041 女神の使徒
俺達の友人グループにアリアが加わった。今では昼休みの学食でも一緒に食事しているよ。
エリザベス様、ビル、アンネット嬢、アリスちゃん、アリア、俺の六人だね。ここにエリカが加われば七人なんだけど、まだアリアに紹介できていない。
今日は休日で学校は休みなんだけど、俺は今、教会に来ている。そしてなぜかアーレイバーク一家と一緒にいる。
アンネット嬢の妹さんのソフィアちゃんが今日10歳の誕生日を迎えるとのことで、教会の【恩恵】の間に来ているのだ。…ってなんでここに俺もいるの?いや、アンネット嬢に『どうしても』と頼まれたのだ。一緒に来て欲しいと…。
まぁソフィアちゃんとは面識もあるし、『マークお兄ちゃん』と呼ばれて慕われているので別に良いんだけど…。
アーレイバーク男爵や奥方様とは挨拶を済ませたけど、なんかアンネット嬢の偽装恋人的な位置づけになっちゃってるようだ。両親がやたらと縁談を持ってくるのに閉口しているらしい。だからと言って俺を引っ張り出さないで欲しいものだけどな。てか、だったらビルでも良いじゃん。
もしこれがバレたらエリカがどういう態度に出るのか、考えるのも恐ろしいよ。レイスをけしかけてきそうだよ、まじで怖い。俺の脳裏に以前のフォレストウルフの死ぬ間際の様子が甦る。
あまりにも怖いので、アーレイバーク一家とは離れて、教会の大聖堂で神に祈ってしまったよ。
『ようやく来ましたね。待ちわびましたよ』
俺の脳内に聞き覚えのある声が響いた。って、この声は女神か?
『【車輪生成】の【恩恵】を授けてから丸4年、全く教会に寄りつかないとはどういうことですか?』
いや、だって前世が日本人だからなぁ。教会に来るのなんて知り合いの結婚式くらいだよ。
『夢でお告げをしようにも、いつもいつも魔力切れで夢も見ずに熟睡してるし、本当にどうしてやろうかと思ってましたよ』
それはどうも申し訳ない。でも俺としては特に用事はありませんから。
『きー、むかつく!まあ心の広い私は慈悲の心で許してあげましょう。車輪の普及にも尽力しているようですし』
いや、むかつくとか言ってんじゃん。本当に女神なのか?偽女神じゃないだろうな。
『本物の女神ですよ。てか、私の声を忘れたわけじゃないでしょう?忘れていたら泣きますよ』
はぁー、冗談ですよ。それで今日は何のご用でしょう?
『あなたは私の使徒なんですからね。地上における女神の代弁者として、私の教えを広める義務があるのです。なので、定期的に教会に来るようにしてくださいね』
えええ、いやですよ。そんなの神父さんやシスターに言ってください。
『残念ながら私の声はあなたにしか届きません。転生時に私とのパスを通していないといけないのですが、前世の記憶を消すとパスを通せないのですよ』
まじですか。うーん、仕方ないですね。でも面倒くさいことは勘弁してくださいよ。
『あまり手を煩わせるようなことにはならないと思いますよ。あ、ご褒美として今【恩恵】の間にいるソフィア・アーレイバークに希少な【恩恵】を授けてあげましょう。あなたの役に立つものですよ』
へぇ、それは楽しみにしておきます。教会に来るのは月一回くらいで良いですかね?
『ええ、それで構いません。それではまた』
跪いて祈っていた時間は5分くらいだったろうか。どうにも教会の中が慌しい。
アンネット嬢が大聖堂に入ってきて跪いている俺を発見したのだろう。近付きつつ俺に言った。
「マーク、大変なの。ソフィアの【恩恵】が!」
「アンネット、ちょっと落ち着いて。希少な【恩恵】を授かったんだろう?何の【恩恵】だったんだい?」
「え?なんで知ってるの?いや、それよりもソフィアの【恩恵】は【マジックバッグ生成】だったのよ。この国で三人目ですって」
おおお、それは素晴らしい!ぜひ俺にもマジックバッグを作ってもらいたいものだ。でもお高いんでしょうね。




