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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第3章 大陸暦1149年
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031 春の状況

 大工の親方にエイミーさんを紹介してから二か月後、『コイルスプリング付き高級ベッド』をある貴族家に納品したらしい。

 そのあまりの寝心地の良さを社交界で自慢しまくったその貴族のおかげで、親方のところには問い合わせが殺到しているとのこと。ただし、エイミーさんのほかにも【バネ生成】の【恩恵(ギフト)】を持っている人はいるはずなので、将来的にはほかの工房も参入してくるだろうな。【鍛冶】の『技能』を持っている人も頑張ればバネを作ることができるようになるだろうし、独占状態にはならないと思う。参入業者が増えるのは、経済が活性化して良いことだ(不良品も多く現れてくるようになるけど…)。


 俺も毎日【車輪生成】に忙しく、それで得た収入を使って『コイルスプリング付き高級ベッド』を親方に発注したよ。両親へのプレゼントなので、横幅の広いダブルベッドを1000万エンで特注したのだ。完成は三か月後になるそうだけど、楽しみだな。

 あ、完成後、どうやってうちの屋敷に運ぶのだろう?輸送用の荷馬車が必要だろうか?…って思ったら、親方もマジックバッグを持っていたよ。羨ましい。


 あと、技術学校は2年生に進級した(基本的に落第は無い)。クラス分けは【恩恵(ギフト)】ごとなので、エリザベス様やビル、アンネット嬢とは別クラスになってしまったよ。もちろん、クラスは分かれても友達だけどね。

 【加工】クラスが4クラス(加工1組、加工2組、加工3組、加工4組)、【木工】が2クラス(木工1組、木工2組)、【裁縫】が1クラス、【鍛冶】が1クラス、【陶芸・細工】で1クラス、【調薬】と【精製】は誰もいないので無し、『生成』系統が1クラスの合計10クラスだ。

 というわけで、エリザベス様が鍛冶組、ビルが裁縫組、アンネット嬢が木工1組、俺とアリスちゃんが生成組ということになった。

 ちなみに、生成組はクラスの人数がめちゃ少ない。【紙生成】が9人、【布生成】が4人、【ゴム生成】が1人、【ガラス生成】が1人(アリスちゃんだけ)、【車輪生成】が1人(俺だけ)ということで総勢16人だ。

 ただ、『技能』クラスは手を動かして技術を習得するので学校で学ぶ意義があるんだけど、『生成』クラスは基本的にメニューから選択して生成するだけ。やればやるほど習熟度は上がるけど、先生に何かを習うことって無いんだよ。つまり、生成組の担任は読み書き計算のような一般教養を教えるだけで、『生成』について教えることはない(というか、できない)。

 結局、学校では一般教養ばかりを習うことになるんだよな。俺にとってもアリスちゃんにとっても、技術学校の授業は仕事の合間の良い息抜きになっている感じだね(ほとんど知っている内容なので)。


 そうそう、春先に王宮の恩恵(ギフト)管理局から呼び出されたんだけど、伝えられた内容は【石油生成】と【精製】の組み合わせが大成功を収めたって話だった。

 原油を重油・軽油・灯油・ガソリンなどに分離できたらしい。

 で、呼び出された用件は、それらの用途について何か意見があるか?ってことだった。12歳(もうすぐ13歳だけど)の子供に聞くかね。

 俺は別に専門家じゃないので、あくまでも一般常識としてのアドバイスしかできない。重油は(かま)で燃焼させることで水を沸騰させて蒸気を生み出し、蒸気タービンを回すことで船舶の動力にできるだろう。軽油はディーゼルエンジンの燃料だけど仕組みをよく知らないんだよな。ガソリンはガソリンエンジンの燃料ではあるけど、点火プラグの発火に電気を使うので実現できないはずだ。灯油は今すぐストーブの燃料として使えるね。

 これらのうち、重油と灯油についてだけアドバイスしたよ。石炭すらまだ見つかっていないのに、それを飛び越えて重油による産業革命が始まるかもしれないね。あと、軽油と灯油の引火点は40度くらいなので勝手に燃えることはないけど、ガソリンの引火点はマイナス40度くらい(よく覚えていない…)だからめちゃくちゃ危険だってことは強調しておいた。

 本当にガソリンは怖いんだよな。前世でセルフのガソリンスタンドが増加傾向にあったけど、素人がよく平気でガソリンを車に入れられるよな、と感心していた。前世の俺は、危険物取扱者(とりあつかいしゃ)の資格保持者だったからね。

 でもこれで、今年の冬は灯油ストーブが登場して、薪ストーブに置き換わってきたら良いなぁとか思ったり…。いや、今年は無理かな?


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