表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
車輪の無い世界へ転生した男  作者: 双月 仁介
第7章 大陸暦1153年
117/160

117 最初の街

 村の外周は細い木の柵で囲まれていて、それに沿って歩いていくと門らしきものが見えてきた。

 門番さんが立っていたので、俺が話しかけた。

「サブロウと言います。こちらのアヤメお嬢様の従者です。道に迷っているのですが、大きな街へはどうやって行けば良いでしょうか?」

「こんな辺鄙な村へ人が来るのは珍しいな。ここから一番近い街は、この道をまっすぐ10()くらい進めば見えてくるぞ」

「ありがとうございます。10里とはかなり離れていますね。もし良かったら馬を一頭ほど購入させていただけないでしょうか?」

 1里が4kmだから、10里は40kmだよね。エリカが乗るための馬が欲しいところだ。

「おお、農耕馬でかなりの年寄りの馬だが、1万モンで良ければ売っても良いぞ」

「それは助かります。ですが、もう少しお安くなりませんか?5千モンでいかがでしょう?」

 ここから値段交渉が続き、最終的には8千モンで買うことができた。8万エンってことだね。


「ちょっと古いがこの(くら)をサービスで付けてやろう」

「それは助かります」

 固めの布を敷けば良いかなと思っていたけど、(くら)があるならそれに越したことは無い。

 俺はエリカを乗せた馬の手綱をとり、アリスやリズとともに歩き出した。

「できれば野宿せずに、今日中に10里先の街へ着きたいものだね」

 俺の言葉にエリカが不審そうに言った。

「10里ってどのくらいの距離なのよ?なぜ、あんたが知ってるの?」

「ああ、女神に聞いたんだ。1里は4kmだから、次の街は40km先だね」

 …って、嘘だけど。本当は前世の知識として持ってました。


 で、途中休憩しながらなので、12時間くらいかけて街へとたどり着いた。もう、夜の10時くらいだよ。なお、夕飯は道中の休憩時間で問題なく食べられたよ。去勢作業を思い出さないようにしながらだけど…。

 街の外周は高い塀で囲まれていて、大きな門はすでに閉ざされていた。

 俺は大きな門の横にある小さな通用門みたいなところをドンドンとノックした。きっと不寝番がいるはずだからね。

 通用門がわずかに開き、中から面倒くさそうな男の声が聞こえてきた。

「入門検査は明日の7時からだ。外で並んで待ってろ」

 門が閉められる直前、俺は足の爪先を滑り込ませて、閉められないようにした。もちろん、痛くないように身体強化して。

「そこをなんとか。お嬢様達はここまでの道のりでかなり疲れておりますので、どうか街へ入れていただきたく」

 そう言いながら、すばやく1000モン札を一枚差し出した。賄賂としては多めだよね、1万エンってことだし。

 通用門がさっきよりも大きな角度で開かれ、そこにいた中年の門番さんが俺達をじろじろと眺め始めた。男性一人に女性三人、しかも一人はまだ10歳の子供だ。危険性は無いと判断したのだろう。1000モン札を受け取って(ふところ)に入れた門番さんは、俺達に言った。

「身分証を見せてもらおうか」

 サブロウ、アヤメ、ボタン、キクという偽名の書かれた各人の身分証をそれぞれが提示すると、門番さんはすぐに身分証を返してくれた。偽造だけど大丈夫かな?

「通って良いぞ。だが、この時間に通したことは内緒だからな」

「ありがとうございます。あなたに神のご加護を」

 こうして俺達には街に入ることができたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ