表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第4章 大陸暦1150年
48/160

048 盗賊団①

 王都を出発して三日目のこと。アーレイバーク男爵領に入ってすぐ、ちょっとしたイベントが発生した。

 魔物…ではなくて、盗賊団だった。いかにも山賊ですって感じの男達が行く手を(ふさ)いだのだ。うーん、ざっと見て30人くらいかな?

 こちらの戦力はダンと俺、ジョセフィンさんとセシリアさん、そして最大の戦闘力を誇るエリカだ。

 俺が指示を出すのはおかしいんだけど、とりあえず指揮を()ることにした。

「ジョセフィンさん、セシリアさん、賊の排除をお願いできますか?」

「「もちろんです」」

 すぐに馬車を降りて馬達の前に立って抜剣(ばっけん)する二人。

「ダンは馬達が暴れないように御者台にいて。あと、最終防衛ラインとして抜けてきた賊の対処をお願い!」

「お、おう。分かったぜ」

 御者がいないと馬達が暴走する可能性があるからね。

「エリカ、頼めるかい?」

「まかせて。殺しはしないわ」

 実は盗賊なんて奴らは正当防衛で殺してしまっても罪には問われないんだけどね。まぁ、PTSDになると困るし、俺も殺さないようにしよう。

 俺は愛用の木刀を腰に()いて馬車から降りた。左手にはスリングショット(いわゆるパチンコとも呼ばれるやつね)を持っている。ジョセフィンさんとセシリアさんの少し後ろに陣取って、遠距離攻撃で援護するつもりだ。


「おうおう、お前ら。そいつは今流行(はや)りの馬車ってやつだろう?俺っちにも貸してくれよ。返すのは100年後になるけどな。がはは」

「なんだか美人が二人出てきたぜ。剣なんか持って勇ましいこった。ま、これだけの数を相手取ることができるか見ものだな」

「おとなしく降伏しやがれ。殺しゃしねぇよ。逆に女の喜びってやつを教えてやるぜ」

 うーん、確かに二人で30人を倒すのは大変だろうな。もっとも戦力は二人だけじゃないんだけどな。

 俺は先制攻撃とばかりにスリングショットで先頭にいた盗賊を攻撃した。弾は直径1インチ(2.54cm)の滑車だよ。鉄製だから頭に当たれば気絶くらいはするだろうね。

 で、それがうまく相手の鼻に当たったようだ。盗賊は鼻を押さえてのたうち回っている。ふむ、鼻骨が複雑骨折したかもしれないね。痛そうだなぁ(棒)。

 ちなみに、滑車はこの場で『生成』しているんだけど、サイズが小さいから100個でも200個でも連続で撃てるよ。いや、ゴムを引く腕が疲れない限り…。

 1秒に1発、スリングショットで滑車を発射する俺。ただ、盗賊達は腕をクロスして顔面をガードしながら近づいてくるため、なかなか倒せない。腕へのダメージはかなりのものだと思うけどね。胴体部分は革製の防具らしきものを付けているため、頭部を狙うしかないのだ。


 ジョセフィンさんとセシリアさんの剣の間合いに入る前に、なぜか盗賊達の足が止まった。見えない何者かが足をつかんでいるようで、盗賊達は自分の足元を必死に剣でなぎ払っている。

 ナイスです、エリカさん。

 そこに俺のスリングショットによる滑車弾が飛ぶ。盗賊達はその場から動けないまま俺の滑車弾の(まと)になっているという状態だ。一方的な蹂躙(じゅうりん)劇だね。

「ま、待ってくれ。こ、降伏する。もうやめてくれ、頼む!」

 盗賊の(かしら)っぽい奴が剣を手放して両手を上げた。

「全員、武器を遠くに投げ捨てろ。そして地面に両膝を付けて両手を上げろ」

 俺の言葉に盗賊達は全員従った。

 最初に鼻をつぶした奴だけは、まだ鼻を押さえたまま地面に横たわっているけど。

「ジョセフィンさん、セシリアさん、賊の捕縛をお願いできますか?」

「「分かりました」」

 護衛騎士なのに全く出番が無かった点が不満なのか、ちょっと不貞腐(ふてくさ)れた感じで賊の武装解除と捕縛を行ってくれた。いや、すみません、仕事を奪ってしまって。

 後ろ手に縛るためのロープが無いため、盗賊達の上着をはぎ取って、それを裂いて簡単な拘束具を作ったよ。まぁ応急処置だね。


 次は尋問だ。仲間がいたら厄介だからね。

 俺は最初に降伏を宣言した(かしら)っぽい盗賊に言った。

「お前がこの盗賊団の(かしら)で間違いないか?」

「おう、泣く子も黙るアーロン盗賊団の頭目のアーロンだ。俺らを解放したほうが身のためだぜ」

「ここにいる人間以外の仲間がお前らのアジトにいるっていうのか?」

「あったりめぇよ。100人は下らねぇぞ。すぐに駆け付けてお前らをぼこぼこにするだろうぜ」

「ふーん、エリカ先生、本当かな?」

 俺はすぐ後ろにいたエリカにバトンタッチした。

 エリカはアーロンって奴の頭に手を置いて目をつぶった。以前エリカから聞いたことがあるんだけど、生霊(いきりょう)から相手の考えを読み取ることもできるらしい。触れていないとダメという制約はあるけど。

「アジトは(から)ね。仲間はここにいるので全員。アジトには(さら)ってきた人間はいないし、(ろく)な財宝も置いてないみたい」

 盗賊団の頭目を名乗るアーロンって奴が目を見張って驚いている。

「エリカありがとう、さてそれじゃこいつらを犯罪者として引っ張っていくか。全く面倒くさい」

 こいつらを馬車に乗せるわけにはいかないし、自力で歩かせるしかないんだよな。くそ、目的地への到着が遅くなるじゃん。全くもう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ