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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第9章 大陸暦1157年
156/160

156 サム視点⑤

 親方に(すす)められて、俺は今、教会に来ている。10歳のときに貰った【恩恵(ギフト)】って、教会で確認できるのかな?

 応対してくれたシスターさんに聞いてみると、確認できないと言われたよ。どうやら【鑑定】という珍しい【恩恵(ギフト)】を持っている人に見てもらわないとダメみたい。そして、知り合いに【鑑定】持ちはいないそうだ。残念…。

 せっかくだから大聖堂で祈りを捧げていかれませんか?…って聞かれたけど、俺はそんなに信心深くないんだよな。

 あと、変なことを聞かれたよ。かなり前にもここへ来ませんでしたか?…ってさ。すみませんが、記憶にございません。…って日本の政治家かよ!あれ?ニホンってどこ?


 まぁ、シスターさんの顔を立てて、恰好だけでも祈りを捧げていくか。

 俺は(ひざまず)き、左手の義手を右手で包み込むようにしてから目を閉じた。その瞬間、誰かの声が聞こえてきた。てか、耳からじゃなく、直接頭の中に鳴り響いているよ。う、うるせぇ。

『マーク!やっと教会に来ましたね!もう、遅いぞ。プンプン』

 プンプンって擬音(ぎおん)を口に出す人を初めて見たよ。いや、口には出してないんだけどさ。てか、誰だ?あと、マークって俺のこと?それより音量大きすぎるので、ちょっと下げて。

『あなたの名前はマーク・カーチスですよ。サムなどという「海物語」に出てきそうな名前じゃないですからね』

 いや、出てきたほうが打ってる人にとっては嬉しいのでは?あれ?「打ってる」って何を?

『記憶喪失になってもツッコミは健在ですね。よきかな、よきかな』

 てか、あなたは誰ですか?

『私は女神です。この世界の創世神ですよ』

 ああ、自称「女神」か…。少し痛いですよ。中二病じゃあるまいし…。あれ?チュウニビョウって何?

『ああ、もう、本物の女神なんですってば。そして、あなたは女神の使徒なんですよ。世界を救った代償で、記憶喪失になったみたいですけど』

 うわぁー、俺も大概だな。騎士団にいた医師の先生、精神病も()てくれるかな?

『あなたは糖質なんかじゃありませんからね』

 糖質じゃなく、統合失調症って言ってくださいよ。…って、それって何?

『くぅー、話が進まなすぎて、もどかしい。もう、どこかに頭をぶつけてきなさい。運が良ければ記憶が戻るでしょう』

 いやいやいや、運が悪けりゃ死ぬかもですよ。さすがは邪神、言うことが違うな。あ、思い出した。あなたは邪神ですね?

『きー、誰が邪神か!天罰食らわせるぞ』

 ほら、やっぱり邪神だ。親方が言ってましたよ。女神様は慈悲深く、博愛の精神で我らを見守ってくださるって。

『えーん、マークがいじめるぅ~』

 はぁー、このへんにしときますか…。お久しぶりですね、女神様。

『ガッデム!あ、あなたはこの私を、女神たるこの私をからかっていたんですね?許せぬ…。靴の中に小石が入る呪いをかけてやる』

 ちょっと待て。地味に(いや)な呪いだな。


 まぁ、そんなことは良いとして、全てを思い出しましたよ。「お、思い、出した…」とか言ったほうが良かったですか?

『禁呪詠唱かよ!はっ、私のほうがツッコミになってしまいました。私がボケ、あなたがツッコミ、きちんとお互いの役割を果たすように』

 …って、漫才ちゃうねんから。

『それよりどうします?フルルーフ王国ではマーク・カーチスという女神の使徒は、役目を果たして天に帰ったとか言われてますけど…』

 えええ?まじですか。俺が生きてることを大司教にでも伝えておいてもらえたら良かったんじゃないですかね?夢のお告げで。

『嫌ですよ。夢のお告げは大変なので…。あと、エリカとアリスとリズがあなたの帰国を待ってますよ。結婚もせずに…。ねぇ嬉しい?NDK』

 ねぇ(N)どんな(D)気持ち(K)?って省略せずに言ってくださいよ。

 まぁ、嬉しいですけどね。「僕には帰れる所があるんだ、こんな嬉しいことはない」って感じですかね。

『アムロかよ!あー、また私がツッコミに…』

 まぁガ○ダムネタはさておき、思い出したからには一度くらいは帰国しないといけませんね。

『そのあとは、フルルーフ王国を出ると?』

 そりゃそうでしょ。死んで伝説になった男が、今更(いまさら)のこのこ帰ってきても周りが困るでしょう。そうですね、エリカとアリスとリズを連れて、また旅にでも出ますかね。

『まぁ、あなたの好きなようにしたら良いですよ。でも教会には顔を出してくださいね。でないと私、寂しくって泣いちゃうから…』

 ぶりっこかよ。何歳なのかは知らないけど、この世界の誰よりも年上であるおばさんがやっても可愛くないですから。

『あなたには頻繁に口内炎が発生する呪いをかけておきます』

 ご、ごめんなさい!私が悪うございました。なので、その呪いは止めて…。


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