045 マジックバッグ生成③
とりあえずは現状の把握だ。
ソフィアちゃんに詳細を確認してみたところ、以下のようなことが分かった。
・メニュー表示は可能
・メニューは＜マジックバッグ生成＞＜終了＞の二つで、＜マジックバッグ生成＞を選ぶとパラメータ入力画面に遷移
・外観パラメータを三つ、内部パラメータを三つ指定できる
・外観パラメータの【高さ】は１００から３００まで、【幅】は２００から５００まで、【奥行】は２０から１００までで単位はミリメートル
・内部パラメータの【高さ】【幅】【奥行】については、それぞれ外観パラメータの倍率を指定できる（１０倍から１００倍まで）
つまり、最も小さいサイズで作ると１０ｃｍ×２０ｃｍ×２ｃｍの外観で、内部サイズが１ｍ×２ｍ×２０ｃｍってことになる。
エリザベス様の持っていたマジックバッグは、２０ｃｍ四方で５ｃｍの薄さだったのに２０畳四方くらいの面積らしい。つまり倍率は【高さ】と【幅】が２０ｃｍ×３０倍、【奥行】が５ｃｍ×４０倍ってところかな？（普通の２０畳の部屋のイメージならば）
最大のサイズならどうなるのかな？外観が３０ｃｍ×５０ｃｍ×１０ｃｍで、内部が３０ｍ×５０ｍ×１０ｍってことになるね。って家一軒が入りそうだよ。
なお、マジックバッグの中は重力と時間の影響を受けないので、ゆすろうがぶん投げようが中の物には影響は無いし、時間の経過も無いそうだ。
取り出すときにはマジックバッグに手をかざす。すると脳内に収納品の一覧が表示されるので、それを思い浮かべるだけで良いらしい。俺も使ったことが無いのでよく分からんけど、すごい技術だね。いや女神の奇跡と言うべきか。
「どういう値を入れても一番下の【生成実行】が有効にならないの」
ソフィアちゃんが悲しそうに言った。
ふーむ、生成できないのならそもそもメニューが有効にならないし、パラメータを入力できるのに【生成実行】が有効にならないのは生み出すだけの魔力が足らない場合なんだよな（俺の場合）。
「家庭教師の先生は魔力不足って言ってなかったかい？」
「ううん、そんなことは一言も言ってなかったよ。原因不明なんだって」
いや、どう考えても魔力不足だろう。本当に優秀な先生なのか？
「よし、分かった。それじゃソフィアちゃんの【恩恵】の訓練はいったんお休みにしよう。代わりに魔力の訓練を行います」
「え？」
ソフィアちゃんも一緒に聞いていたアンネット嬢もきょとんとしている。
護衛騎士のセシリアさんが苦言を呈した。
「マーク様、そのような勝手なことをされては困ります。私の任務は護衛であるとともに、ソフィア様が一日も早く【恩恵】を活用できるようになるよう、お助けすることも含んでいるのですから」
「うん、だったら尚更だよ。急がば回れって言うしね」
「何ですか、それは？急いでいるときに回るとはどういう意味ですか？」
おっと、『急がば回れ』っていうことわざが通じなかったか。
「遠回りに思えても実は近道だって意味だよ」
「魔力の訓練がそうであると？」
「俺の推測が正しければ、そうだね」
うちの家族は魔力枯渇の繰り返しで魔力量を増やすなんてできないって言ってたけど、アリスちゃんやエリカの魔力量は増えているみたいなんだよな。アリスちゃんなんか今でも寝る前に魔力を空っぽにしているらしいんだけど、最初の頃の２倍以上には魔力量が増えているらしいよ。俺もそうだけど。
ここでもう一人の護衛騎士であるジョセフィンさんが発言した。この人のほうがセシリアさんよりも先輩というか上司みたい。
「恩恵管理局から絶大な信頼を受けておられるマーク様なのですから、しばらく任せてみても良いんじゃないかしら。このままでは手づまりなのも確かなのだし」
「あ、一つ言っておくけど、結果はすぐには出ないよ。魔力の認識と移動に三か月、そこから魔力を枯渇させる訓練を三か月から半年、つまり六か月から九か月、いや最悪１年間は猶予期間が欲しい。良いかな？あ、もちろん恩恵管理局への申請は俺のほうでやっておくから」
ジョセフィンさんはセシリアさんと顔を見合わせてから仕方なさそうに言った。
「恩恵管理局へ話を通していただけるのならば、マーク様にお任せします。どうぞよろしくお願い致します」
「うん、任された。ソフィアちゃんもそれで良いね？」
「え？ええ。マークお兄ちゃんが教えてくれるの？」
「いや、俺は魔法士じゃないからね。先生となる女性を連れてくるよ。俺の婚約者のエリカ・アトキンスって子だけど」
「は？マークお兄ちゃんって婚約者がいるの？聞いてないよ、私」
なんか勝手にショックを受けてるけど、ソフィアちゃんには言ってなかったっけ？
