049 盗賊団②
「出番が無かったぜ」
ダンが御者台で呆れたようにつぶやいた。
「私達もですよ」
セシリアさんもダンの隣で同意した。
車内では俺への賛辞が止まらない。見た目では俺だけが戦っていたように見えただろうからね。
「いや、エリカの死霊魔法であいつらを足止めしてもらったのが良かったんだよ。でなきゃもっと乱戦になっていたからね」
俺の言葉にソフィアちゃんが大喜びだ。
「エリカ先生、すごいです。私の先生が活躍して誇らしいです」
「えへへ、それほどでもないわ。まぁ私とマークのコンビなら30人程度の盗賊なんて無傷で倒せるわね」
エリカさんや、調子に乗ってるなぁ。まぁやろうと思えば、エリカだけで盗賊団全員を殺すこともできると思うけど。
「お前の使ってた武器を見せてくれよ」
ビルに言われたのでスリングショットを渡した。
「こんな武器、見たことないぞ。お前が考えたのか?」
「うーん、そうとも言えるしそうでないとも言える」
「どっちだよ!」
ビルのツッコミを流しながら考えてみるが、何と言えば良いのやら。今世では俺が考えたってことになるのかな?
「まぁそんなことは良いじゃん。大した攻撃力は無いし、玩具みたいなものだよ」
「いや、あいつらかなり痛そうだったけどな」
まぁ、俺も鉄製の滑車をスリングショットで食らいたくはないかな。
「撃っていたのは何ですの?」
エリザベス様の質問には簡単に答えることができた。
「ああ、鉄製の滑車だよ」
そう言って、すぐ目の前に直径1インチの滑車を『生成』してみせた。
それを受け取ったエリザベス様は恐々触りながら言った。
「かなり重い鉄の塊ですわね。こんなものが高速で飛んでくるなんてかなり凶悪ですわ」
「でも殺傷力は低いよ。てか、人や魔物を殺せるほどの威力は無いからね」
なにしろ滑車だから、貫通力ってものが無いからなぁ。手で投げるよりは少しはマシってレベルだろう。まぁ、銭形の平次親分の投げ銭よりは威力があるかな。
「まぁとにかく、前衛のジョセフィンさんとセシリアさん、中衛の俺、後衛のダンとエリカ。この五人の役割分担がうまく嵌まったってことだよ。皆ありがとう」
ジョセフィンさんが憮然としているので、主にジョセフィンさんに向けての言葉だ。フォローは重要です。
「盾役として機能できたのならば良かったです。マーク様、エリカ様、こちらこそお礼申し上げます」
ようやく微笑んでくれたジョセフィンさん。うむ、気を遣うぜ。
ちなみに盗賊達の現状はと言うと、首に硬い針金状のものが輪になって付けられており、それを針金状のもので連結している。10人で1列にまとめたものが3列あって、それを馬車が引っ張っている。もしも歩みを止めると首が締まるようになっているのだ。
その針金は俺の『生成』した<自転車の車輪>から取ったものだ。つまり、スポークだね。
エリザベス様の【鍛冶】の技能で簡単に取り外したスポークをダンやジョセフィンさん、セシリアさんなどの大人組が馬鹿力で盗賊達に嵌めていった。
なんとエリザベス様のマジックバッグにはペンチなどの道具類も入っていたのだ。さすがはエリザベス様です。素敵です。
「お坊ちゃん、ちょっと休憩させてくだせぇ」
馬車の後ろから盗賊達の泣き言が聞こえてくるけど知らんよ。これでも時速5km/hくらいしかスピードを出していないんだから、目的地に着くのは夜中になりそうだってのに。




