィアちゃんとは夏休みの旅行以来だから、割と久しぶりだな。もちろんジョセフィンさんやセシリアさんとも久しぶりに会うよ。

「マーク様、お久しぶりです。今日はどうされたのですか?」

 ジョセフィンさんの問い掛けに、俺は正直に答えた。

「うん、そろそろもう一度【マジックバッグ生成】を試してみようかと思ってね」

 これを聞いたソフィアちゃんが少し暗い顔になった。失敗続きだったのを思い出したのだろう。

「ソフィアちゃん、良いかい?いくつか注意事項を伝えておくね」

 俺は魔力を一度に大量に失うことで起こる倦怠感(けんたいかん)下手(へた)したら気絶の恐れがあること、最も小さいサイズで試してみることなどを伝えた。

「じゃあ、やってみようか」

 ソフィアちゃんがメニューを開き、<マジックバッグ生成>から外観パラメータの値を【高さ】100mm、【幅】200mm、【奥行】20mmにして、内部パラメータについては【高さ】【幅】【奥行】の値を全て10倍に設定したようだ。

「お兄ちゃん、【生成実行】が有効になってるよ!」

「そうか、良かった。それじゃ、一気に魔力が失われるから気を付けて生成してみよう」

「うん、分かった」

 ソフィアちゃんの身体がふらっと横に倒れそうになったけど、なんとか踏みとどまった。そして、目の前のテーブルの上には小型のバッグが出現していた。

「で、できた。お兄ちゃん、できたよ、私」

 目には涙が一杯に溜まっていて、今にもあふれそうになっているソフィアちゃん。

 ジョセフィンさんもセシリアさんもエリカも目を見開いてテーブル上のバッグを見つめている。

「おめでとう、ソフィアちゃん。ついに成功したね」

 俺の言葉にソフィアちゃんはついに泣き出してしまった。ちなみに二人っきりだったら肩を抱いて慰めてあげるんだけど、エリカさんの見ている前でそれをやると俺の命が危ない。

 代わりに隣にいたエリカがソフィアちゃんの背中をさすってあげている。


 セシリアさんが俺に言った。

「マーク様、本当に『急がば回れ』だったのですね。以前の私の言動を謝罪するとともに、最大級の感謝をお伝え申し上げます」

「いえ、俺の功績ではなく、エリカの功績ですよ。いや、一番頑張ったのはソフィアちゃんですね。それよりも、本当に内部が1m×2m×20cmの大きさなのか検証してみないと」

「だったらマークお兄ちゃんが使ってみて。一番最初にお兄ちゃんに使ってほしいの」

 ソフィアちゃんの言葉に俺は全員を見回してみると、反対意見は出なかった。でも使い方が分からないんだよな。

「どうやって使うんだろう?エリザベス様を連れてくれば良かったな」

 ここにいる全員、マジックバッグの使用経験は無いみたいだ。

 仕方なく俺はテーブル上のマジックバッグを手に取って、(ふた)を開けてから腰に()いている愛用の木刀を入れようとしてみた。すると一瞬で木刀が消滅した。いや、まだ入れてないんだけど。これって入れようと思っただけで入るのか?

 ちなみに木刀の長さは1m50cmくらいなので内部空間的には余裕で入るはずだ。

 次にマジックバッグに右手をかざしてみると、頭の中に『木刀』という文字が浮かんだ。一つしか入れてないから文字は一つだけなんだけど、複数の物を入れている場合は一覧で出るらしい(以前、エリザベス様に教えてもらった)。

 その『木刀』を選択してみると右手の中に木刀が出現したよ。すっげぇー、感動した。


 次にジョセフィンさんが自分の剣を出し入れしてみた。なお、使い方は俺が教えてあげた。まぁ教えるほどのものじゃないけどね。

 セシリアさんやエリカ、ソフィアちゃん自身も試してみて、全員感動ですよ。そりゃ一般人は所持できないくらいの値段のものだからね。これは本当に感動する。

「これはマークお兄ちゃんにプレゼントするよ。もらってくれるかな?」

「あー、ゴメン。それは無理だな。練習で生成した物であっても、全て国の管理下に置かれることになっているはずだからね。気持ちだけありがたく受け取っておくよ」

「そっかぁ、お兄ちゃんが国に(にら)まれたりすると困るものね。うん、無理を言ってごめんなさい」

 いや、本当に残念だ。でも貰えるのであれば、国からの下賜(かし)って形にしないと気軽に持ち歩けないからね。


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