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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第3章 大陸暦1149年
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029 バネ生成①

 さっきのアトラ商会の店にはエイミーさんっぽいアラサーの女性はいなかったので、今日はお休みだったのかもしれない。

 休みなら下宿にいる可能性もあるよね。

 エイミーさんのお母さんに教えてもらった下宿の住所を訪ねてみると、家主らしきおばさんが出てきて言った。

「エイミーに何か用かい?まさか借金取りじゃないだろうね?いや、こんな子供が借金取りなわけないか。いったいどういう知り合いだい?」

「はい、俺はマークというものですが、エイミーさんの持つ【恩恵(ギフト)】の件でお話をお伺いしたいと思って参りました。ちなみに、面識はありません」

 エイミーさんのお母さんには、うっかり家名を名乗ってしまって変な空気になってしまった。なので、今回は平民のふりをしてマークとだけ名乗ったよ。

「ふーん、そうかい。まぁ子供だし大丈夫だろうさ。ちょっと待ってな、今呼んでくるから」

 なんだろう?借金取りにでも追われているのかな?


 しばらくして、恐る恐るといった感じで20代の女性が姿を現した。あれ?20代前半くらいに見えるけど本人なのか?なお、どうでも良いけど容姿は整っている。端的に言って美人だ。

「あのぉ、私にご用って何ですか?」

「はじめまして、マークと申します。あなたの【恩恵(ギフト)】について、何ができるのかなどをお聞かせいただければと思い、参上いたしました」

 ほっとした表情になったあと、すぐに寂しそうな表情をしたエイミーさんは家の中に招き入れてくれた。

 家主のおばさんのご厚意で応接室的な部屋を貸してもらったのはありがたかった。若い女性の部屋に入るのはちょっと気が引けるからね。


 お茶を()れてくれたエイミーさんにお礼を言ったあと、俺は話を切り出した。

「エイミーさんは【バネ生成】という希少な生産系の【恩恵(ギフト)】をお持ちなんですよね。ぜひその話をお聞かせください」

「うーん、役立たずの【恩恵(ギフト)】なので、お話しすることは何も…。できるのは子供の玩具(おもちゃ)みたいなものを作れるだけですし」

 え?色々なところに活用できる【恩恵(ギフト)】のはずなんだけどなぁ。

 詳しいことを聞いてみると、目の前にメニューが出るのは、俺の【車輪生成】やほかの『生成』系【恩恵(ギフト)】と同じ。で、選択できるのは<圧縮コイルバネ><引っ張りコイルバネ><ねじりコイルバネ>の三種類で、それらは様々なパラメータを入力してから生成実行するらしい。

 名前だけではよく分からないので、実際に生成してみてもらった。

『圧縮コイルバネ』は一般的なバネで上から押さえつけるタイプだね。『引っ張りコイルバネ』は逆に吊り下げるタイプで、『ねじりコイルバネ』はよく箱の(ふた)なんかに使うやつだ(ボタンを押してストッパーを外すと、90度上に開く(ふた)があるよね)。

 全部役に立つものばかりじゃん。なぜ役に立たないって言ってるんだろう?


「素晴らしいです。なぜ職人ではなく販売員をしていらっしゃるのか分かりませんが、そんなに販売員がお好きなんですか?」

 職業選択の自由で、【恩恵(ギフト)】とは関係のない職業に()く人もいるからね。こればっかりは本人の自由だし。

「いえ、職人の道を選ぼうにも私の作るものには需要が無いのです。あと、販売員も少し前に馘首(くび)になりましたので、今は無職ですよ」

 寂しそうに微笑むエイミーさんだったが、俺にとっては僥倖(ぎょうこう)以外のなにものでもない。

「ぜひともあなたのお力を貸してください。俺はまだ自分の商会を持っていないのであなたを雇うことはできませんが、あなたの作った物を買い取ることはできます。これからある木工場まで一緒に行っていただけませんか?」

 冗談なのか、詐欺なのか、判断しかねるといった表情で俺を見るエイミーさんに、俺はカーチス家の紋章の入ったハンカチを出して本当の素性を明かした。

「だ、男爵家のご令息様でしたか。大変失礼いたしました。はい、私の【恩恵(ギフト)】がお役に立てるのでしたら、どこへでも参ります」

 貴族の威光は絶大だな。ちなみに、家主のおばさんも驚いていたよ。


 「エイミー」はヒロイン候補ではありません。

 さすがに年齢差が…。


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