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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第8章 大陸暦1154年
150/160

150 エリカ視点⑤

 もう春だ。

 暖かくなって花が咲き乱れる季節。それでもマークは戻ってこない。

 嫌な予感が止まらない。まさか本当に死んでしまったの?

 魔物暴走(スタンピード)の発生とその鎮圧については、すでにフルルーフ王国の王宮と教会に連絡した。あの騒動のあと、アルトンヴィッヒ共和国の鎖国が解けたからだ。

 出入国が解禁されて、自由に移動できるようになったんだけど、私達は冒険者をしながらこの国に留まり続けている。

 でも、今日は冒険者ギルド経由で、王宮からの手紙を受け取った。私とアリスに帰国するように、そして事情を詳しく説明するようにとの内容だったわ。

 アトキンス子爵家はどうでも良いけど、カーチス男爵家の皆さんに迷惑はかけられない。一度、戻るしかないのかな?


 冒険者パーティー『めがみん』は、リーダー不在のまま、私がリーダー代行としてまとめている。アリスとリズと私、それに何と斥候役(レンジャー)のフジコさんが加入してくれた。どうでも良いけど、冒険者ランクは全員3級に上がっている。今回の魔物暴走(スタンピード)の一件での功績らしい。あいつは帰ってこないせいで4級のままだけどね。

 私は拠点にしている宿屋の一室でパーティーメンバーとミーティングを始めた。

「フルルーフ王国から帰還命令が届いたわ。これについて、皆の意見を聞かせてほしいの」

 まずアリスが発言し、それにリズが続いた。

「私だけでもここに残ってはいけませんか?」

「おいらもマーク兄ちゃんを待ちたいよ」

 フジコさんは無関係だから、さすがにここでお別れかな?

「私はその何とか王国まで一緒に行くつもりだよ。迷惑じゃなければだけど…」

「そう、王国へ向かうのが二人、残るという意見が二人か。王国に帰れば、マークを守れなかったことについて責められるかもしれない。でも、だからこそ帰ってから詳しい事情を説明すべきだと思うの。カーチス家のご家族や友人達に白い目で見られるでしょうけど、それは覚悟の上よ」

 私のこの言葉に、アリスが意見を(ひるがえ)してくれた。

「だったら、私も帰国して批判の矢面(やおもて)に立ちます。エリカ様だけにつらい役割はさせられませんから」

 結局、多数決によって、私達四人はフルルーフ王国へと帰国(フジコさんとリズは帰国じゃないけど)することになったわ。どうせあいつも未開拓領域から戻ってくれば、帰国するはずだしね。


 帰路も盗賊や魔物の襲撃など色々とあったんだけど、夏になる前にはフルルーフ王国の王都へと帰還した。

 でも、(いま)だにマークの消息は不明のままだ。いったい、どこに消えたのよ。死んだなんて信じないわよ。


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