040 アリア
アリアが卒業制作のグループに入るのならば、その前に友人全員に紹介しておいたほうが良いな。
放課後、ジョンソン伯爵家の馬車が正門前に到着したタイミングで、アンネット嬢と一緒にアリアが現れた。
話は馬車の中でってことで、とりあえず全員で馬車に乗り込む。最初の目的地は貴族街区ではなく、アリアの家(木工場)ってことになるね。ちなみに、アリアは初めて馬車に乗ったそうでめっちゃ興奮しているよ。いや、これ君ん家で作ったものだからね。
「えっと、彼女はアリア。木工1組でアンネットと同じクラスだよ。この馬車を作った木工場の跡継ぎ娘だね。俺とアンネットの友達でもある」
俺の紹介に、緊張しながら自己紹介を始めるアリア。
「は、はじめまして。アリアと申します。卒業制作のグループに入れてもらいたいと思いまして、ご挨拶に参りました」
うん、噛まずによく言えました。
「この素晴らしい馬車を作った木工場の跡継ぎ…。あなたのご家族にはお礼を言わなくてはね。馬車を作ってくれてありがとう」
え?本当にエリザベス様なの?偽物じゃないの?出会った当初の高慢な貴族令嬢と同じ人物とは思えないよ。
「あ、彼女は伯爵令嬢だからね。エリザベス様と呼ぶように」
一応、俺が補足しておこう。
「エリザベス様、よろしくお願いします」
少し緊張がほぐれた様子でアリアが言った。
「僕はビル・リチャードソン。ビルって呼んでくれ。よろしくな」
ビルの奴、アリアがちょっと可愛いからって鼻の下が伸びてるのはどうかと思うぞ。
「ビル様、よろしくお願いします」
にっこりと微笑んだアリアを見て、ビルが顔を赤くしているけど何なの?
「アリスです。この中で唯一の平民だったんですが、アリアさんが来てくれて嬉しいです」
「アリアで良いよ。敬語もいらない。あと、私もアリスって呼んで良いかな?」
「うん、アリア。よろしくね」
アリスちゃんとアリアはすぐに仲良しになれそうだな。名前も似てるし。
あとはエリカはここにいないけど、卒業制作とは関係ないし、まぁ良いか。
とにかく、ビルとアリスちゃんは心配してなかったけど、エリザベス様の反応だけが心配だったんだよ。良かった良かった。
「ねえねえ、アンネット」
「なあに?アリア」
「マーク様の婚約者ってエリザベス様なの?」
「ち、違うわよ。もう、失礼なことを言ってはダメよ」
エリザベス様の顔が赤くなっているし、アンネット嬢は焦っている。ビルは面白がっているし、アリスちゃんはジト目で俺を見ている。いや、なぜ俺を見る?
「アリア、俺の婚約者が知りたいなら、今度紹介してあげるよ。エリザベス様、申し訳ありません。アリアの奴も悪気は無いので許してあげてください」
「え、ええ、もちろん、大丈夫よ。気にしてないわ」
うん、エリザベス様も心が広くなったものだ。
でもアリアの奴、なぜそう思ったのかな?不思議な話だ。




