128 パーティーの方針
『白狼』メンバーとの会食は楽しかった。出てきた料理もうまかったし。
ただ、気になるのはスターディアという街の件だ。俺達はどう立ち回れば良いんだろう。てか、もはや侵攻作戦を止めることは無理なのだろうか?
魔物暴走が引き起こされるって言っても、多分誰も信じてくれないだろうな。
この国は民主主義国家だ。なので、前世の感覚で言えば、国を動かすには国会議員への陳情しかないのかな?それとも、マスコミを使って世論を誘導するってのもありか?
「とりあえず、侵攻部隊に参加するのかしないのか、それをはっきりさせましょう」
エリカの言葉に、俯いて考え込んでいた俺は頭を上げた。
「侵攻を中止させるには時間が足らないと思います。私は参加すべきだと思いますよ。現地にいればできることもあるかもしれませんし…」
「おいらはこの国を逃げ出すほうが良いと思う。兄ちゃんや姉ちゃん達が死んだら嫌だもん」
アリスとリズは正反対の意見か。でも、ここで俺達が逃げ出すと、高い確率で人や魔物が大勢死ぬことになるだろう。それを俺の精神が許容できるかって話なんだよ。女神に言われて仕方なく来たわけじゃない…俺のできることをやって皆が幸せになるならそうしたい…つまり、あくまでも俺の自己満足なのだ。だからこそ、エリカやアリス、リズを巻き込みたくないってのもあって、悩ましいのだ。
「逃げるのは無しだ。俺は侵攻部隊に参加しようと思う。でも、君達はフルルーフ王国に帰っても良いよ。そのときはキク、いやリズも連れていってくれると助かる」
熟考した末に出した俺の結論だ。
「あんたを一人にすると死んじゃいそうだから、私も付いていってあげるわ。感謝しなさい」
「私は何があろうと一緒に行きますよ。一心同体ですから」
「兄ちゃんが行くと決めたなら、弟子のおいらが行かないってことは無いよね」
全員がスターディアへ行くことに同意してくれた。でも、この子達を守り切れるのか?いや、俺の命に代えても守らなければ…。そう決意した瞬間だった。
「じゃあ、次は参加する方法ね。今の6級から5級に上がったとしても強制参加の3級には届かないわ。希望者は何級でも参加できるのか、それを冒険者ギルドに聞かないとね」
「そうだな。もしもランク制限があるのなら、多くの依頼を受けて二か月以内にそのランクまで上がらなければいけないし…」
ただ、スターディアへ行ったとしても、そこからどうなるのかは成り行き次第という行き当たりばったりな状況であることは変わらない。ああ、女神に相談したい。隣国のテトレドニア公国に戻れば教会で相談できるんだけど、今更それは無理な話だ。
「ねえ、女神様の指令って、この国の教会では受けられないの?」
エリカの質問に対して、俺は眉間に皺を作って回答した。
「ダメなんだ。宗教が違うからね」
「ダメもとで一度祈りを捧げてみれば?案外、意思疎通できるかもしれないわよ」
「そうだね。一度、耶蘇教の教会に行ってみるよ」
まぁ、無理だろうけど、可能性が少しでもあるならやってみて損は無い。




