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車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第7章 大陸暦1153年
118/160

118 宿屋にて

 門の中に広がる街並みは我が国のものとそんなに変わっていない(ように見える)。夜で街灯も少なく、良く見えないってのもあるけど。

 10時を過ぎても喧騒はそれなりで、酒場なんかがまだまだ(にぎ)わっているようだ。

 俺達は一頭の馬を引いて、通りを歩いているんだけど、エリカには馬から降りて歩いてもらっている。目立つからね。

 大通り沿いに宿屋の看板を見つけたので近付いていくと、なかなかの規模の宿屋だった。外から様子を伺ってみると、1階は食堂みたいで、この遅い時間帯でも大勢の人が酒盛りをしていたよ。

 馬の手綱を宿の外の馬止めにくくりつけ、四人で宿の中へ入っていった。


 酔っ払い達の内の数人が俺達のほうを見たんだけど、何人かが思わずピューと口笛を吹いていたよ。まぁ、分かる、美少女揃いだし。

「お嬢ちゃん達、こんな時間に子供が出歩いちゃダメだぞ」

 ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべた酔っ払いが近づいてきたので、俺がそいつの前に立った。

「おい、なんだ、お前。俺はお嬢ちゃんに声をかけたんだ。男はお呼びじゃねぇよ」

「おじさん、飲み過ぎじゃないの?俺達は宿に泊まろうと思ってるだけなんだけど」

「うるせぇ、そこをどけ!」

 酔っ払いが俺に手を伸ばしてきたので、手首の関節をひねって床に優しく転がした。

「ほらぁ、おじさん。酔っちゃって大丈夫かい?倒れるまで飲むと身体に悪いよ」

 俺は笑顔をキープして、あくまでも優しく忠告してあげた。手首の関節は()めてるけどね。

 俺はまだ人を殺したことがないので、殺気を放つのは苦手だ。でも、陰茎切断の作業を思い出しながら、ちょん切っちゃうぞ(ハート)ってな感じで酔っ払いに迫ると、何か不穏なものを感じたのだろう。一瞬で酔いが()めたようになって、謝罪し始めた。

「おお、すまんすまん。酔って転んじまったぜ。ありがとな、坊主。それじゃ、俺はこれで」

 シュタッと右手を上げて自分のいた席へと戻っていった。騒ぎにならなくてなによりだ。


 ただし、そこかしこから不穏な会話が聞こえてきたけどね。

「おい、ゴンゾウのやつ、軽くあしらわれたぜ。何者だよ、あの小僧」

「ああ、あれ自分で転んだんじゃないぜ。あの荒くれ者を怖がってないだけでも大したもんだってのに、逆にゴンゾウのほうが小僧を怖がっていたように見えたぜ」

 あーあー、聞こえません。目立つのはご法度(はっと)だってのに、こんなんじゃ先が思いやられるよ。

「サブロウ、あまり目立たないように」

「はい、アヤメお嬢様」

 エリカに釘を刺されてしまったよ。(から)まれないためにも、殺気や威圧なんかを放つ訓練をしたほうが良いだろうか?


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