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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第2章 大陸暦1148年
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020 発明者

 馬車の旅は予想以上に快適だった。

 ジョンソン家の護衛はダンとマッシュという名前で、ダンが【剣術】、マッシュが【棍術】の【恩恵(ギフト)】持ちだった。頼もしいね。

 さらに二人とも馬車の操車に興味津々で、操車方法を教えてあげたらめっちゃ喜んでくれた。てか、俺が馬車の車内に入っても良いのなら、俺としても楽ができて助かるよ。

 往路はともかく、復路は任せてみても良いかもしれない。


 中継地点(宿泊場所)の村に到着したのが夕方も遅い時間、というか、ほとんど日は沈んでいた。夜に馬車を走らせたくないからギリギリだったよ。出発の際に色々と時間を食ったのが一因だ。

 宿屋の庭に馬車を停めて、馬達は厩舎(きゅうしゃ)に入れて馬丁(ばてい)に世話をしてもらうことになる。

 宿の部屋は事前に連絡を入れて予約していたので、護衛を含めて八部屋を確保することができた。

 で、食堂で全員一緒に食事をすることになったのだが、話題として出るのはやはり馬車のことだ。

「マーク、あの馬車って価格はいくらか知ってるのかい?」

 ビルの質問にどう答えようか迷ったけど、よく知らないことにした。俺の【恩恵(ギフト)】が何なのかはまだ明かしていないのだ。

「うーん、聞いてないけど多分1000万エンくらいじゃないかな?」

「お前んちって金持ちなんだな。領地を持っていないはずなのに、なぜだ?」

 いや、横領などの不正はしてないよ。

 エリカやアリスちゃんも俺の意図を()んでくれたのか、余計なことは言わないようにしてくれている。


「まぁそんなことより、アンネットは大丈夫かい?気分が悪いのは良くなった?」

「ええ、すみません。私のせいで遅い時間になってしまって…」

 そう、乗り物酔いだ。アンネット嬢だけが酔ってしまい、休憩を頻繁に挟んだせいで予定よりも遅い時間の到着になってしまったのだ。

「馬車に乗っているときは、できるだけ遠くの景色を見るようにすると良いよ」

 乗り物酔いの薬が無いから、こういう対処法しかないんだよね。

 意外だったのがアリスちゃんだ。貴族は乗馬が一般教養なので揺れには強いんだけど、アリスちゃんは乗馬をしたことも無いのに馬車の揺れにけろっとしていたよ。ちなみに、アンネット嬢はほとんど馬に乗ったことが無いそうだ。


「でも馬車ってすごい発明ですわ。発明した方は天才ですわね。尊敬いたしますわ」

 エリザベス様の賛辞にエリカとアリスちゃんが嬉しそうに俺を見た。まぁ天(女神)から与えられた才(才能)という意味では天才かもしれないね。【車輪生成】とはまさにそういうものだし。

「マーク坊ちゃんじゃないんですかい?発明者って」

 ダンがどういう根拠で言ったのか分からないけど、勘が良いな。

「ああ、俺もそう思ったな。でなきゃ操車方法なんて知ってるのがおかしい」

 マッシュも追撃してきた。そして、エリザベス様の追及が厳しくなった。

「マーク、正直におっしゃい。馬車はあなたが発明したの?」

「あー、はい。主要部品である車輪だけですよ。窓ガラスはアリスの作品ですし、全体の構造なんかは鍛冶屋や大工のおじさんの作品です。つまり、俺だけじゃなく、多くの人の合作ということですね」

「いや、それでもすごいな、マーク。僕の【恩恵(ギフト)】は【裁縫】だから、馬車の内装なら手伝えるかもしれない。今度新しく作るときには手伝わせてくれよ」

 へぇー、ビルは【裁縫】か。【○○生成】が無から有を生み出す【恩恵(ギフト)】であるのに対し、『生成』が付いていない【恩恵(ギフト)】は技能的なものだ。つまり、材料があれば

色々なものが作れるようになる【恩恵(ギフト)】だね。


「だったら(わたくし)の【恩恵(ギフト)】は【鍛冶】ですわよ。鉄の加工はお任せなさいな」

「あ、私は【木工】です。私も協力できますね」

 なんとエリザベス様が【鍛冶】で、アンネット嬢が【木工】か。このグループで馬車一台作れるんじゃないか?

「私だけ仲間外れですわね。別に良いですけどね」

 エリカが()ねだした。可愛いな。

「エリカには将来お願いしたいことがあるよ。もちろん馬車に関してね。詳細は言えないけど」

 馬の死体をゾンビとして操ったり、骨だけの馬をスケルトンとして操ったり、レイスを使って馬無しで動かしたりとそういう動力系のお願いをしたいんだよね。できるかどうかは分からないけど。


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