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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第1章 大陸暦1146年
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012 エリカ視点②

 私の知らないうちに我がアトキンス家とカーチス家との間で話し合いがもたれ、私がマークの婚約者としてカーチス家の屋敷で暮らすことが決まりました。メイドのマーサも一緒です。

 私を屋敷から追い出したい家族やメイド達からすれば、カーチス家からの申し出は渡りに船だったはずです。

 ただ、本当は養女として迎えたいと言われたそうなんですが、追い出すようで体面が悪いと『婚約者としての行儀見習い』になったそうです。

 私としては(たとえ建前だとしても)マークの婚約者になれたことに喜びを感じています。でも、マークに対してつい厳しい態度をとってしまうのは、性格的なものとはいえ矯正していきたいところです。もっとも、マーク自身は私の我儘(わがまま)を笑って流してくれるような大人なんですが…。


「あ、あんたの婚約者ってことになったけど勘違いしないでよね。あんたが私の白馬の王子様ってわけじゃないんだからね」

 本当は嬉しいのに、こういうことを言ってしまう自分自身が嫌になります。

 でもマークには普通にいなされました。

「ああ、分かってるさ。君を助けたいと思ったのはうちの家族の総意だからね。もちろん俺もだけど…。それに俺は成人したらこの家を出なきゃならないし、それまでの仮の婚約だよ」

 『仮の婚約』…そう思われていることにちょっとショックを受けました。

「ふ、ふん。分かってれば良いのよ。…でも、あんたが部屋に来てくれたときって、私の王子様が迎えに来てくれたんだと思ったわ」

 後半はマークに聞こえないようにつぶやきました。どうやら聞こえていなかったようで良かったです。あー、でも聞こえていたほうが良かったのかしら。


 カーチス家の屋敷で暮らすようになって感じたのは、実家との温度差でした。【死霊魔法】に対する認識が全く異なるのです。

 カーチス家の皆さんはとても優しくて、それが使用人達にも影響しているのか誰一人として嫌がるそぶりや怖がるそぶりを見せません。私を救い出してくれたカーチス家の皆さんと、そのきっかけを作ってくれたマークにはいくら感謝しても足りませんね。

 将来、どのような形で恩返しできるのかは分かりませんが、【死霊魔法】を極めることでカーチス家の力になれればと思っています。さらにマークともずっと一緒にいられればなぁと思うのは、少し贅沢(ぜいたく)な願いでしょうか?


 あと、魔法の勉強の際、ドリスお姉様が親身になって教えてくれたのも本当に嬉しかった…。魔力を感じ取る訓練、魔力を移動する訓練、生活魔法の発動まではマークと一緒に学べたのも…。

 マークはぶつぶつ文句を言っていたけど、私の我儘で押し切りました。後悔はしていません。


 それから年末になって、カーチス家のメイド見習いであるアリスって子が生産系の【恩恵(ギフト)】を10歳の誕生日に頂いたことが分かりました。正直ショックです。この子は平民だけどマークも将来は平民になるんだし、結婚するのに問題は生じません。しかも、容姿も性格もとても可愛いのです。

「マークと同じ技術学校に通えるなんて羨ましい…」

 ついつい口に出してしまいました。

 多分、強力な恋敵(ライバル)出現です。家柄以外に勝てる要素が見つかりません。どうしよう?


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