044 マジックバッグ生成②
俺は家族(両親、兄や姉)にすら秘密のソフィアちゃんの【恩恵】をエリカだけには打ち明けた。もちろん、他言無用の誓いを立ててもらってからだけどね。
これで友人全員(エリザベス様、ビル、アンネット嬢、アリスちゃん、アリアそしてエリカ)と秘密を共有することになったわけだ。
自分自身でも不思議なんだけど、なんとなくこの六人(正確にはアンネット嬢を除く五人)には言っておいたほうが良いと思ったんだよね。どういう予感なのか説明できないけど。
アーレイバーク家の屋敷には週に3日ほど、『生成』系の【恩恵】を持つ家庭教師が王宮から派遣されてきているらしい。俺がメイドのターニャさんに教えてもらったように、【恩恵】の使い方を教わっているそうだ。
ところがなぜか【恩恵】を発現できていないとアンネット嬢から聞いた。
メニューは出現するし、パラメータも入力できる。でも最後の【生成実行】が選択できないとのこと。パラメータとしてはバッグのサイズを入力するはずだけど、大きなものはそれだけ多くの魔力を消費するはずだ。したがって、まずは最小のサイズで試してみたんだけど【生成実行】できず、色々とパラメータを変更して試してみてもダメだったそうだ。
何も生成できないため習熟度を上げることもできず、二週間経った今も暗礁に乗り上げた状態とのこと。俺が思うに、魔力量の問題じゃないかな?生成に必要な魔力が足りていないだけだと思うんだけど…。
最初の期待が大きかった分、その反動も大きく、失望の空気が次第に広がりつつあるみたい。まだまだ子供のソフィアちゃんにとっては精神的に厳しい状況だね。
これらの状況をアンネット嬢から聞いた俺はアーレイバーク家への訪問を決めた。ただしソフィアちゃんへの面会は恩恵管理局の許可がいるらしい。頻繁に訪れている恩恵管理局なので気後れすることもない。
「こんにちは、マーク・カーチスです。お久しぶりです」
「おや、マーク様、こんにちは。今日はどのようなご用件ですか?」
「はい、アーレイバーク家の屋敷を訪問し、ソフィア嬢と面会する許可を頂きたいのですが…」
これを聞いた管理局の人はあからさまにほっとした表情になった。
「ありがとうございます。実はこちらからマーク様にお願いしようと思っていたところなんですよ。そのご様子では【恩恵】が発現できていないこともご存知で?」
「はい、姉であるアンネット嬢から聞いております。俺が手助けできるかは分かりませんが、とりあえずは現状を把握しておきたくて…」
このあと管理局の人に『面会許可状』を発行してもらい、それを護衛の騎士に見せるように言われた。
てか、なんで俺に依頼しようと思っていたのかな?なんだか異常に信頼されているみたいなんだけど、使徒であることはバレてないよね?
その足でアーレイバーク家の屋敷へと向かい、出迎えてくれた家令の人にソフィア嬢への面会希望を告げた。
アンネット嬢と一緒に護衛騎士の一人ジョセフィンさんが現れたので、恩恵管理局の『面会許可状』を提示した。応接室に通された俺が大人しく待っていると、もう一人の護衛騎士であるセシリアさんと一緒にソフィアちゃんが入ってきた。気落ちした雰囲気はあるけど元気そうではある。ちょっと安心した。
「マークお兄ちゃん!」
ソファから立ち上がって出迎えた俺に向かってソフィアちゃんがダッシュで近付き、勢い余ってソフィアちゃんの頭が俺の鳩尾にジャストミート。
「ぐふっ」
一瞬息が止まったよ。なかなかの攻撃力だ。いや、俺がひ弱なのか?
後ろから続けて部屋へ入ってきたアンネット嬢とジョセフィンさんが冷たい視線を浴びせてくるけど、俺は無実だ。
「ソ、ソフィアちゃん、久しぶりだね。元気そうで良かったよ」
「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
ぐりぐりと頭を俺の腹へこすりつけてくるソフィアちゃんの両肩をつかんで何とか引き離した。
「ごめんなさい、マークお兄ちゃん。嬉しくて取り乱しました」
ようやく落ち着いたソフィアちゃんに俺は優しく語り掛けた。
「ソフィアちゃん、君の【マジックバッグ生成】の件だけど、生成できないんだって?」
「うん、色々と試してみたんだけどダメだった。先生も原因不明だって」
あれ?家庭教師の人が分からないってことは魔力量の問題じゃないのかな?
「ジョセフィン」と「セシリア」という美人さんが登場しますが、ヒロイン候補ではありません。




