135 女神の秘密
再度の来訪を約束して俺達はマスダ氏のもとを辞去した。
今まで見えなかったものがうっすらとではあるけど、見えてきた気がするよ。まぁ、どっちにしても状況は悲観的なんだけど…。
俺は三人の女性達とは別行動をとり、耶蘇教の教会に来ている。どうしても女神に確認しないといけないことがあるからね。
『トキムネ・マスダに会って、初代国王である勇者のことを聞きましたね?』
ええ。それより、あなたはなぜ情報を小出しにするんですか?面白がってます?
『うーん、面白いと言えば面白いですね。気が遠くなるほど長い女神としての生活には、たまにスパイスとなるイベントが必要なのです』
くっ、邪神め。実は、人間も魔物もどうなっても構わないって思ってませんか?
『それはさすがに誤解です。こうやって下界に干渉していることがバレると、私の上司に怒られるんですよ。【恩恵】を与えることについては許可されてますけど、異世界からの召喚はさすがにご法度なんです。380年前にめっちゃ怒られましたからね』
あ、もしかして今回も勇者を呼ぼうと思えば呼べるとか?
『可能か不可能かで言えば可能です。その代わり、今度こそ女神の資格を剥奪されてしまうでしょうけどね』
資格を剥奪された女神がどうなるのか少し興味があるけど、さすがにそれは気の毒だな。
こうやって俺と話をするのも、本当は問題があったりして?
『アニメや漫画の話だったらいくらでもできますけど、この世界の歴史に影響を与えるような情報を伝えるのは問題があります。実は、怒られるかどうかのギリギリを見極めて話しているんですよ』
なるほどね。だからヒントという形で伝えているのか…。邪神と言ったのは撤回しますよ。
『ふふ、良い子ですね。あと、勇者が使った吹雪を生じさせる魔法ですが、火魔法と水魔法と風魔法を組み合わせた複合魔法です。火魔法って、実は温度変化の魔法ですからね。熱することも冷やすこともできるのですよ』
は?燃焼って急激な酸化反応ですよね?それでどうやって冷やすんですか?
『だから、火魔法は酸化じゃないんですよ。空気の塊を摂氏1000度くらいの高温にするから、燃えてるように見えているだけです。摂氏20度の気温をプラス980度できるなら、氷点下にするくらいは簡単ですよ』
へぇー。魔法師じゃない俺は「へぇー」としか言えない。
つまり、水魔法で出した水分を火魔法で冷却して、それを風魔法で吹き付けたってことか。すごいな、四郎さん。あ、火と水と風の魔法師を三人以上集めて、同じことができないですかね?
『現状、火の魔法師は温度上昇しかできませんね。魔法で冷却するなんて考えたこともないのでしょう』
その可能性を教えてあげれば、できるようになりませんかね?
『うーん、どうでしょう?もし冷却魔法をマスターした火の魔法師が数人いれば、魔物暴走の原因である主の動きを止めることができるかもしれませんね』
主って、やはり蛇ですか?
『それは秘密です。現地でその目で確認してください』
分かりました。なんだか少しは希望が生まれてきましたよ。俺達「めがみん」の役割は、その魔法師達に指一本触れさせないように護衛することか…。
『あくまでも冷却魔法を火の魔法師が使えるようになることが大前提ですけどね。それにしてもあなた方のパーティー名を聞くたびに「エクスプロージョン!」ってセリフが脳内にリフレインされるんですけど、どうにかしてください』
いや、それ「このすば」の「めぐみん」だから…。俺達は「めがみん」、…って、確かに似てるな。パーティー名を付けたときには気付かなかったよ。




