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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第7章 大陸暦1153年
119/160

119 冒険者

 建物の2階と3階が宿屋のスペースになっているらしく、俺達は2階へ上がってそこにいたフロントの人に部屋の空きを尋ねた。

 一人部屋4室の確保はできなかったけど、四人部屋なら空きがあった。うーん、男女一緒というのは、どうなんだろ?

「サブロウ、私は構わなくてよ」

「私も大丈夫です」

「サブロウ兄ちゃんなら、おいらも良いよ」

 全員の了承が取れたので、この宿に泊まることにした。馬は厩舎に預ければ馬丁が世話してくれるらしい。宿の人に聞いたところ、この街から首都ロデアまでは500kmくらいあるそうなので、引き続きこの馬には世話になることにしたよ。

 馬に乗る三蔵法師とお供の孫悟空、沙悟浄、猪八戒って感じだな。いや、それはアリスとリズに失礼か。


 ちなみに、この街の名前はマツシマというらしい。…って、松島かよ。日本三景の松島なのかどうかは知らないけどね。四郎さんが陸前国(りくぜんのくに)(宮城県)の松島を知っていたとは思えないけど…。いや実は、天草(あまくさ)にあった地名だったりして。

 俺達は翌日、この街を少し観光してみることにした。そこまで急ぐ旅でも無いからね。

 歩いている人の容姿、服装、食べ物、それに建物の景観など、我が国や近隣諸国とほとんど変わらないようだ。ただ、かなりの数の男性の(まれに女性も)腰に真剣が()かれているのが異様と言えば異様だった。

 なんとなく、これこそ剣と魔法の世界って感じだ。もしかして、冒険者ギルドなんかもあったりして…。魔物がいる世界なんだから、あってもおかしくないよね。


 街歩きのあと、戻ってきた宿の1階の食堂でそれっぽい人(冒険者っぽい人)に聞いてみた。もちろん、一杯(おご)りながらだ。

「おじさん、俺は田舎から出てきたばかりで良く知らないんだけど、仕事として魔物と戦うような人達っているのかな?」

「おお、坊主、そいつは冒険者ってやつだな。剣や槍や弓なんかで魔物と戦うのが仕事だぜ。実は俺もその一人よ」

「へぇ、かっこいいね。あと、冒険者の人達の中に魔法を使う人はいないの?」

「この国にゃ魔法を使える者はほとんどいねぇな。よその国から来た魔法師はいるけどな」

 ああ、そうだった。魔法って女神の【恩恵(ギフト)】だったね。

「そういう冒険者の集まりというか、まとめ役ってあるの?それと、俺でも冒険者になれるのかな?」

「あるぞ。それが冒険者ギルドってやつだ。この宿から三(ちょう)ほど離れたところに大きな建物があるから、すぐに分かるぞ。あと、身分証さえあれば誰でも冒険者登録できるぜ。まぁ命が惜しければ、あまりお勧めはしねぇがな」

 三町って言われてもピンと来ないよ。まぁ、口ぶりからすると、あまり離れてないとは思うけど。

「ありがとう、おじさん。これで酒でも飲んでよ」

 100モン硬貨(1000エン分ってことだね)を一枚テーブル上に置いてあげた。情報料としては安いけど、チップとしてはそこそこ高いよね。


 3階の借りている部屋に戻ると、女性陣に俺が得た情報を伝えた。情報共有は重要です。

「それで冒険者として登録するつもりなの?」

「ああ、そのほうがこの国では活動しやすいと思うんだ。ただの観光客よりは(から)まれにくくなるだろうし」

 目的地の首都ロデアまでは徒歩で一か月くらいはかかりそうだしね。宿場町で毎回絡まれるのは勘弁してほしい。

「サブロウ兄ちゃん、おいらも登録できるのかな?」

「現役冒険者のおじさんは『誰でも』登録できるって言ってたから、多分大丈夫じゃないかな?」

「だったら、おいらも登録するよ。良いでしょ?」

 リズは俺から剣術を習ってから、ちょっと好戦的になってる気がするよ。女の子なのに大丈夫なのか?…って、それは今更(いまさら)か。

「全員で冒険者登録して、パーティーを組めば良いんじゃないかな?どうですか、アヤメお嬢様、ボタンさん。あ、キクは当然賛成だろうけど」

「サブロウさんに賛成です」

「おいらも」

「そうね。でもパーティーリーダーはあんたがやりなさいよね。私は嫌よ」

 結局、翌日に冒険者ギルドに行って、冒険者登録とパーティー申請(あるのかどうか知らないけど)を行うことに決定した。やっと、異世界モノの定番みたいになってきたよ。

 ああ、女神に相談したいなぁ。この国から出ないと女神には連絡できないのがツライよね。今までかなり女神の助言に頼ってきたことに、今更ながら気付かされたよ。


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