表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第8章 大陸暦1154年
144/160

144 主との遭遇

 ここで『斥候隊』メンバーを確認しておこう。

 隊長は『白狼』の弓士であるゴロウさん。俺とリズ。あとは風魔法師のパーティーメンバーで斥候役(レンジャー)のフジコさん(名前から分かる通り女性だ)、水魔法師のパーティーメンバーである弓士のジロウさん、『銀翼』の剣士で2級冒険者のカズオさん、そしてオオムラ大佐だ。

 冒険者ランクで言えばカズオさんのほうが3級のゴロウさんよりも上なんだけど、カズオさん自身が「(がら)じゃない」って辞退したのだ。

「キクちゃん、じゃなかったリズちゃんか。このペースで大丈夫かい?疲れてないか?」

 ゴロウさんがリズを気にかけてくれるのはありがたいんだけど、あまり頻繁に問いかけられると他の隊員の反発を招きそうだ。


 パーティーで専門の斥候職を(にな)っている斥候役(レンジャー)のフジコさんが案の(じょう)、苦言を(てい)した。

「斥候任務は過酷なのが分かっているのに、子供をメンバーに入れるなんて…」

 俺はフジコさんに説明した。

「フジコさん、この子リズは自衛戦闘ができますし、体力もあります。なにより【鑑定】という特技を持っているんですよ。(ぬし)の偵察には【鑑定】がきっと役に立つと思いますので、勘弁してやってください」

 フジコさんは20代半ばくらいの若い女性で美人なんだけど、ちょっと困ったような顔で言った。

「いえ、不満があるわけじゃないのよ。ただ、この子が心配でね」

 おっと、フジコさんもツンデレでしたか。

「フジコ姉ちゃん、おいら大丈夫だよ。足手まといにはならないからさ」

「ああ、もう可愛いんだから。ギューってしても良いかしら?」

 …って、いきなりデレたよ。


 俺とリズはジロウさんやカズオさんとも仲良くなり、『斥候隊』自体も順調に北上していった。

 出発して三日目には暴走の第三波と遭遇したけど、そのまま見逃した。少人数では何もできないからね。

 そして四日目、ついにまだ燃えていない密林へと到達した。問題はこの先だ。

 (ぬし)が巨体であるならば、木々が少なく開けたところにいるはずだよな。いや、生息地からある程度南下している場合、そうとも限らないか。

 もう一つ疑問なのが、この先に(ぬし)がいるのなら魔物暴走(スタンピード)はもはや打ち止めになるよね?魔物達は(ぬし)から逃げているわけだから北や西へも逃げるはずで、全ての魔物が南下するのは変だ。女神は億単位の暴走って言ってたけど、ここまではせいぜい10万程度の魔物しか見ていない。もちろん、その数でも十分に脅威なんだけど。


 そして、ついに(ぬし)に遭遇した。その第一印象は神様…。別に神々(こうごう)しいわけじゃないけど、とにかく巨大だったのだ。頭部だけで10トントラックくらいの大きさはあるよ。胴の長さは計測不能だけど、ざっくり100m以上はありそうだ。

 自重で背骨が折れたりしないのかな?いや、全ての魔物の例に漏れず、常に身体強化状態なんだろう。移動速度や運動性能、食事量など確認したいことはたくさんあるけど、あまり近付くことはできない。

 蛇にはピット器官(赤外線探知器官)があるからね。いや、この世界の蛇にも存在するかは分からないけど。

「マーク兄ちゃん、遠すぎて【鑑定】が使えないよ。もう少し近付かないとダメみたい…」

 リズの言葉に、俺は『斥候隊』メンバーに言った。

「俺とリズはもう少し近付いてみます。皆さんはここから観察を続けてください。あと、俺達が発見されても無理に助けようとしないでください。皆さんの役割は『吹雪隊』に正確な情報を届けることですので…」

「いや、危険すぎる。無理に【鑑定】を使わなくても、(ぬし)の様子は偵察できるだろう」

 ゴロウさんの言葉にも一理あるんだよな。うーん、どうしよう?


 さらに、フジコさんがゴロウさんを援護する発言をした。

「そうよ。隊長の命令なんだから、ちゃんと守りなさい。マークはどうでも良いけど、リズが危険な目に合うのはダメよ」

 あ、左様ですか…。ツンデレのエリカと言動が似てるなぁ。やはり、フジコさんもツンデレ属性。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ