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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第8章 大陸暦1154年
138/160

138 女神の餞別

 作戦開始を明日に控えた日の朝、俺は一人で耶蘇(やそ)教の教会を訪れた。

 顔見知りのシスターさんに挨拶してから、すぐに大聖堂で祈りを(ささ)げる体勢になった俺は女神に呼びかけた。


 どうやら漏斗壁プロジェクトは間に合いそうですよ。河口の西側、スターディアの前面だけですけど。

『一応は褒めてあげましょう。ただ、あれでは泳げない魔物は溺死(できし)するでしょうけどね』

 うーん、それは申し訳ないですが、俺は人間の命のほうを優先しますよ。これでも俺は人間の一員ですからね。

『まぁ、仕方ないでしょう。あと、吹雪隊ですか、あれもなかなかのものですね。9人の魔法師がいたとしても、勇者一人に及びませんけどね』

 ああ、やはりそうですか…。てか、四郎さん、どんだけチートだったのか…。

『でもまぁ、(ぬし)の動きを阻害するには十分ですよ。短い時間によくぞここまで準備しました。あとは不測の事態が発生しないことを願ってますけどね』

 何、その(いや)な感じのフラグ立て…。ほんと()めてくださいよね。ドラマチックな展開なんて()りませんから。

『こういうときって、必ず命令を無視して危機を演出する人間が現れますよね。まぁ、そうでないと話が盛り上がらないわけですが』

 いや、本当に勘弁してください。盛り上がらなくて結構です。生きて祖国に帰りたいんですよ、俺達は。

『あなたの生存確率がどうなっているのか知りたいですか?知りたいですよね?ふふふ、教えてあげましょうか?』

 うーん、いや結構です。今更(いまさら)それを知っても仕方ないことですから…。とにかく、人事(じんじ)は尽くしました。あとは天命を待つのみです。


(いさぎよ)くて好感が持てますね。さすがは私の使徒です。それでは旅の餞別(せんべつ)に一つだけ重大な事実を教えてあげましょう。正座したまま上司からの説教が一か月間ほど続くことになるでしょうけど…。はぁー、憂鬱(ゆううつ)です』

 一か月の正座って、半端(はんぱ)ないですね。足が壊死(えし)しませんか?

『私を誰だと思っているのですか?女神ですよ。大丈夫に決まってるじゃないですか。…でも、足は(しび)れますけどね』

 まぁ、大丈夫なら教えてください。重大な事実って?

『連合軍の主席参謀には注意を払っておきなさい。司令官を無視した独断専行と魔物への過剰な憎悪は、あなた方冒険者を窮地(きゅうち)に追い込むかもしれません。魔物に自分の息子や娘を殺されたことについては同情しますけどね』

 なるほど。主席参謀から直接下される命令は、軍司令官の裁可を経たものではない可能性があるってことですね。それは確かに重大な情報です。まさに歴史に影響を与えかねない情報ですね。

『うう、怒られるかな?怒られるんだろうな、きっと』

 まぁまぁ、一か月間の説教くらい良いじゃないですか(他人事(ひとごと))。俺達なんて、命を()けてるわけですから。

『ふ、(なぐさ)めてくれるかと思いきや、突き放されるとは…。Mだけじゃなく、Sの素質もあったのですね』

 いや、誰がMやねん。常にエリカのツンに(さら)されている身としては、否定しきれないところがあるけど…。


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