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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第9章 大陸暦1157年
155/160

155 エリカ視点⑥

 あれからもう3年()つ。

 この国でマーク・カーチスの偉業を知らない者は、もはや一人もいない。魔物暴走(スタンピード)から世界を守った英雄、そして女神の使徒。使命を達成したから天に帰った。そう(うわさ)されている。

 違う!あいつは人間よ。天になんて帰るもんですか。


 なお、現時点での友人達の近況は次のようになっている。

・エリザベス…公爵家嫡男に見初(みそ)められ、幸せな結婚生活を送っているとのこと(腕っぷしの強さを見初められたという噂も…)

・アンネット…伯爵家嫡男に嫁ぎ、こちらも幸せそうだ(よく遊びに行くので、そのたびにお熱いところを見せつけられている)

・ソフィア…第4王子と婚約し、仲も良好のようだ

・ビルとアリア…驚いたのはこの二人、なんと結婚してビルが入り婿としてアリアの家に入ったのよね

・アリス…以前借りていたアパートの部屋をもう一度借りて、今でもマークを待ち続けている

・リズ…【鑑定】の技能を活かして、商人として独立して商売しているわ(開業資金はアリスと私が出してあげた)

・フジコ…私達をこの国に送り届けたあと、アルトンヴィッヒ共和国に帰っていった(おそらく、まだ冒険者を続けているのだろう)


 え?私?もちろん、マークを待ち続けているわよ。アリスの隣の部屋、以前マークが住んでいた部屋を今は私が使っている。

 アリスと二人で食事したり、頻繁にリズも来てくれるから寂しくはないわ。

 王宮からいただいた多額の報奨金のおかげで無理に仕事をする必要もないし、悠々自適の生活を送っている。

 ちなみに、マークの帰還を待たずに帰国したことについて、友人達から(なじ)られたり責められたりされたことは無い。皆、逆に私やアリスのことを慰めてくれた。本当に良い友人達だ。まさに私の人生における宝物ね。


 あと、この3年で様々な技術革新が行われた。全部あいつが種を()いたものが芽吹いたものだ。

 国内を東西に走る鉄道路線と蒸気機関車。路線を東の隣国まで伸ばす大陸横断鉄道というものすら構想されているらしい。

 自転車のタイヤもあいつの【車輪生成】を使わずに製造できるようになった。

 灯油ストーブも洗練されたものになり、今ではどの家庭にも普及している。

 鉄筋コンクリート製の建物も多くなり、王都の建物群が一気に高層化された。

 土木機械の進歩で建築速度も向上し、ブルドーザやスチームローラーをよく見かけるようになった。

 あいつの残したアイディアノートの中にあったらしいんだけど、銅線と磁石から『電気』というものを作る仕組みも王宮で研究されているらしい。


 ああ、本当に早く帰ってきなさいよね。今のこの国を見たら絶対に喜ぶに違いないんだから。

 涙は出尽くしたと思ったけど、(いま)だにあいつのことを考えるだけで目頭(めがしら)が熱くなる。もう、帰ってきたらお仕置きなんだから…。


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