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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第2章 大陸暦1148年
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018 婚約者の話題

 入学してからもう一か月になる。

 俺達のグループは貴族出身者が四人もいるせいで(アリスちゃんだけが平民だ)、クラスメイトからは遠巻きにされているようだ。俺やビルはもっと皆と交流して友達を増やしたいんだけど、貴族の権力を笠に着たパワハラっぽくなってもまずいので、あまりぐいぐいいけないのだ。

 まぁ見たところボッチな子もいないみたいだし、いじめもない(ように見える)。クラス内の交友関係はひとまず安定してきたと言って良いだろう。


 昼休みの今、五人で学食に来ている。入学当初はエリザベス様だけ豪華なお弁当をマジックバッグに入れて持ってきていて、教室の隅でボッチで食べていたんだけど、俺が半ば強引に学食に誘ったのだ。皆で食べたほうがおいしいに決まってるからね。

 そうしたら次第にお弁当を持ってくるのを()めて、学食のチープな料理(あくまでも貴族にとっては…)を食べるようになったのだ。人って変わるもんだね。

 なお、マジックバッグというのはオーバーテクノロジな代物(しろもの)で、これを作成できる【恩恵(ギフト)】が存在するらしい。生産系の【恩恵(ギフト)】なんだけど、現在の技術学校の在校生にはこの【恩恵(ギフト)】を持っている生徒はいないみたい。

 その機能は、見た目は小型の袋なのに中は畳で言えば二十畳くらいの広さがあり、しかも時間停止しているとのこと。異世界ものでよくあるアイテムボックスの道具版だね。

 エリザベス様に聞いてみると、一つ1億エンはするそうだ。…ってまじかよ。そんな高価なものを学校に持ってくるなよな。言えないけど。


「ねえ、エリザベス様、今日からの新メニューのこれ、とってもおいしいですよ。お一ついかがですか?」

「そう?だったら頂くわ。ありがとう、アリス」

 めちゃくちゃ意外なことにエリザベス様とアリスちゃんがフレンドリーに会話するようになったのだ。アンネット嬢も最初のほうこそエリザベス様が苦手な感じだったんだけど、今では普通に会話できるくらいにはなっている。もちろん、俺やビルも。やはり、エリザベス様が変わった(貴族の高慢さが薄れてきた)のが大きいだろうな。


「そう言えば、あなたがたには婚約者はいますの?(わたくし)には親の決めた婚約者がいますのよ。しかも魔法学校の3年生で、優秀な方ですの」

 エリザベス様が自慢そうに話題を振ってきた。

「僕は、まだいないな。兄さんが家を継ぐのか僕が継ぐことになるのか、まだ分からないからね」

 ビルの家って長兄相続じゃないんだ。普通は長男が継ぐものだけどね。

「私もまだです。どうせ政略結婚などの親の意向で(とつ)ぎ先が決められるのでしょうけど」

 あー、貴族あるあるだよね。アンネット嬢に限らず、自由恋愛できないのは本当に気の毒だ。

「アリスは平民だから婚約者はいないでしょうけど、マークはどうなんですの?」

 エリザベス様の問い掛けに俺は答えた。

「俺は近所の幼馴染であるエリカ・アトキンスと婚約しているよ。ちなみに彼女は魔法学校の1年生だね」

「え?そうなんですの。でもマークは三男で、成人後は平民になるのではなかったかしら?」

「はは、まぁそのへんはちょっと事情があって、言えないんだよね」

 仮の婚約というか、偽の婚約だからね。

「エリカ様はマーク様のことが大好きなんですよ。私も同じくらい好きですけど」

 アリスちゃんが爆弾発言をぶっこんできた。アリスちゃんが好きなのが俺なのかエリカなのか、どちらともとれる微妙なニュアンスだな。

「おい、マーク。お前モテモテだな。くそっ、(うらや)ましい」

 ビルから『リア充は死ね』的な波動を感じるけど、別にモテてるわけじゃないと思うぞ。そう、俺は鈍感系主人公じゃないからね。本音と建前を判別するのは得意なのだよ。


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