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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第9章 大陸暦1157年
154/160

154 サム視点④

 身体が軽い。

 俺はカーライルさんから間合いをとるため、後方へジャンプした。カーライルさんや周りで見学していた騎士達が驚いたように俺を見ている。

「すみません。もう一度お願いします」

 30mほどの間合いをとって、再度剣を構えた。あれ?そう言えば30mも離れているのは何でだ?

「おお、今度はお前のほうから打ちかかってこいよ」

 緊張した面持ちでカーライルさんが剣を正眼に構えている。

 俺は片手で持った剣を身体の横に自然に垂らしたまま、カーライルさんとの間合いを一瞬で詰め、右手に持った剣を右から左へと横なぎに振りぬいた。

 カーライルさんは剣を逆さまにして、それを身体の左側に立てて防いだんだけど、俺はその剣ごとカーライルさんの身体を吹っ飛ばしたよ。

 演習場の壁際まで吹っ飛んだカーライルさんを見て、ちょっと呆然としてしまった。何、この(ちから)…。

 見学していた騎士達、そしてカーライルさん自身も驚愕の表情に変わっている。


「おいおい、やはり俺の目に狂いはなかったな。お前、化け物かよ」

「いや、俺にも何が何だか…」

 このあと、騎士団全員で俺一人に攻撃してくるという多対一の訓練をやったんだけど、最後に立っていたのはなぜか俺だった。いや、集団リンチじゃん。

「うーん、お前の身体つきと筋力値が見合っていないんだよな。どう考えても異常な力だ。そう、まるで魔物のような」

 カーライルさんが冷静に分析している。なお、カーライルさんは多対一の訓練には参加せず、見ていただけだ。

「いや、魔物じゃないですよ、俺は」

 そう言ったあと、俺は気絶した。いや、正確には気絶したのだろう、いきなり意識が消失した感じ…。直前にマヤさんの声で『活動限界です!』って聞こえたけどね。…って、誰だよ、マヤさんって…。


 目覚めると朝だった。目覚めた場所は騎士団棟の医務室で、すぐに医師の診察を受けた。

「まぁ、心配ないでしょう。筋肉の炎症が(ひど)いので、今日一日は筋肉痛で苦しむかもしれませんがね。(ひど)い個所には湿布(しっぷ)を貼っておきましょう」

 医師の言葉に安心したよ。

「目が覚めたって?」

 知らせを聞いたのか、カーライルさんが急いで医務室に入ってきた。

「サム、すまねぇな。こんなことになるとは思ってなかったもんでな」

「いえ、俺もこうなることを知らなかったんで、別に気にしないでください。それよりゴル親方に心配をかけてしまったかも」

「ああ、親方には知らせておいたから大丈夫だぞ。まぁ、今日はゆっくり休め。あと、できればお前のあの技術、俺達にも教えてもらえないだろうか?」

 申し訳なさそうな顔で、でも少しの期待を込めた感じでカーライルさんが申し出た。あー、でも俺にもよく分かってないんだよな。

「すみません。俺自身にも何が何だか分かっていないし、どうやってやったのかも分かっていません。なので、教えようが無いかと…」

「そうか。ああ、お前の記憶が戻ればなぁ。いや、なんとか思い出せ。思い出すまでこの街で生活しろ。その間の生活費は俺が、いや国が出してやる」

 興奮するカーライルさんを医師が部屋から追い出してくれた。ありがとうございます、先生。

 しかし、本当に何なんだろう?懐かしい感覚だったから、記憶が無くなる前はきっと普通に使っていた技術だとは思うけど…。


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