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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第8章 大陸暦1154年
148/160

148 誘導成功

 うまく釣り上げることに成功した。

 (ぬし)の速度は時速10kmくらい。このペースなら10時間ほどで目的地へ誘導できそうだ。もっとも、その地点が一年を通じて(ぬし)の活動が穏やかになるような地点なのかは、自信が無いけどね。うーん、さらに北へと誘導すべきだろうか?

 余談だけど、密林(ジャングル)を進むペースとしては異常に速いんだけど、これは北方の植生が密ではなく()であること。そして、俺一人であることから、移動速度を高速化できているわけだ。


 (ぬし)と戦闘を開始したのが早朝8時くらいだったため、今の時刻が夕暮れ時になっていることを考えると、そろそろ10時間だろうか。

 誘導を()めて、離脱を考えるべき頃合いだ。どうやら生還できそうだな。

 …と、前方から魔物の大軍がぞろぞろと歩いてきた。暴走状態ではないけど、それは木々が邪魔になっているためだろう。要するに魔物暴走(スタンピード)の第四波ってことだ。

 魔物達が戸惑ったように停止した。

 南から(ぬし)が北上しているわけだから、止まらざるを得ないよね。てか、ここからさらに北に(ぬし)と同程度の魔物が存在するってこと?

 俺も北上できなくなったし、南下してきた魔物達も立ち往生している。ただ、幸いなことに魔物達には俺を襲おうという意思が見られない。

 行動を決めあぐねていると、南から(ぬし)が姿を現した。そして、ほぼ同時に北にも巨大な蛇が鎌首を持ち上げているのを視認できたよ。便宜上、俺が誘導してきた(ぬし)のほうを『蛇A』、北からやってきた蛇を『蛇B』と呼称しよう。


 『蛇A』と『蛇B』は互いに威嚇し合いながら近づいていき、もつれあったロープのような状態になった。

 魔物達はその(すき)に南へと逃げ出している。俺も逃げるべきなんだろうけど、好奇心には勝てず、『蛇A』と『蛇B』を観察していた。

 あっ、繁殖期が20年ごとじゃなかったっけ?これは交尾なのか?蛇の交尾なんか見たことが無いからよく分かんねぇ。

 ただ、しばらくすると『蛇A』が『蛇B』を頭から飲み込み始めた。って、喰ってるの?ちなみに、蛇の判別ができている理由は、俺が『蛇A』の(うろこ)を一枚()がしたからだね。

 いくら『蛇B』のほうが少しだけ小さいとは言っても、巨大な蛇を丸呑みした『蛇A』は満足したように休んでいる。きっと『蛇A』のほうが(めす)なんだろうな(根拠無し)。


 俺は肉体的及び精神的疲労がピークを迎えていたため、つい警戒が(おろそ)かになっていたのだろう。巨大な狼の存在に気付くのが遅れてしまった。左腕に走った激痛で我に返った俺は、俺の左腕をうまそうに咀嚼(そしゃく)する狼を見て戦慄(せんりつ)した。かじられたのが頭部じゃなく、左腕で良かったというべきか…。

 俺は右手に握る木刀で、狼のあごの下から脳にかけて貫いた。

 失血によって気を失いそうになりながらも、口と右手を使って何とか左腕の付け根部分を紐で縛った。

 ただ、ここで気絶すると『蛇A』に食べられてしまうのは確実だ。できるだけこの場から離れなければ…。

 よろめきつつも東側の川のほうを目指して歩く俺。ごうごうと滝の音が聞こえる。ここから下流に滝があるみたいだな。朦朧(もうろう)としながらも歩いていると、突然足元の地面が崩れた。

 そして、俺の記憶はそこで途絶えた…。


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